第7話♢ ようやく始まる異世界生活:7
♢
結局、ユウキは要塞奪還の日までに見つける事ができなかった。
今日、幻獣族はお兄ちゃんの裏切りで全滅するのだろう
私も奇跡ながら処分されずになんとか生き残っていた。
「それじゃあ、いくぞお!」
お父さんの声が、隠れ家全域に響き渡り空気を一瞬にして返させた。
お父さんは気付いて居ない様だ、お兄ちゃんが幻獣族を裏切る事を......
「「うおおおお!」」
お父さんの声を聞いた、兵士が雄叫びを挙げ、士気を高める。
ユウキが見つかって居れば......
私が!私がちゃんと探して居たらユウキだって!
そう、私が悪い......
幻獣軍は、西の森を抜けた後『要塞エルグランテ』目指して軍の駒を進めた。
そろそろ、お兄ちゃんが何だかの罠を仕掛けて来る筈なのだけれど、何も仕掛けて来ない
どうして......?なんで何も行動を起こさない
そこで私は、とても重要な事を忘れて居たことに気がついた。
そう、今隠れ家に残って居るのは武器を何も持って居ない一般幻獣民だ。
明らかに、敵の標的となる。
まさか、戦力が全て無くなった隠れ家を......
でも、いま戻っても遅いだろう。
今頃は、攻撃されて居ると思う。
私は、馬車の荷台に上がり西の空を見つめる。
西の空には黒い不吉な煙がモクモクと上がっていた。
気付くのが遅かった。
でも、そんな重要な事に兵士誰一人、気付かない
私は、さっきまで軍の先頭を馬に乗って歩いていたお兄ちゃんを目で探す。
が、予想通りその姿が見当たらない、なんだかの言い訳をして逃げたんだろう。
まあいいや、どうせ皆んな死ぬんだから......
そこから私達、幻獣族は何キロか進みやっと要塞エルグランテに到着したのだが、
その姿は、とてもだが見てられ無い惨状だった。
北門は、吹っ飛んでおり瓦礫がゴロゴロ落ちている。
オーガ兵士の死体......
右手が無いも者、顔が無い者、それはそれは酷い有り様だ
なのだがその光景を見て幻獣族の兵士達は死体を踏んで遊んでいる者や、棒立ちで驚愕して居る者様々な者がいた。
これでは、私達が悪者ではないか
私達は、並列も組まずままよ要塞内部へ侵入したが、オーガ兵士が一人もおらず死体だけが転がっているだけ。
誰だ......こんなにも圧倒的な力を持った人は......
脳内に一人の人物の名が浮かび上がった。
その名は、ユウキ_______
ユウキしかこんなには出来ない絶対に、北門を破壊しオーガ兵士を殺してこんな短時間で攻略......
私達では、無理だったと思う、倒れているオーガ兵士を見る限りではしっかりとした防具やら武器やらを身に付けて居る。
戦力の差があり過ぎだ。
この要塞を奪還したところで私達、幻獣族が有利になった訳ではない
これからの戦況どうなって行くかは、目に見えているはずだ。
もう、ここら辺で敗戦を決した方が良いのではないだろうか?私は、心の何処かにこんな感情がある。__________
♢
街の人々は活気の満ち溢れている。
そんな、空気が今の淀んだ俺の心癒してくれる。
よく見ると、見た事も無い果物などが市場に出されていた。
なんだろう、スイカに似たような......りんごに似たような感じのフルーツ
ゲッソグランティスと言う名前のスープ
他にも沢山ある。
だが俺は、異世界転生をしてとても重要な事忘れていたのだ。
お金が無い......
そう、お金が無いのだった。
このままでは、餓死してしまうさっきの戦闘で体を動かした為お腹がかなり空いている。
そんな、事を思いながら道を歩いて行くと市場を抜けた直ぐそこにひとだかりが出来ていた。
どうしたのだろうか?
俺は、その人だかりの中に居る男に話を聞く
「これは、ヘッスラだよ。あそこで、このカードが売っているだろう」
「それでこのカードに書かれた数字があの中に表示されると莫大なお金が貰えるのさ、でも俺は何年も試して居るが何も当たらなかったね」
「そうですか……」
今思ったのだが、そもそもお金無いのに俺は、カードを買おうとしていた。
「あの今、お金が無くて……」
俺が申し訳なさそうに、頭を下げると、男はどうしよもなさそうに
「たっくしゃねーなあああ!ほれ」
そう言って、男は俺の手に銅貨を二枚渡す。
「ありがとうございます!!」
「いえいえ、まあお前さんも頑張ってくれ。」
そう言い残し、男はさっさと、どっかへ行ってしまった。
なんて優しい人なんだ、俺から見ればあの方は異世界ををすくいに救いに来た勇者に見えた。
そんな事よりもカードを買わなければ、テーブルの上を見ると残り一枚だけ残っている。
俺は、そのカードをすぐさま手に取り店員にさっき貰った銅貨二枚を手渡し発表を待つ事にした。
その後、何分か後に当たりの発表が開始した。
「えーとー、俺のカードは赤の五番……」
そして、俺は当たりが公開されている掲示板に目をやると、
三等賞 黄の100番
二等賞 青の1247番
一等賞 赤の5番
俺のカードは、赤の5番
そう、俺のカードは一等のカードであった。
決して俺は、
自分の運で一等を当てたのだ。
俺は、ただ呆然としてその場に立ち尽くして居た。
「一等の方〜どなたですか〜」
店員が、一等の人を探している。
そうだ、俺が一等だ。誰でも無い、俺だ。
「は、はい」
俺が返事をして店員に付いて行くと、そこには莫大な量の金貨がドッサリと積まれている。
こんな光景を、生きているうちに見れるとは……
「えーとーこれで全部です」
そう言って店員っは、俺に向かって金貨の入った大きなチェストを指差す。
そこには、10個のチェストがビッシリ置かれている。
どうやって持ち帰ってるのだろうか?
