Chapter1 『はじまりの夜』 1-11

「空間の狭間に、飛ばされないうちに、私も戻ります。」


「うん。」


(2人は同じ歳だったが、菖蒲はいつも夏樹を尊敬していた。)


(しかし、菖蒲に比べ、夏樹の服装があまりに普段着でラフなので、

主人と執事というのも、ちぐはぐに見えた。)


(豪華な赤絨毯が敷かれ、デザイン性に優れたシャンデリアが照らす、

一際高い高層ビルの長廊下は、ティーシャツに上着を簡単に羽織った服装の

ごく普通の高校生がいるとは思えない場所だ。)


(それでも、一際目立つ、白い肌のせいか。 明かりに照らされる、艶のある深い

紺色の髪と、紺色の瞳のせいか。)


(夏樹の持つ、中からの力が、その場をより明るくしていた。)


「菖蒲、もし良かったら。 明日僕と、街まで付き合ってくれないか?」


「・・はい?」


(夏樹のもたらした空気に、意識を向けていた菖蒲は、ふと驚いた。)


「街へ、ですか? 新しい街が決まったんですね。」


「ああ。 少し手が掛かりそうなんだ。」


「かしこまりました。 もちろんです、どこまでもお供いたします。」


「くすっ、ありがとう。」


キイッ


(ドアに手を掛けた。)

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