人はロゴスを求めずにはいられない。空想されたもの、物語られたもの(=ミュトス)に対して、その意味、概念、解釈、価値を求め、説明しようとしてしまう。それを「意味という病」と呼んだ哲学者もいたけれど。
この作品に登場する海辺の町の「青い猫」は何だか分からない。本当に存在するのかも分からない。それを大人たちは、ただ「素敵ね」と思うことができなくて、「青い猫は幸福の象徴だ」「いや、不吉の象徴だ」「どこから来たか」「青くなったのはこういう理由だ」「いくらの価値がある」……と勝手に説明しようとしていく。
私も読んでいて、最初は「青い猫は幸福の象徴かな、希望の象徴かな」などと考え、それを読み解くヒントを作中に求めようとしていたんですが、だんだんその無意味さに気づかされていき、最後には、海辺の町の空と海を背景に、青い猫がただ青い猫として歩いている、幻想的で爽やかな映像が目に浮かぶようになっていました。
「意味という病」からの解放をもたらす作品、とも言えるかも知れません。
この小説の作者は「つべこべ言わずに小説を書け」というインパクトのあるキャッチで、最近しばしば「注目の作品」に上がってくる『小説と家族と猫』の作者、euRekaさんです。
あの作品は、ぜひこの『青い猫』とセットで読んでみてください。