Chapter2 『窮屈な日常』 2-9

たしかに、宝石のように飾ればきれいだな。 希少価値があるかも。」


(夏樹は視線を、遠く、受付ロビーへ向けた。 少し離れた場所にある、円形に開かれた巨大なロビーが、スーツ姿の人々であふれていた。)


「ふふっ。」


「彩さんは、そんなこと考えてないだろう?」


「そうね、少なくとも希少価値はないわ。 取り出すのが難しいだけ。」


「私が考えているのは、あなたたち能力者の健康よ。」


「一緒にお屋敷に戻って、簡単に健診しましょう。」


「外出したいんでしょう?」


(彩は、手持ちのボードを長い爪で指さし、夏樹にウインクした。)


「静乃さんが話してくれたの?」


「ええ、菖蒲君からもお願いされたわ。」


「大目に見てくれって。」


「ははっ。」


「国の人たちの中で、話せるのは彩さんだけだよ。


あの人たち、どうにかならないかな?」


(夏樹は、視線で、四方から自分を見つめる黒づくめの執事達を差した。)


「だ~め、聖君が、政府と交わした契約ですもの。」


「・・あっそう。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る