第100話 もっと明日の僕

 バンッ! バンッ! バンッ!


 空に花火が打ち上がる、もちろん本来の花火ではない、サンドスター火山にジャパリマンを放り込んだ時に上がる花火のことだ。


「今日は特別な日じゃろう?こんなとこにいて良いのか?」


 隣でそれを眺めるのはパークを守る四神でとっても偉いスザクちゃん、今日も尾羽が素敵ですね?


「大丈夫、今のが合図になって迎えに来てくれるんだ?それにセーバルちゃんにも挨拶しとけってパパも言ってたし」


「そうか、なら良いがな?」


 火口でフィルターとなっているセーバルちゃん… 君もいつか助けてあげたいけど、君を助けるにはどれだけの時間がかかるんだろうね?僕にはわからないや。

 

 僕は手を合わせ一礼すると声に出して感謝を表した。


「いつもありがとうございます… おかげで今日という日を迎えることができました、これからもよろしくお願いいたします!」


 ゴゴゴ…

 小さな地響きが鳴るともう一度… パンッ!


 なぜか今度は何もせずとも一発だけの花火が上がる、こんなことって今まであったかな?


「あれ?なんで?もう終わったはずなのに」


「今のはオマケじゃな、“結婚おめでとう”とでも言っとるのじゃろう?… ん?噂をすればほれ嫁が来たようじゃぞ?」


「あ、本当だ… それじゃあねスザクちゃん?いってきまーす!」




 僕の名前はクロユキ、みんなは僕をクロと呼ぶ。



 もうすぐ19歳だ。

 

 で、今日はそんな僕にとって特別な日。


 今日は…。



 


 僕の結婚式!





 これまでどんなことがあって現在に至るのか、ざっくりと説明しようかな?


 結果的に言うと僕はスナ姉にフラれてしまったということになる、多分こういう運命だったんだろうと今ではまぁわりきっているというか… おかげさまで今の僕がいるってそう思ってる、スナ姉には本当に感謝してもしきれない。


 あの日、船でゴコクに降りた僕はまずはまっすぐカコばあちゃんの家に行ったんだ。





「カコばあちゃん!クロだよ!」バンッ!


「はぅあっ!?」


 勢いよくドアを開けるとビックリして飛び跳ねるカコばあちゃんの姿が確認できた、でもスナ姉はもちろんツチ姉もそこにはいなかった。


 だけど、カコばあちゃんが僕に向かってこんなことを言ったんだ。


「驚いた… 本当に来たのね?」


 まるで僕が来るのをわかってるようなこと言われた、どういうことなのか尋ねるとそこにはツチ姉からのヒントが残されていた。


「これを見て?クロユキくんに手紙よ」


「僕に?どうして?来るなんて知らないはずなのに…」


「ツチノコが言ってたのよ」


 それは二人が支度を済ませてカコばあちゃんの家を出る直前のことだった。


 ツチ姉はなにやらサラサラと簡単に書き残しそれを先に外で待つスナ姉に聞こえないように小声でカコばあちゃんに手渡した。


「クロが来たら渡してくれないか?スナネコには内緒だ…」


「え…っとそれは構わないけど、来るのがわかるの?」


「わかるさ」


「なぜわかるの?事前に連絡をとったわけでもないでしょう?」


 フッと不適な笑みを浮かべ前髪をさっと直すと、いつものように両手をポケットにいれてツチ姉は言ったそうだ…。



「アイツがシロの息子だからだ」



 そして僕は来た、ツチ姉にはお見通しだったようだ、これはもしや父に対する信頼の証のようなものだろうか?二人が親友で、姉弟みたいなものだというのも納得だ… きっとママとは別の形で二人にしかわからない何かがあるんだなってそう思った。


 これ聞いたらママ何て言うかな?ヒマワリおばちゃんもヤキモチ妬きそう。


 ところで、手紙を開くとこう書いてあった。



“ クロへ

 本棚の上から三段目、一番右 ”



 とても質素な内容だが、僕はその通りの位置を確認してみた、すると…?


「これは…」


「地図ね?ゴコクエリアの」


 そして地図には赤く丸をつけてある部分がある、恐らくここに立ち寄りながら進むということだ、ツチ姉は僕がちゃんと追い付けるように道標を残しておいてくれたんだ。


 それから地図を頼りに二人を探したよ、それでもすれ違いとかトラブルとかがあって見付けるのに三ヶ月ぐらい掛かったんだ、その間にこっちのフレンズさんとも仲良くなった、特に記憶に残ってるのはバーバリライオンさんだ。


「君はなぜか種族も違うはずなのに懐かしい感じがする…」


 世界最大のライオン、彼女は絶滅種でその目に孤独の哀しみを見せていた。


 そんな落ち着きがあって引くほど強いバリーさんはちょくちょく世話を焼いてくれた、多分ユキばあちゃんの血を感じ取ったんだと思う… 僕にもちゃんとユキばあちゃんやパパの血が流れてるんだなって少し嬉しかった。


 そしてその協力もあり、僕はとうとう二人に会うことに成功したのだ。



「スナ姉…!」


「クロ…?本物ですか?夢では…」 


「本物だよ!よかった、会いたかった!やっと会えた!」


 僕は脇目もふらず彼女に抱きついた、スナ姉も強く抱き返してくれた。


 たくさん泣いてたけど、嬉し泣きだって言って前みたいに僕に頬擦りしながら尻尾を足に巻き付かせてくれた。


 なんだか随分懐かしく感じたのを今でも覚えている、大きな耳や長い尻尾、淡いブロンドに声も話し方も匂いも、そのどれも僕を安心させる懐かしいスナ姉のもので間違いなかった。


