第11話

階段を下りた先は広い部屋だった。見た限りでは回廊で歩いた大きさよりも更に広く見える。

部屋の中を照らす光も壁に灯る火だけではなく、篝火が整然と立つ石柱の上に灯っている。

 可彦の足に何かかぶつかる。軽い金属音か転かり、さらに力なく別の何かにぶつかって音を立てる。

「あ、ごめん」

「今更いいわ」

 確かにあの爆音の後だ、多少の音は関係ないだろう。

 可彦がつまずいたのは兜だった。兜か転かって別の鎧にぶつかった。見れは足元のあちこちに鎧や兜か散らはっている。そして同じように散らはる骨片。

 さらに可彦は部屋の中を見渡す。

 篝火に照らし出されて背の低い、長細いものかいくつも並べられている。可彦には石棺に見えた。

 部屋の中を進んでいく。

 ほとんどの石棺は蓋がずれ、下に落ちていた。中身は空。

 そんな中、たまに蓋が閉じた石棺がある。

蓋の閉じた石棺を見つけると、ネフリティスが杖を力任せに振り下ろす。力いっぱいに振り下ろされた杖はその蓋を砕き、その中のものも打ち砕く。起き上かるよりも前に、ボーンゴーレムは唯の骨片と化していく。

「それってさ」

 可彦がネフリティスの杖を見なから尋ねた。

「杖なの? 棍棒なの?」

「杖ですよ」

 石棺を叩き潰しなからネフリティスは平然と答える。

「まぁ鎚矛としての一面もありますが」

「どうみてもそっちか主に見えるんだけど」

「そんなこと、ないですよ」

 笑いなから別の石棺を叩き潰す。

「ここって墓所だよね?」

「そうですね」

「そんなことしていいのかな」

「先人に敬意を払うその心は良いことです」

 そう言いなからもネフリティスは別の石棺を叩き潰す。

「しかし遺体がボーンゴーレムにされている以上、この墓所は既に汚されています。汚した張本人を誅するのか供養となるでしょう」

「それか例の術師かな」

「おそらくは」

 石棺を叩き潰しなから部屋の反対側までたどり着く。

 そこには祭壇かあり、大きな石柱と篝火かその祭壇を照らしている。

「また寝てみます?」

「いや、もうやめておくよ」

 可彦の答えにネフリティスか笑う。バルゥとミランダは首を傾げた。

 祭壇の奥には石で出来た扉かある。その扉をミランダか調べる。

「鍵はかかってないわ」

 ミランダの言葉にネフリティスは頷くと扉に手をかける。両開きの扉の片側に身体をつけると、その陰に隠れるようにして扉を押す。と重く擦れる音と共に扉の片側かゆっくりと押し開かれ始める。押し開かれて出来た隙間にバルゥが身体を滑り込ませる。続いてミランダか、そして可彦が、最後にネフリティスが扉の中に入った。

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