手で持つか? 無理がある。
「あ、あのーどうやって持ち帰れば……?」
「ああ、忘れてました。このチェストを触れながら『オリジン』と唱えて下さい」
俺は店員の言う通り、チェストに手を触れながらオリジンと唱えた。
「オリジン!」
その言葉を発した直後、金貨が入ったチェストが宙を浮き、何処かへ飛んで行ってしまった。
「え……?」
「あの金貨は、近くの財務屋に送られました。金貨を取り出したい時は、『イースト』と唱えて下さい
そうすると金貨が、貴方の前に召喚されます。」
「は、はい……」
正直言っている事が理解出来なかった。
と言うか、財務屋と言う店を俺はそもそも知らない、ので理解する以前の問題だろう。
そんな事を思いながら、首を傾げ店員の話を静かに聞く。
その後、色々な手続きがありようやくあの金貨が俺の所持金となった。
この世界には、税が無く自ら得たお金は全て自分の所持金に加算され
その中で、莫大なお金を手にした、数少数の者達が財務屋にそのお金を貯金して置くらしい
そして俺はその数少数の方に入っている。
「はああーー」
快晴の空を見上げ、大きく深呼吸をした。
丁度、12時を回った所だろうか?
市場の方も先程より賑わっている。
そんな、賑やか街の大通りを歩いていると、新聞みたいな物を配っているお兄さんが俺の手に新聞を手渡してきた。
俺が、その新聞に目を向けると
その新聞に書いていたのは、[要塞エルグランテ 幻獣族奪還 ]と言うのが見出しになっておりその中に、ある文章が書かれていた。
『要塞エルグランテ奪還は、幻獣族が成し遂げた物では無く、とある男によって奪還された。
その男は、純白の白い髪をしており、黒い見た事も無い服装をして居た。』
と書かれていた。
まさに俺その物である。
他にも、『黒のステファ 出現』など、書かれている。
「ステファってなんだ?」
よく分からないが、まあ強い人見たいな意味だと思う。
新聞を読みながら、大通りを歩いていると通りすがりの人がいちいち俺の方を見て通り過ぎて行く。
そう、新聞と俺が一致しているからだ。
絶対そうだ、間違いない
俺は世界来てずっと制服のままでいた。
流石に、このままで過ごしていると目立ちそうだ。
俺は、この通りに服屋は無いかと目をやる
すると、すぐ近くに潰れ掛けの小さい服屋が高級店との間にひっそりと立っていた。
「あそこでいいか」
俺はその店に、足を運び
俺好みの服を見つけ、その服を手にとる。
他ズボンやフードの付いたパーカーらしき服も
勿論試着などは無くただ、服が雑に置かれているだけ
「あ、あのー」
店員を呼ぶが誰も出て来ない
誰も居ないのだろうか?
「あのーー!」
俺はもう一度大きい声で、呼ぶすると店の奥から俺と同じ歳位の女の子が急いでで出来た。
髪の毛が、ビチョビチョに濡れており、石鹸のいい匂いが微かに漂ってくる。
お風呂にでも入って居たのであろうか?
「す、すいません……」
そう言って、女の子は深く頭を下げ俺にお詫びをする。
「いえいえ」
「銅貨1枚です。」
「え?」
俺は余りの安さに耳を疑った。
「銅貨1枚です……」
「え、はい。イースト」
俺が、そう唱えると金貨がぎっしり詰まった。チェストが召喚された。
そこから、金貨を一枚取り女の子に渡す。
「え……?銅貨1枚ですよ。お客様……」
「いや、いいんだ。お店の資金にでも使ってくれ」
その言葉を聞いた女の子は、目を丸くして驚愕している。
「は、はい!ありがとうございます!」
そう言って女の子は、頭を深く下げ俺にお辞儀をする。
服の置き方は雑なのに礼儀は何故かしっかしていた。
無論、俺はカッコ良く微笑みながら店を後にし……ようとしていたのだが、
店の柱に思いっきり辺り頭を強く打つ、痛い……そして恥ずかしい。
俺が女の子の方を見ると、女の子は必死で笑うのを我慢していた。
うん……もう、笑っていいよ。
ごめね、こんなのがお客で
そう心で謝り俺は店を後にした。
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