第6話♢ 始まるフロント:6

雨が滴る。

静かな、西の森_____俺は1人空を見つめている。

目に雨の雫が入るが気にも止めずただ、見つめる。

曇った。空を_____


決めた。


俺は、人間である事と最強の力を持っている事を隠して、この異世界で生き延びると、

俺は強い、強いからこそが真の力を隠すのだ。

誰も傷付けないそんな、平和な世界を……





「ユウキが人間だなんて……」



私は、1人、隠れ家の近くにある川の辺りで座りながら川に石を投げていた。

あの時、ユウキが人間だと明かしたその瞬間……私は、理性を保って居られなかった。

だって私を、オーガから守ってくれた人が私がどの種族よりも憎む人間だったのだから


『ポチャン!』『ポチャン!』と投げる度にそんな音が私の頭の中に響きわたり、自然を感じさせてくれる。


川に石が音を立て落ちた瞬間

私の、脳が生命の気配を感じ取った。



「誰?」



誰もいない……

おかしいな、何か気配を感じたのだけれど


ん……?


やはり誰かがいる。

直ぐそこに、どんどんこっちに近付いて来て……通り過ぎた。


なんだったのだろう……?

私は、その謎の気配を追って付いて行く無論バレないようにこっそりと



「来たか、アルンダール」



この声、聞いた事がある声_____お兄ちゃんだ。



「ああ、ロード、作戦はどうだ?」



「少々、邪魔は入ったが順調に進んでいる。それより、本当に例の物は貰えるんだよな?」



「安心しろしっかりと用意してある。」



「そうか……」



「そんな事よりも、邪魔ってもんはなんだ?」



「ん?その事か、人間の男が現れた事と妹が現れた事だ。」



「そうか、男の方は?」



「そいつなら、とっくに追い出されたよ。妹はこれから俺が処分するから安心しろ。」



処分?



「そうか、絶対にとり逃すなよ。」



「分かっている。長い間磨いて来た俺の腕前を余り舐めない方がいいぞアルンダール。」



「悪かった。お前を信じよう」



「幻獣族は俺が裏切ってオーガ側に付いた事を知ったらどう思うだろうなぁ?」



「さあな……でも、幻獣族は必ず絶滅する。お前を残してな」



「ははは、そうか」


森の中にロードの悪に満ちた笑い声が響き渡る。

その後、ロードの言葉を最後にし2人は、何も言わずにその場を立ち去った。



「お兄ちゃんが幻獣族を裏切る……?」



確かにそう言っていた。

つまり、お兄ちゃんは『要塞エルグランテ』奪還の日、幻獣族を裏切りオーガ側に付く。

おそらくだが、お兄ちゃんはその日に何らかの形で幻獣族を罠にはめる筈それで、上手く罠にはまった幻獣族を全滅させるのだろう。

その作戦が行われたら、幻獣族……いや、エルフや妖精だって危険が高まる。

何としてでも阻止しなしなければ……でも、私一人で何が出来る?


おとうさんお父さんに言う?

おそらく信じて貰えないだろう。


気付くと私はあと一つの道しか残されていない事にきづいた。

それは、有意義に助けを求めるしか無い


ユウキを探して幻獣族の皆を救わないと、ミューはそう心に決め大きく一歩を踏み出し森を駆ける。___





俺は、やっとこのだだっ広い森を抜ける事ができ、この場所から近くにあるある要塞を目指して歩いていた。


オーガと言うのはどの位強いのだろうか?

幻獣族よりも強いとなるとかなり厄介になりそうだ。


幻獣族は、勝てるのだろうか?要塞エルグランテを奪還する事は出来るのだろうか?

