もし少し望んでもいいのなら

黒豆

第1話一人がいい

私は一人が好きだ。今まで一人でいすぎたからだろうか。誰かがいる空間は吐き気がする。そんな潔癖な私は当然人と話したことがない。当たり前のように人と話し当たり前のように笑い幸せになる。そんな人生は私には眩し過ぎる。家で引きこもり、静かに本でも読んでいることが私にとっては幸せなのかもしれない。でももし少し望んでもいいのなら、私は普通に人と話し笑い幸せになりたい。

外にでると、寒さで体が震える。引きこもりには厳しい季節だ。冬休みが終わり、久々の学校だ。正直行きたくない。新年だからだろうか、みんな活気に満ちている。そんな空間が酷く嫌いだ。教室もそんな活気に当てられてか、うるさい連中が二倍にうるさい。私はもちろん、教室の片隅で本を読む。読むというか、読まされているというのが正しいのかもしれない。この空間は私を疎外するかのように感じられるからだ。ただ、本を読んでいると少しは気が楽になる。ようやく授業が始まり私は安息をついた。今日も誰とも話さず、ただ本と会話して終わるそんな日常だと思っていた。だが、今日は違った。本を読んでいる私に話しかけてきた男子がいたのだ。名前はわからない。名字は佐藤だった気もする。会話することなどないと思っていた私は名前を覚えていなかった。佐藤君(仮)は私にこう話しかけてきた。あけましておめでとう!と、後ろの男子に言っていたのかもしれない。それでも私は久々に話しかけられたので嬉しさを隠せなかった。変な声で答えてしまったかもしれない。今日はそんな後悔で一日を過ごすことになりそうだ。

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