第8話♢ ようやく始まる異世界生活:8


「それで、この街の町長が裏でオーガと繋がっていると……?」



「ああ、そうだ。」



俺は、大通りの外れにある小さい酒屋で出会った30歳位の店主アイロと話しをしていた。


彼曰くこの街の町長がオーガと繋がりがあり、なんだかの悪事を働いているらしい

この噂は、街の住民は殆ど知っているのだが、証拠が無いためデスター(この街を警備、安全、平和を保つために出来た団体、いわゆる警察)でさえ手出しが出来ない状態らしい。


俺は、アイロに注がれたお酒をチョビチョビ飲みながら話しを進める。


あと、この世界ではお酒の年齢制限が無い為、17歳の俺でもお酒は飲めます。



「それじゃあ、証拠さえ見つければ……」



「……ああ、逮捕出来る。」



証拠か、と言ってもどんな悪事を働いているかさえ分からないのに、証拠など見つかるのだろうか?

町長を遠くから、探っても何の意味の無いだろう……

近づく方法は無いのか?いや、もしかしたらだが。



「なあアイロ、町長の屋敷で何か雇ってないか?」



「ああ、メイドなら雇っているらしいぞ」



「そうか……」



メイドか______そのメイド使えるかもしれないな……



「分かった、ありがとうアイロ。」



「ああ……」


俺は、アイロにお礼をしそのお店を後にした。____________





夜9時過ぎ……俺は、ある家の前に来ていた。

黒いマントに身を隠し、闇に紛れる。


その家は、二階建の中々大きい家

二階の窓からロウソクの光が漏れて闇の中で、強く目立っている。


今、俺の前に建っている。家の住人は、紛れも無い町長のメイドの家だ。

これから、俺が行う事は犯罪であり日本でやったら確実に捕まること……


そう、脅迫だ_______


俺は、家の中へテレポートで侵入し物音1つ立てず。

メイドの部屋を向かった。


テレポートは、ブラズンより確実に思った場所に移動出来き移動距離も倍だ。

俺が、徐々に上級魔法を使える様になっている原理は分からないが、恐らくこの世界の経験やら時間が関係しているのだと思う。


静かに、部屋のドアを開けるが中には誰も居ない

先程から、水が流れている音がしているのだがメイドはお風呂にでも入っているのだろう。

俺は、メイドが部屋に戻って来るまでドアの横で息を潜める。


何分か経ってようやく階段を登る音が聞こえて来る。

そのまま、その足音は廊下を辿りこの部屋の前で止まった。


どうしたのだろう、何故ドアを開けない



「誰?」



ドアの外から、声が聞こえて来る。

どうやら、俺の存在を察知して居たらしい



「何故分かった?」



俺は、微笑みながら壁の向こうにいるメイドに言葉を返す。

すると、メイドは驚きもせず言葉を返して来た。



「……匂いがした。人間の……」



「匂い?」



「……うん」



「凄いな……」



かなりの嗅覚の持ち主だ。

匂いだけで、人の存在を見破れるとは……


俺が、言葉を返した瞬間、部屋のドアがガチャっとゆっくり開く

そのまま、メイドは自分の部屋に足を踏み入れた。

俺が居るのに何一つ驚いた感情を見せず。ただ、普通の顔をして入ってきたのだ。


そのメイドは、目鼻口が整っており、俺と同じ純白の白髮で、瞳も俺と同じく綺麗に輝く青色だった。

どこか、俺に似て居るように思える。



「で、何?」



「え……?」



余りに肝が座って居た為、俺が逆に驚き固まっていた。

そんな俺を見て、メイドはクスっと笑い俺を見つめる。



「あんた、黒のステファでしょ?」



俺は、深くフードを被り顔を隠して居たはずなのに、どうしてか俺の正体がバレる。



「何故分かった?」



「ん〜感かな?」



そう言って、今もまだ笑っている。

感な訳が無い、このメイドなんだらかのスキルや能力を持っている確実に、それも最上級の



「で、私に黒のステファさんが何の用?まさか、夜這いなんて事は無いわよね?」



「そ、それは断じて違う!」



「じゃあ、何?」



メイドは、先程の表情とは打って代わり俺を真っ直ぐ睨みつける。


