第3話♢リアライズ:3
神様は、まだ現状を理解出来ていないようで口を開いたまま棒立ち状態
そんな棒立ち状態の神様の前で手を振って気付かせようとするが全くこちらを見ないで
ただ空と湖を交互に何回も繰り返し眺めている。
結城は、そんな神様に優しく声を掛ける
「おーい神様~?大丈夫ですか?」
何回も声を掛けるが神様は、一向に気付いた素振りを見せずに未だ棒立ち状態
どうすればいいのか分からないのだが、とりあえず俺は神様の頭をポンと優しく叩いたが反応が無い
今度は、さっきより強く神様の頭を叩く、俺の左手が神様の頭に触れた途端
凄まじい轟音と共に衝撃波が、俺の身体に打ち付けられた。
何が起こったのか分からずにただ神様を砂煙が舞う中必死に探す。
だが神様の姿が見えない、
さっきの衝撃波は何だったんだ?隕石か何か?いや、その可能性は低い……
ならば誰が…… 分からない、そんな事よりも神様を見つけることが優先だ。
また俺は、未だに舞っている砂煙の中を、必死に目を凝らし結城は神様を探すがやはり見つからない……
地面に膝をつき涙目で下を向き___男らしくない大粒の涙を結城は目から零した。
そんな中、どこからか大きな笑い声が聞こえてくる。
この声……そう神様の声だ。
すぐさま俺は、その場から立ち上がり未だに濡れている目を自分の着ているパーカーの袖ですべて拭き取った。
辺りを見渡すとすぐ近くで神様は俺を見て笑っている。
(ははは!君、最高だよ!)
「え……?」
神様は何を言っているんだ?
(あれを見てごらん)
そう言って笑顔で神様は、ある場所を指差した。
そこは、さっき俺が神様を叩いた場所よく見ると地面に直径10メートル程の大きなクレーターが出来ている。
隕石でも降ったのかと俺が首を傾げていると神様がとんでもない事を口にし始めた。
(あの大きなクレーターを作ったのは君だよ?さっきの衝撃波でこのクレーターが出来たのさ)
最初は何を言っているのか全く理解出来なかったのだが、何秒か頭を回転させようやく神様の発言を理解する。
そう、俺が
その事実を知り俺は、この能力の本当の怖さを思い知らされた。
自分の思いだけではこの力はコントロール出来ない、もっともっと強くならなければ使いこなせない下手すれば世界までもが崩壊する最強にて最悪の能力それが
自らの貧弱さを理解し、自らの手でその力本来の力を得る。
「…………」
(いやいやー初めてだよ!こんなに適正な人間は!)
どう言う事だ?
どんな人間にもその力の能力に適正や非適正などが付くと言う事で良いだろう。
あまり理解していないが俺がこの能力に適正と言う事はよく分かった。
豚に真珠___にならないよう、心の中で俺はそう願う。
こうして相変わらず頭を捻らせている俺を見て神様は、今までに無い笑顔で俺の事を見て口を開いた。
(そろそろ、ここに居る時間もあと少しになって来ました!あと、3分後にフロントへ転生して頂きます!)
かなり急に神様は、その話を始めた。
あと3分か……
「分かった。何か注意事項とか無いのか?」
(うーん そうですねえー強いて言うなば
「了解」
短い返事をして眉間にしわを寄せて転生する準備を済ませ神様を力強く見つめ準備が出来た合図をする。
準備と言っても心の準備の事なのだが____そんな事はどうでもいいついに異世界転生を俺はするのだ。
そんな、俺の顔を見て神様は相変わらず笑顔で俺を見つめた後
先程と同様に空に大きく手を上げながら目を閉じ大きく深呼吸して脳に酸素を送りこんだ後意識を集中させ魔法の詠唱を始めた。
(ホールド・イン・ゼクト!!)
俺の真上に大きな
俺の冒険を歓迎しているみたいに明るくて優しく、暖かい、そんな光
強いて言うのならば、太陽のような
(それでは、いってらっしゃいです!)
