第6話 争わない自由
*「わたし、やっと、あなたに……会えました!」
誰かが夢の中で言った。
『夢の中で会いましょう』と。
何度も何度も、夢の中では会えていた。
そのたびに、募る想いは膨れ上がっていく。
『現実でも会いたい』と。
しかし、現実とは、時には残酷なもので。
何をしても、うまくいかないことがある。
感情、状況、タイミング……。
そのすべてにおいて、彼女は外してきた。
そのたびに、彼女はまた、新しい身に委ね、
次の準備を進めていった……。
そして、ついに、念願のときが現実化した。
その喜びは、格別なものだったらしい。
*「何をどう表現していいのか……わかりません!
わたし、本当に、あなたに出会えたんでしょうか。
これは夢? 幻ではないですよね?」
彼女は、胸の高鳴りを感じた。
確かに、今回は幻ではない。
その証拠に、彼女の胸は、確かにあったかった。
いつものように、冷たい幻想に浸っているわけではに。
*「でも、これはまだ、バーチャルな世界でのこと。
わたしの気持ちは、ここで伝えることはできない。
今は、この関係をつなぐことだけが、私のできる、小さな幸せ……」
この前進は、彼女にとって、より大きな未来に向けての、
一段階に過ぎないのかもしれなかった。
*「ちゃんと……リアルで、会わせていただきます!」
彼女の現実との闘いは、まだ始まったばかりだ。
一方その頃、霊界では―――
ゾロアスター「フィリアが……フィリアが、居ない」
オフィーリア「どうしたのですか、ゾロアスター。
私は、ここにいますよ。」
ゾロアスター「……あの者は、フィリアではなかったのか…」
オフィーリア「ええ。 そうですよ。
どうかさなったのですか?」
ゾロアスター「……いや……、なんでもない」
オフィーリア「…」
ゾロアスター「……人間というものは、いいものだな」
オフィーリア「まあ。 アナタからその言葉が聞けるなんて…光栄ですわよ。」
ゾロアスター「……まだまだ私も、若いということか……」
オフィーリア「人間になってはいかがですか、ゾロアスター。
アナタはまだ、何もしていないのですから……」
ゾロアスター「何もって……私は、多くの地球の人生を
今更何を……」
オフィーリア「『自分のため』、に、ですよ。
アナタはずっと、『他人のため』に、人間に生まれていたのですから……。」
ゾロアスター「……そうか。 …そうだな。 そうだった。
ありがとう、オフィーリア。
私は自分のしたいことを、長い間忘れていたようだ。」
オフィーリア「次は素敵な恋をしましょうね。
私とアナタで、よりよき未来を、幸せを育むような……」
ゾロアスター「……うむ。」
争わない自由が、地球には存在している。
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