俺は、剣を抜き足に思いっきり力を入れ光の速度でメイドに近づくとメイドも華麗に俺から距離を取り、部屋に置いてあった剣を手に取り、俺に向ける。



「どう言うつもり?」



こいつ、強い……間違い無い、かなりの実力者だ。

そうは思うが、神の知恵ストールを所持している俺にとっては足元にも及ばない


神経を集中させる、一切の物音が聞こえ無くなり体が軽くなる。

俺の、顔が月明かりに照らされ淡く光り輝く


そんな、俺を見てメイドはこう言い放った。



「この人_______強い。」



この言葉を、発した。

あと、メイドは手に持っていた。剣を床に落として両手を挙げた。

どうやら、俺が本気を出して居ないのを察した様だ。



「そうしてくれたら助かるよ。」



優しく微笑みながらメイドを見つめる。

ただ、俺の目は一切笑っていなかった。


その後、メイドは観念したかの様に部屋に置かれている椅子に腰を下ろし口を開いた。



「で、改めて聞くけど何の用?」



「うん。単刀直入に言おう、俺の物になれ」



「へ……?」



メイドは、顔を赤くしながら首を傾げている。



「あ、あなたの物に……?私が……」____________________





いきなり過ぎて、頭の回転が追い付かないどう言う事?俺の物になれって……

結婚?付き合う?って事?


あーー分かんないよ!


今まで生きてきた中で、人とお付き合いした事なんて一度も無いのに……

こう言う時は、どうするの?


て言うか、言った相手が私の目の前でニコニコ微笑んで居るんだけど


で、でも私は私のキャラを演じる。



「は、はあーあ、あんた何言ってんのよ……」



駄目だ、言葉に力が無い。

舐められる、絶対に、私なんか町長のメイドに過ぎない。

人間以下の、何者でも無いただのメイド


母も祖母も……先祖代々、町長のメイドとしてやって来た。

動物の様に扱われ、何かを失敗すると罰を与えられる。


そんな、私に俺の物になれ!ってスケールが大きすぎるよ……



「えーとー大丈夫?」



「大丈夫なかじゃないくない!」



駄目……自分で何を言っているのか分からない。



「大丈夫じゃないね。あ!なんだこの痣は!」



ああ、これか今日の仕事でちょっとしたミスをして町長に殴られた場所だ。

でも、よくそんな所によく気付いたなこの人……



「何でも無い……」



私は、そう言ったのだが黒のステファンは聞き耳一つたてずに、私の太もも部分を弱く叩いて来る。



「くっ!」



「やっぱり怪我してんじゃねーか」



そう言って、黒のステファンは私の太もに超回復をかけてくれた。

だが、超回復は上級魔法の為、かなりの魔力を使う……筈なのに_______魔力が減って居ない。


私のスキルは、魔力を感じる事が出来る。

だから、さっきも部屋にいる強い魔力をした黒のステファンを感知出来のだ。

決して嗅覚が優れている、とかでは無い。


けれども、この黒のステファンは一切、魔力が下がって居ない。

あれ程の、上級魔法を使って魔力を消費しない人間……いや、生き物は存在しないのに


しかも驚く事に、この人は時間が経つ事に魔力が増えって行ってる。


私は、只々この超人に圧巻しているだけであった。



「あ、ありがと……」



「いえいえ、それで返事は?」



「えーとー、もしやだと言ったら?」



「力ずくになるだろうな」



「はあ、分かった。あんた、の物になるよ。」



正直、お風呂を出た時から私の足は震えが止まら無かった。

怖かったのだ、男という生き物が、

私は小さい頃、父親に虐められて居た。殴られ、蹴られ、それが日常だ。

そして私は強くなると決めたのだ。強くなれるなら何でもやると決めた。

そして私は強くなった、けど結局は男と言う物の下に付いてしまうどうしても、

そう……世界は、男が女の上に立つ様に出来ているのだ。


『筋力』『身体能力』『知識』『魔法』など、全てだ。

全てにおいて男は女に勝る能力を持っていた。


そう、私の努力は無駄だったのだ、全てが。


私が、そう返すと男は又も微笑みながら口を開いた。



「ありがとう」







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