「え?もう行くの?」
俺がそう口にした瞬間辺り一面が光に包まれ、何も見えなくなった。
その後の事は何も覚えていない____
♢
「う……」
眩しい太陽が俺の身体を焦がすような勢いで照らす。
目を開け、辺りを見渡すとただの草原にポツンと一人、ボロボロになり朽ち果てている椅子に座っていた。
ここは、どこであろう……?
来たこともない異世界で、こんな広い草原の中一人?嘘だろ
結城は広い草原の中、頭を抱えている。
こんな、状況を体験したことはあるか?
ないであろう……実際に体験するとかなり怖い、景色は素晴らしいのだが俺一人は何処か虚しく感じる。
取り敢えず進むしかない無いな、そう心の中で結城は小さく呟きどちら進めば良いのか分からないまま歩き始める。
「暑い……」
草原なのに、砂漠と同じく乾燥して蒸し暑い、それと同時に強い日差しが乾いた肌を照らし水分を奪っていく
まずい、かなりまずい……脱水症状で死んでしまうのか?熱中症か?
異世界に来て一日もしないで死ぬなんて展開は避けたいのだけれどもこの調子なら
今日中には、死んでしまいそうだ。
喉をカラカラにしながらも、トボトボと歩き続けていると、何処からか爆弾が爆発するような音が何処から近づいて来て聞こえる。
「なんだ?」
近い、地響きが俺の体に強く伝わってくる程の近さ
結城は、走って近くにある丘を勢いよく登る
その、丘から辺りを見渡すと
一人の女が、黒マントの男達数名に追いかけられていた。
男達は、馬に乗り走って逃げている女の子目掛けて直進しながら、手に握りしめている杖から赤い火の玉を女の子目掛けて放っている。
その火の玉は地面に付くと大きく膨らみ爆弾の様に破裂し周りの草を燃やす。
今にも、その火の玉に当たりそうな女の子
あんなのに当たったら確実に死ぬ……
一番先頭を馬に又借り走っている男が放った魔法が間違いなく女の子に当たるだろう方向に飛んでいく
「当たる……」
俺がそう言葉にした瞬間
俺の頭の中に言葉が響いた。
(救え……)
確かにそう聞こえる。
俺は、力一杯足に力を込めて足を踏みだすと驚く程の速さで草原を駆ける。
そのまま、女の子目掛けて飛んでいる火の玉を拳で粉々にし近くに転がっていた木の棒を拾い上げ俺は、聞いた事も無い言葉を口にした。
「クラフ・ゴット」
その言葉を発した直後、さっきまではただの木棒が美しい聖剣に変わっていた。
そのまま俺は、湖の時の様に黒いマントの男達目掛けて軽く剣を振り落とす。
轟音と地響きが同時に起こり地面が真っ二つに割れ、男達は空を舞いそのまま地面に落下する。
その上から大量の石や砂が男達を埋め、何も埋まっていないかの様に平然と積もり男達は完全に砂に埋もれてしまった。
俺は、そんな男達を見て少しながら笑みを浮かべていた。
なんだろう……物凄く気持ちが良い、この時、俺は初めて人を痛み付ける気持ちを理解出来た。
きっと俺を虐めていた奴らも、今の俺と同じ様な気持ちで虐めていたんであろう……
そんな初めての体験による達成感に浸っている途中で大変大事な事を思い出した。
「女の子は?」
辺りを見渡すと、俺の立っている真下で頭を抱えて怯えている。
「大丈夫かい?」
女の子に優しく言葉を掛けるとビクッとしながら顔をゆっくりと上げ俺の顔を見てくる。
その女の人は、実に美しい顔立ちであった。
真っ白な白髪、青い瞳、髪の毛と同じく真っ白な肌……そんな女の子
よく見ると腰の辺りに立派な尻尾が生えている。
人間じゃない……?
「あ、あの 助けてくれてありがとう……」
小さい声でそう女の子は俺の方を向いて呟いた___その目の中には恐怖と言う感情が宿っているかの様にみえた。
「……いえいえ」
「名前……は?なんて言うの……?」
「久保田 結城だ。初めまして」
「はじめまして……?」
どうやら言葉は通じる様だが日本語の挨拶はこの世界に通じないみたいだ
「いや、何でもないよ。俺の事は結城と呼んでくれ」
「……分かった。」
「君の名前は?」
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