第5話 争いの先にあるものとは…
*「誰か、あなたに、指図をしましたか?」
金色の妖精のような姿をした者が、姿を現す。
「…何も。 でも、私はもうやりたくない。 争いなんて、もうこりごりだ。」
私は引き返すこともできない、この無明の闇に、しばし心を落ち着けようとした。
*「軽はずみな発言は避けてください。 …現実化しますよ?」
その一言は重く、私の心にずしりとのしかかった。
「…」
*「言い過ぎましたね、スミマセン」
「…謝ってほしいわけじゃない。 私の心が悪いんだ。」
*「…。 どすうるかは、あなたの勝手ですよ。 引き返すことも、できるのですから。」
「…。」
長い沈黙の後、私はついに、本音を切らした。
「私は、一体、何のために生まれてきたんだ!? こんなことをするために、地球に来たのでは、なかったはず……」
*「…」
*「…もし」
「…」
*「もしあなたが、これまでのことを悔やみきれていないのなら、今のうちにしっかりと悔やんでおいてください。
もしかすると、今しか、そういう感情を長く抱くことは、できないかもしれないのですから…」
「…悔やんで何になる? 過去のことなど、もうとうに飽きたわ。」
*「へぇ…おもしろいですね。」
「…ただ」
*「ただ?」
「言わずして後悔が消えるとは思わないがな。
私は過去をためている。 それも、多くの歴史をな。
何が悪いかはわからなくとも、それだけはわかる。」
*「…」
首を傾げつつ、手のひらを返すように、彼女はぶっきらぼうにいった。
「なら、あきらめてください。」
*「?」
*「あきらめてください。 何をしに来ているのか、一体何が悪いのか…
わからなくって、いいじゃないですか。
あなたの理解の範疇を超えているのですよ。
人間の限りある生の中では…不可能です。」
「そういう、『不可能なことにチャレンジしようとして失敗する』体験をしているのか…私は。」
*「知りませんよ。 あなたが勝手にやったことです。 私の心に、『あなたを支配する』なんて気持ち、さらさらありませんから。」
「…。」
『現実は、私の思っているよりも、もっと壮大なのかもしれない』。
それを感じられた矢先、私は首を縦に振った。
「わかった」
*「…何をですか?」
「理解することをやめよう。 その場を…この時を…楽しむことにする。」
*「へぇ…あなたにできるのですか? そんな、余興のような真似が。」
「…やってみせる。 ただ、楽しみ方は、私が私自身で考える。
余興であろうが、屈強であろうが、どう捉えるかは私の自由だ。」
*「なるほど…答えを求めないということですね…わかりました。」
彼女はぐるっと一周すると、冷静な眼差しを見せてこう言った。
*「あの人も…必ずや、彼(か)の人のもとにたどり着くでしょう。
それまでの間…楽しみに待っていてください。
あなたの大切な時間……有効に使うのですよ。」
「勝手なことばかり言いやがって…」
私がその発言をしたとき、彼女はもうそこには居なかった。
つづく
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