第11話 去り行く時代の流れ


コスモス「……このようなし合いに、どのような意味があるのでしょう?

 人々の暮らしは、もう何も得られることがないというのに……。」



乙女の願いは届いた。


しかし、それは苦しみに変わった。



彼女の思い描いた世界は、もうここにはいない。


彼女が済んでいった世界は、お話の世界にその形を留めてあるだけだ。



コスモス「もう、十分に、人間たちの叡智は私たちに届いたのでしょう。

 今後、これ以上の発展を望むことは、もう無理なのではないでしょうか。」



彼女は私の方を見ながら、次のような問いかけをしてきた。

目が怖い。


コスモス「あなたに根拠があるとは言いません。ですが、一刻も早く、この状況を打開してみてください。

 私の思うあなたは、そんなやわなものではなかったはず……。」


「…。」


私は立ち往生した。

この状況は、前とは逆の立場にあった。

私は数千年ぶりに、彼女におぶられ、支えられている感覚をもった。


「私は……人間たちを許すことはできる。

 しかし、人間たちの多様性を認めることで、何か過ちを犯してしまっただろうか。」


コスモス「あなたがしたことは、お話の世界の出来事を、現実にも適応しようとしたことです。

 敵を現実につくらないということは、

 お話の世界でも、現実を敵を回すということに繋がるのですよ。

 どういう風の吹きまわしですかね。」


「……。」


一人の人が、頭によぎった。

またあいつか。あいつのために、私は自分と闘わないそぶりを見せてしまったのだろうか。

後悔先に立たず。悔やまれる思いに、必死になってしがみつく。



コスモス「私のことはもういいですから、お話の世界にとどめてください。

 貴方のうたを歌うのは、もうこれまでです。」


「……」


思い切りのいい言葉に、私は歯ぎしりをした。

このような展開が待っていようとは。私も予想だにしなかった。

だが……。



「面白い。そこまで言うのなら、私もお前を殺す覚悟で臨んでやろう。」


私の闘志に、覚悟が目覚めた。


コスモス「言葉だけは達者になりましたね。……。

 貴方の心の灯火が、終始消えませんように。」



物語は終わらせないといけない。

また私は別の立場に立って、その場を後にした。



つづく

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