1-11

***


「二人とも来てくれたんだ。心配かけてごめんね」


 蒔杜の家にやってきた俺と女々は蒔杜の部屋に駆け込むと、ベッドに横になった蒔杜と顔を合わせた。


「蒔杜大丈夫か!?」


 すぐさま駆け寄って心配する。


「うん。ただの過労だから少し休めば大丈夫だよ」


「そっか。よかった……ったくお前は無理して」


「はははっ。唯我顔真っ青」


「当たり前だ。俺は本当に心配したんだからな!」


 言って俺は蒔杜の肩に軽くパンチした。


「ごめんごめん。ありがとう」


 いつもの様にニコニコして俺の拳に触れた。


「それでゲームはどうなった?」


「今、ぽぽっちが頑張ってくれてる」


「藤菜さんが……そっか。唯我は女々から聞いたの?」


「あぁ。俺の方こそ気を使わせて悪かったな」


「いいんだ。唯我を巻き込みたくなかったのは、本当だから」


「それでね、唯我。これからなんだけど……」


 そこで女々が沈んだ声で、俺に言った。


「今日まで私達は唯我を巻き込まないようにやってきた。その為に嫌だったけど、数日唯我から離れた生活もした。でも、そのせいで蒔杜は倒れた。ぽぽっちだって今も頑張ってくれてる。私は大して役に立ってないし、何も出来ずに見てることしかできなかった。だから、これは私が言う」


 女々は酸素を静かに吐いて、呼吸を整えて言った。


「お願い唯我。私達に力を貸して!! もう私達だけじゃどうにも出来ないの。唯我の力が必要なの!!」


 迫真の表情で一切の迷いのない真剣なまなこでそう言われ、俺は女々を見返すしか出来ないでいた。


「あたし……いや、蒔杜も知ってるよ。唯我はトラウマのせいでゲームをやめて、ゲームを嫌いになったって言うけど、本当は唯我は、あの頃と何も変わってないって事。唯我はゲームを好きなままだって事」


 その言葉に目を見開いた。


「な、何言って……」


「もう嘘つかなくていいんだよ……自分の気持ちに、嘘はつかないで」


 ハの字に向いた眉。真っ直ぐ見据えるオレンジの瞳。静かにそっと頬を伝う涙。それが今目の前にいる幼馴染の姿だった。


「何年一緒にいると思ってるの? ……唯我の事は何でも分かるよ」


「女々……」


「どうして唯我をゲームに誘い続けたと思う?」


 今度はベットから身体を起こした蒔杜が言った。


「……唯我は誘ったゲーム文句言いながらでも何でもやってくれたよね。本当に嫌いなら本当にやりたくなかったら、普通はやらないよ。それは唯我の本当の気持ちがそこにあるからだよね」


 蒔杜は優しく言った。


「でも唯我には一つだけ、出来ないゲームがある。そのゲームが今まで元凶で、もしかしたらそのゲームは唯我からゲームそのものを奪ってしまう可能性があった。そうなって欲しくなくて、唯我の見えないところで女々と一緒に戦ってきた」


「お前ら……」


「唯我、俺達は今までも、そしてこれからもずっと一緒だ。苦しい物を一人で背負う必要はない。俺たちを頼れ。何のための幼馴染だよ。唯我が手を伸ばせば、それはーーもうそこまで来ている。唯我、手を伸ばして」


「唯我!!」


 二人の幼馴染は俺の名を呼んでその強く、たくましい腕を伸ばした。



「……」


 くそっ……なんだよこれ。お前らかっこよすぎだよ。



 二人を見つめた俺は、不敵に笑って言った。





「やっぱり、お前ら幼馴染は最高だぜ!!」



 掴んだ手がこんなに暖かいなんて、知らなかった。

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