第3話 新しい夜明け

地球では、新しい年が始まったらしい。

私はその気持ちを、宇宙に向けた。




多くの『戦争たたかい』が勃発ぼっぱつしている。

ただし、これはただの戦争せんそうではない、『勝敗を決める戦い』のようだ。


ロキが多くのたましいむさぼり、その力を見せつけている。

多くの民間人みんかんじんが死者を出し、

その発端ほったんとなった、多くのわざわいいをもたらした神々かみがみ冥界めいかい入りをたした。




*「クハハハハ…ッ! どうした? その程度ていどか。」


神々「そんなバカな……なぜ……なぜわれらが……こんなところで……。」


民間人「一体、どういうことなの? 1人の神が、他の神々をおそっている。

 彼らは、敵同士てきどうし、なの?」


*「もう怖気おじけづいたのか。 つまらん。

 では、この物語はもう終わりだな。 終焉しゅうえんだ。」


神々「どういうこと……だ?」



*「何も知らないのか。 なら教えてやる。

 この世界はな、仮初かりそめの世界なのだ。

 だからこそ、オレはこうしてお前たちのかたきってやっている。」


民間人「……。」


*「オレは人間が好きだ。 だから人間を食い物にするやつらは好かん。

 だからほろぼす。

 たとえそれが、神々であっても、だ。」


神々「…。」



今にもくずれそうにな神々の中から、ひとり、

風格ふうかくのある神ゼウスが前に立ち、ほろぼしの神にこういった。



ゼウス「……そなたに、一つ、聞きたいことがある。」


*「なんだ、ゼウスか。

 …どうした? またオレの志向しこうが気に入らなかったのか?」


ゼウス「そなたのような存在そんざいは、たしかに人間にとっては必要だ。

 だが、私たち神々にとって、お前のような存在は脅威きょういだ。

 一度なら反旗はんきひるがえすこともできるだろう。

 だが、そなたのような終焉しゅうえんの力は、一時的なものだ。

 どうあがいたところで、我々神々からの報復ほうふくにはえられまい。」


*「…説教せっきょうなら後にしてくれ。」


ゼウス「いや、ちがう。

 私は興味きょうみがあるのだ。

 そなたのような存在に。」


*「…ちっ。」



ゼウスはたからかにこう宣言せんげんした。


ゼウス「みなのもの。 よく聞け。

 この者は、我々の敵ではない。 味方だ。

 我々がもっと力を付けるための、練習相手になってくれているのだ。」


神々「…??」


*「何だとッ!」


ロキはいかくるったように頭をかきみだしながら、

反論はんろんした。




*「ゼウス! かるはずみなセリフもいい加減かげんにしておけッ!

 キサマは何もわかっちゃいない…。

 終わりをむかえさせることがどれだけ重要か…ッ!

 オレはキサマら神々のオモリ役ではないんだ!」


ゼウス「それはわかっておる。

 だが、ロキよ。

 そなたが私たち神々を滅ぼそうとしているのは、

 人間たちのためなのだろう?

 それならば、なぜ終わりをむかえる必要がある?

 これから人間の未来をともにつくり、繁栄はんえいを目指そうではないか。」


*「…! 分かったような口をッ!」


ロキはゼウスの胸元むなもとつかみかかると、

いきおいいに任せてこぶしなぐろうとした。



ゼウス「いいのか? ロキ。 ロンギヌスでなくて。

 そんなたいそうなやりを持っていながら、こぶしで私を殴ろうとなど。

 やはりお前も、人間にじょうほだされたのだな。」


*「くっ…おのれッ、ゼウス!」


ロキは、それ以上、拳をあげることができなかった。



つづく

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