1-14

***


「ラスボス撃破!!」


 数時間後ようやく第五ステージのクリアにこぎつけ喜びのハイタッチをする。


「いえーい!!」


 喜びもつかの間、颯爽と第六ステージが開始される。


 第六ステージは一風変わって、シュミレーションゲーム。男主人公になり、ヒロインの攻略を目指す物。しかし、油断してはいけないのが、これもただのギャルゲーじゃないというところだ。


「次はギャルゲーか。これまた時間がかかりそうだな」


「そうだね」


 このセリフは間違えなんかじゃなかった。


 何故なら、この第六ステージ。時間のかかり過ぎるギャルゲーだったからだ。ヒロインが一人しかいないのは、攻略的にありがたいが、ギャルゲーにも関わらず、そのヒロインがまったく可愛くない。これではモチベーションは上がらないし地獄でしかない。


 それでも前に進む為に今は進めるしかない。


 夜も更けてきてクリックする指が痛い。交換でゲームを進め、息抜きに出た外はかなり冷え込んでいた。


 残り時間も少なくなってきて、気合を入れなおして息を勢い良く吐いた。


 飛び出した白い息は、ふわっと広がって儚く消えた。


「よしっ」


 空を明るく照らす月を見て俺は部室に戻った。







 それから数時間後。


「終わった……」


 地獄のギャルゲーをクリアし、外を見ると徐々に明るくなって来ていた。


「今、何時だ?」


 疲労が溜まった身体で藤菜に聞いた。


 横に座る藤菜はポケットから携帯を取り出して、確認する。


「朝、四時」


 それを聞いて思わず吹き出してしまう。


「タイムリミットまで残り二時間弱か。いよいよクライマックスだな」


 眠気と疲労でもはや意識を保ってるのも精一杯。そんな状況でそれは席を立ち、空を見て吠えた。



「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


「えっ!? 急に何」


 うとうとしていた藤菜は目をかっ開いて、俺を見た。


「目が覚めただろ? ……藤菜。これがファイナルゲームだ。気を引き締めていくぞ」


「ふっ。おっけい最後まで付き合うよ」



 言って俺達はディスプレイを覗いた。



「「えっ?」」


 そこに映っていたものを見て、驚愕する。


「……何で?」


 そこにはクリアしたはずのギャルゲーのスタート画面が映っていた。


「クリア……したよな、確かに」


「うん。……あっここ見て」


 言って藤菜は画面の下隅を指差した。そこには確かに最終ステージと書かれている。


「最終ステージもギャルゲーって事?」


 目の前の状況に理解できないまま、スタート画面を見つめた。


「クリア……したよな、確かに」


「うん。……あっここ見て」


 言って藤菜は画面の下隅を指差した。そこには確かに最終ステージと書かれている。


「最終ステージもギャルゲーって事?」


 目の前の状況に理解できないまま、スタート画面を見つめた。


「とにかく時間がもったいない。始めよう」


 言って俺達は椅子に座って、ゲームを始める。

 進んでいくと、どうやら本当に同じゲームのようだった。

 数時間前に見た話が今、目の前に移っている。


「嘘……でしょう。同じ物二回ってそもそもこのゲーム一回クリアするのに三時間はかかったんだよ。これじゃ間に合わないよ」


 横で藤菜の言葉を聞きながら、俺は考える。

 ここまできて同じ物を二回もやらせるだろうか。

 バラエティジャンルと言っていて、これまで色んなジャンルをやってきて、最後だけ一緒……


 読んだシナリオを連続クリックして、長考を続ける。


 考えろ。考えろ。考えろ。


「何でヒロインの可愛くないこんなバカゲー二回もやらないと行けないのよ」


「……それだ!!」


 刹那、俺は藤菜を見て叫んだ。


「うわっ!? びっくりした何よ」


「分かったんだよ。このゲームの攻略が!」


 それを聞いて藤菜は驚愕した。


「本当に?」


「あぁ。お前のおかげでな、藤菜」


「私の?」


「この最終ステージ。実は時間がかかってきた今までのゲームと違って、一番簡単に時間がかからずにクリアできるゲームだったんだよ」


「どういう事?」


 言って首を横に傾げた。


「ずばりこのゲームはバカゲーだ!!」


 ディスプレイに指を指したまま俺は言い放った。

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