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「俺たちは三人とも同期なんです。小さな会社だから同期は三人しかいなくて。最初はみんな同じレベルだったのに、アイツだけはドンドンレベルアップして行って」
格好いいですよ、アイツは。
そう続けているのに、彼の表情は晴れやかではない。どこか憂い的だ。今日で仕事納めだと言うのに。なんて、そんなことどうでもいいか。
「だからね、アイツらには幸せになって欲しいんですよ」
「幸せになって欲しい、ですか」
「特別な存在ですから」
特別だから幸せになって欲しい、なんて。
「貴方は?」
「え?」
「貴方はそれで幸せになりますか」
彼は驚いたように目を見開くと、二度瞬きをして、ふ、と唇を横へ引いた。
「幸せですよ、もちろん」
グラス内に注がれた視線が甘いのか苦いのか、ここからでは見えない。
「二人が幸せなら、俺はそれだけで幸せですよ」
誰かを幸せにしたいなら、まずは自分が幸せにならないといけない。
昔にそう、言われたことがある。誰かに好きになってもらうには、まず自分を好きになること。
まずは自分を大切にしなさい、とそう言われてきた。
彼は今、幸せだろうか。それは俺には分からない。
彼は今、自分を大切にしているだろうか。それも俺には分からない。
でも、彼にとって幸せであればいいと願わずにはいられないわけで。
特別な人がいるからこそ、自分を犠牲にして身を削って、微笑む強さを持っているのも知っているから。
「私はあなたの幸せを祈ります」
「ありがとう」
ここで見せた表情は、きっとこの先彼らにはきっと見せないのだろう。
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