第13話
美優は放課後にクラス担任を呼び出し、会議室に二人机を挟んで向き合った。
「今日はどうしたのかな」
いつも明るくて優しい女性の担当の笑顔に美優は幾分緊張がほぐれた。
健康に育った美優に特別深刻な悩みはなかったが、思春期に入り気になりだした事は家族と自分が全く似ていない事だった。両親はどちらも小さな顔にはっきりとした二重、高い鼻、薄く整った唇をしていたが、美優はその正反対のこけしのような地味な顔立ちをしていた。祖父母に似ているのならまだあきらめもつくが、これも全く似ておらず、親戚にも親近感のわく顔は誰もいない。両親のどちらにも似ていると言われた美しい姉と比べられる事は特に辛かった。小さな頃は自分も大人になれば母や父に似た容姿になるのだと無邪気に信じて疑わなかった。子供の頃、誇りに思えた家族に対する賞賛―かっこいいねだとか綺麗ねだとか―はやがて苦痛に変わっていき、中学生になると周りからの無遠慮な「美優ちゃんって全然似てないね」という言葉に表面上は気にしないフリをして心の中では深く傷ついていた。そうして、最近良く聞く「二人目不妊」およびそれに関わる「卵子提供」などをニュースで聞くうちに、自分は本当は血の繋がっていない子供なのではないかと疑問に思うようになっていった。
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