Chapter2 『窮屈な日常』 2-8
コッコッ
(心地よいヒールの足音と共に、夏樹の側による。 耳元の銀のピアスが煌めいた。)
(医師というには、きらびやかすぎて、大人の魅力溢れる彩に、いつも目のやり場を失う。)
「今日は、早く起きたのね?」
「千波ちゃんが起こしに来た?」
「はい。 ごめんなさい、いつも約束守らないで。」
(二人は、一階の巨大なフロアに足を運んだ。)
『彩さんを前にすると、なぜか素直な気持ちになる。』
『FOT専属医師であり、能力者たちの主治医。 何かと悩み事の相談相手でもある。』
(先ほど居た、階上まではるかかなた。 青空からの光が、そこへも射し込んでいる。)
(行き交う人々の足音は、無数の執事たち、来客の面々。 FOT本部の一般職員などだ。)
「ふふ、自覚してるのにやめられないの。 遅くまで、考え事してたでしょう。 欠片は
人を引き付けるのね。」
「僕は・・、欠片には興味ないよ。 ただ、“闇”をなくしたいだけ。」
「“闇化”が防げる日が来れば良い。」
「そう。 私もその日のために、日々研究に励むわ。」
「でも、人はとても貪欲。 国の上層部は、欠片に眠る可能性を探しているわ。」
「可能性? それで、朝からどこかの大臣がおいでなんだ。
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