1-10

「女々……」


 呆然として席を立ち上がった俺はそのまま教室の後ろ扉に立つ女々に向かって駆け寄っていく。


「うわっ!! ……唯我?」


 そしてそのまま女々を強く抱きしめた。


「どうしたの、唯我。唯我からこんな風にしてくるなんて初めてだよ」


 抱きしめられたまま女々は、その両腕を俺の背中まで伸ばしてぽんぽんと優しく背中を叩いて言った。


「お前らが急に俺から離れていくから……だから」


 じわじわと涙が零れ出る。


「寂しくなっちゃった?」


 一気に自分の中に溜まっていた想いが破裂して、俺はこの歳にして学校の教室で盛大に号泣した。


「ごめんね。ごめんね、唯我」


 そう言って俺の頭を優しく撫でる。



 この日、俺は再確認した。やっぱり俺にはこいつらが必要なんだって



***


 俺が出す物を出し切って落ち着いたところで、女々が言った。


「そうだ、蒔杜が倒れたの!!」


「えっ、蒔杜が!?」


 鼻水を啜りながら俺は目を見開いた。


「実はね……」


 そこで女々はここ数日の事を話し出した。


 要約するに、「悪魔のゲーム」を危険視していたのは、女々だけではなかった。同じように蒔杜と藤菜もこのゲームは本物と考えていたらしい。

 と、言うのも第一ステージをクリアした翌日、教室で「悪魔のゲーム」をしていた三人はあることに気がついた。

 「悪魔のゲーム」をしていた三人を気になったクラスの連中は、三人がフリーゲームのサイトを閲覧している様に見えていると。

 三人には見える「悪魔のゲーム」がクラスメイトには見えない。それで人一倍ホラーが苦手な女々は取り乱した。その直前にはポルターガイストややけに転倒するがあったからなおさらだ。

 俺に何も言わなかったのは、俺がこのゲームを信じてないから。そしてこのゲームをしたがらないから。考えた末に三人で交換でプレイしてクリアを目指す事にしたらしい。かくいうは俺を巻き込まない為でもあったと。またみんなで楽しくゲームをする為に地球の滅亡を防ぐ。

 その一身でここ数日「悪魔のゲーム」と格闘していたと。

 その結果、二、三、四ステージはクリアし、残りは三ステージ。ここは運がよく、第二ステージは飛んでくるノーツが尋常じゃない音ゲー。これは音ゲーを得意とする女々が担当した。

 第三ステージは格闘ゲーム。こちらも速度が早すぎるガードするのが精一杯の鬼畜格ゲー。これは藤菜が担当した。

 第四ステージはアクション。刀でばったばったと押し寄せる敵をなぎ倒すアクションゲーム。敵が多すぎてすぐに囲まれて即死するアクションを蒔杜が担当し、体力と精神をすり減らしてクリアした。





「昨日ね、蒔菜が熱を出しちゃったの」


「蒔菜が?」


 蒔菜というのは、蒔杜と二つ歳が離れた妹だ。現在、中学三年生であり、俺達と同じ学校に入ろうと猛勉強中の受験生だ。


「それでね、蒔杜ゲームの疲れがあっても、蒔菜の看病してたんだって。それで今、過労で倒れたって」


「あのゲームは?」


「今、部室でぽぽっちが進めてくれてる。私がゲームは引き受けるから二人は蒔杜のところに行ってって。私より二人の方が適任だって」


「そうか。だったら早く蒔杜の所に行くぞ」


「うん!!」


 慌てて教室を飛び出して、蒔杜の家を目指した。

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