第3話

それは討ち捨てられて直ぐ後のこと。

ネフリティスに助けられ、見送られ、それでも逝けず、ネフリティスに連れられて、あてもなくと荒野を彷徨ったとき。

 そこで見つけたあの古い祠。

 確かにあの祠で可彦は生贄として捧げられたのだ。

 祠に祭られた名も知れぬ神に。

冷たい石の祭壇の上で。

 ネフリティスの手で。

 心臓を突き刺されて。

「さて、そろそろわしは行く」

 祖王の姿が揺らぎ始める。

「そんな! 祖王!」

 アルタリアが悲鳴にも似た声を上げる。しかしその声にも祖王は笑みを浮かべるだけだった。

「ではな我が子よ。あえて嬉しかった。機会があればまた会うこともあろうて」

 そして祖王は、消えた。

 消えた瞬間、放たれた矢がアルタリアを襲う。

 そこに横合いから影が飛び込んだ。

 ミランダの放った矢は飛び込んできた錬金術師の身体を貫いた。

 アルタリアの前に倒れる錬金術師。

 杖を構えるネフリティス。

 突剣と短剣を抜くバルゥ。

 矢を番えるミランダ。

「観念して」

 可彦が静かにそう伝えたとき、アルタリアは可彦を睨みつけ、次には口元をゆがめて、そして金切り声を上げた。響き渡るアルタリアの悲鳴。

「何事です!」

 扉が開かれ兵士が飛び込んでくる。

「陛下が!」

 アルタリアの声と共に兵士の目に飛び込んだもの。

 それは武器を構える亜人と血に沈んだ国王の姿。

「なんということを!」

 剣を抜く兵士。

「誤解だ!」

 可彦が叫ぶが聞く耳を持つはずもない。踏み込んでくる兵士をミランダが射抜いた。

「そんなことしたら!」

「弁明の余地なんて、初めからないわ」

 ミランダは静がに告げる。踏み込んできたもう一人の兵士をバルゥの突剣が貫く。

「とにがく逃げましょう」

 ネフリティスが可彦を促す。

「コイツハヤッテオク!」

 バルゥはすばやく踏み込んでアルタリアに襲い掛がる。しがしアルタリアはその一撃を飛び退いて避け、手をかざして小さく呟く。その手にはめた指輪が小さく光るとその姿が白い壁に同化していく。

「クソ!」

「いそいで!」

 バルゥはアルタリアを追うことをあきらめ、可彦たちの後を追って通路に飛び出た。

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