そんな、不安が俺の頭の中で交差して飛びかう。


そんな事を考えながら長い道を歩いていると、山の上に大きな要塞が見えた。

予想よりも遥かに大きい


あそこが、幻獣族の本拠地か……

砦は、高さ10メートルはあるであろう、石垣に覆われて内部が良く見えない。

大砲が40門、要塞の入り口が北と南に一つずつあり、そこには沢山のオーガ兵士は守りを固め立っている。


いまの幻獣族には到底、攻略不可能であろう、戦力の差があり過ぎだ。



「やっぱり、俺がやるしか無いか……」



結城は、一人小さく呟き魔法を唱えた。



「ブラズン」



俺の周りが光り輝き始め、目を閉じる。

激しい風と共に俺は、その場から消えた。


目を開けると、俺の想像した場所へしかっりと到着いていた。

そう、要塞エルグランテ北門前_____


北門の方が、天守閣に近いため俺は、北門を選択した。


俺の出現に気付いたオーガ兵士が、あたふたしながら俺の方へ大砲やら鉄砲やら弓矢などを向けて戦闘準備を進める。

出来るだけ早くして欲しいのだが、城門前の大砲の準備に手間取っている様子だ。


そして1分後ようやく準備が完了したようで、オーガ兵士の1人が鐘を鳴らす。

それと同時に、俺は閉じていた目を力強く開き聖剣を手にしている。手にめい一杯の力を込めた。

剣は、光り輝き始めついには目がくらむほどの明るさに達した。


俺は、その剣を要塞エルグランテに向けて弱く振り落とした______


その瞬間、俺は神の知恵ストールの力を改めて思い知らされた。

北門は、跡形も無く吹っ飛びもちろん、オーガ兵士は空高く飛ばされた。


激しい地響きが起こり、地震を感じさせる。



「あ……やり過ぎた。」



俺は、門の前に居る兵士を飛ばしたかっただけなのに北門ごと吹っ飛んでしまった。

恐ろしい、強い力と言うものは。簡単に命を奪ってしまう。



「はあ……」



俺は、深く溜息を吐いたのち要塞内部へと足を踏み入れた。

内部は、とても入り組んでおり中々最上階へ辿り着け無い。


それに加えて、オーガ兵士が続々と出てくるので、いちいち戦闘するのがとてつもなく面倒くさいのだ。



「「おおお!」」



オーガ兵士が、雄叫びを上げながら俺へ突進してくる。

もはや戦闘なんかでは無い、肉弾戦に近い状態で俺は、1人オーガ兵士と勇ましく戦っていた。

何時間か、戦闘していると流石にオーガ兵士の数が減ってくる。


俺的には、ここら辺で退却して欲しいのだが……相当この要塞を守りたいのか中々退却をしない

オーガが強いと言われて居るのには、心の強さや根性が有るかなのかも知れない。


切りがない……



「おりゃ!」



斬りつけた、オーガ兵士が赤い紅色の血を流して地面に倒れる。

その光景を俺は何度も何度も見ていた。



「「うああああ!」」



まだ、子供の兵士であろうか?

俺と同じ位の子供が兵士として戦っている。


だけれど、倒さなければ俺がやられてしまう、その子供兵は無惨にも血を勢いよく流して倒れた。

出来るだけ浅く斬りつけたので、運が良ければ助かるかも知れない。


そして、2時間位経った頃やっとオーガ兵士に撤退命令が下された。


♦︎全兵士 要塞エルグランテ を放棄して撤退


♦︎生きている者を、出来るだけ連れて撤退しろ


♦︎撤退も、勇ましく


正直言って驚いた。

並列もしっかりしており、命令も全兵士に行き届いている。

それに、ちゃんと生きている仲間を背負い退却して行くのだ。


退却し終えた。のを確認して俺は、聖剣を鞘に納め一息つく。



外から、大声が聞こえて来る。

恐らく幻獣族であろう。


俺は、幻獣族を救う道を選んで良かったのだろうか?

オーガの方が、生き物としての威厳があると思う。


俺は、要塞の最上階から幻獣族を眺める。

並列は乱れおり、グチャグチャであっち行ったりこっち行ったりしていると兵士も見える。

もはや、軍と言えない程の醜さ……


どうしたのであろう?

ロードが、額に汗を掻き体が震えている。


何かあったらのか?


そんな、光景を見ていると直ぐそこから幻獣族の声が聞こえてくる。

俺は、急いで魔法を唱えた。



「ブリズン」



凄まじい風が吹き、要塞から賑やかな街の入り口に転移した。

街が壁に囲まれおり、沢山の川が流れて居て、街の真ん中には大きなお城がそびえ立っていた。


まさに、幻想的な街__________



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る