第11話 蠍の死の毒

凪だ。


一種の激しい沈黙とも呼べるだろう。


死の凪だ。


涅槃の葬送行進曲。


タナトスが意識を黙らせたといってもいい。


大多数にとっては都合のいい世界は終わり、大多数にとっては都合の悪いように見える時代が始まる。


新しい時代が


始まる

  始まる。

 始まるがよい。 来い。   俺の


        正午よ!


すべてを鮮明に見渡せる二時の太陽よ。


青空に狂い咲いた向日葵よ!



ヴィジョン。 物質の海から上昇した太陽の。


   のっぴきならない明らかなる世界。



曖昧さをかき消すものよ。


心身脱落 身心脱落 脱落身心


全身がリラックスして、冷たくなって、死に向かう。


エクスタシーと深い洞察。


成熟した彼女は完全に同性愛を克服しており、健康な異性愛の花を咲かせていた。


あるコミュニティに認められたりすることと悟りは何の関係もない。


わからないならわからないといえば合格なんだよ。



次の日、蠍は死んだ。


蠍自身の毒が回って死んだ。


空はどこまでも青く青く澄み切っていた。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る