「クロぉ… クロ会いたかった、会いたかったです…」


「うん、僕も会いたかったよ?見つけるのが遅れてごめんね?だってスナ姉全然見つからないんだもん…」


「勝手にいなくなってごめんなさい…」


 安心した、ちゃんとスナ姉は僕のこと見ててくれたんだ… 飽きたりしてないし、哀れみで僕の相手をしてれてたわけじゃなかったんだ。



 無事再会できた僕達を見たツチ姉はひとつため息をつくとスナ姉に言ったのだ。


「なぁ?いつまで意地張ってんだ?行けよ、お前の居場所はここじゃない」


「ツチノコ… でも」


「ツチ姉も一緒に帰ろうよ?なにもわざわざ孤立することないじゃない?そうでしょ?」


「いや…」


 ツチ姉は何も孤立したがっているわけではない、かといって自分に合った住処を探しているわけでもない。


 彼女にあるのは“探求心”ただそれだけだ。


 “知りたい”という欲求を満たすためにキョウシュウにいた頃からいろんな遺跡を調べていた、住み心地の良さから地下迷宮に住み着いてはいたが、遊園地を調べたこともあれば他の施設に潜り込んでいたこともあった。


 そしてある日父と出会い、彼女はその時に恋を知った。


 それはパーク中にあるどんな遺跡を調べるよりも楽しくて、でも時にどんな難題よりも難しくて苦しいものだった。


 そしていろいろあって父を母に譲り、やっぱり自分にはこちらの生き方が性に合っていると思い立ちいつしかゴコクへ移住することを決める… 彼女は所謂考古学者、その探求心は何者にも止められない。


 一方スナ姉はツチ姉と面白おかしく過ごせるならなんでもよかった、地下迷宮をふらついてみれば反応がいちいち面白いツチ姉が見れる、自分もいつしか住み着くようになっていく。


 この子といれば飽きることはない… とそう思ったのだろう。


 様々な経験を経て変わっていくツチ姉を見てまだまだ面白くなる程度に考えていたスナ姉は、突如ゴコクに住むと言い始めたツチ姉の言葉に動揺した。


 ツチ姉がいつしかこんなにも心のなかで大きな存在になっていると気付いたスナ姉は、船出のその時人目も憚らず泣いた… そうして二人は海を挟み離れ離れになった。


 それからしばらくして僕とユキが産まれて、二人ともとても可愛がってくれた。


 そして僕が成長するにつれ、かつてツチ姉が父に対して感じていた感情をスナ姉が僕に感じ始めた。


 あぁこんな風に彼女は変わっていったのか… とこれまではただ自分の好きなように生きてきたスナ姉だったが、だんだん僕のことばかり考えるようになり同時にツチ姉がどれだけ寂しい思いをしたのかと気付き始めた。


 だからこそ、ツチ姉がゴコクを離れ帰らぬ旅に出ると聞いたときはまた動揺したし、さらに「一緒に来るか?」と聞かれた時二つ返事でOKをだしたのだ。


 たまに会えるし、今生の別れでもないのだから… とそう思ってキョウシュウをフラフラしていたゴコクへの移住をしなかったスナ姉も遂に島を出るときが来た。


 でも…。


 スナ姉の最大の誤算は僕がスナ姉のことを好きになってしまったこと。


 両想いになってしまったのだ、父とはそれが叶わず離れて住んでいたツチ姉とは違う、僕とスナ姉は愛し合ってしまったのだ。


 同じようにフラれたならばそんな未練も断ち切り心置きなくツチ姉と対等に立ち旅ができたのに、僕という存在と愛し合ってしまった為にキョウシュウへの未練が大きく大きく残ってしまった。


 それでライブの日の晩のこと、僕達は涙の夜を過ごす。



 スナ姉は僕のおかげでこの上無いほど幸せだったと言ってくれた。


 でもそれこそが彼女の判断を鈍らせている。


 僕はスナ姉を離したくない。


 だからこうして追いかけてきた。


 スナ姉も喜んでくれた。


 だけど、だから連れ帰るんだってそういう問題ではなくなったのである。



「クロ… オレは戻らない、もう帰るつもりもない… オレはな?」



 ツチ姉の意思は強く、固かった。


「クロ、大事なお話があります」


「うん…」


 僕はスナ姉が好き、スナ姉も僕が好きだって言ってくれた、それでも…。


「ボクはクロを愛してます、このまま駆け落ちというのをしたいくらいです… それでも、やっぱりボクはそれでもツチノコのそばにいたいんですよ?きっとこのままツチノコを一人で行かせたら今後絶対に後悔するんです… でもきっとそれはクロをとても傷付けてしまいます、こんなボクのことをこんなにも愛してくれたクロを裏切るんですから?どんな罰も覚悟はしています」


 辛い、辛いさ?いっそ死んでしまいたいほどに… 続いた彼女の言葉はどんどん僕の胸を締め付けた。


「だからクロ?ボクも帰りません、ボクたちはもうここまでにしましょう?大丈夫… なんて無責任かもしれませんが、クロはみんなに愛されてるから… だからボクがいなくてもきっと大丈夫です、でもツチノコは人見知りですから?ボクが着いていてあげないと」


 また会えたところでスナ姉ならこう言うんだって分かってたんだ、本当は… だってスナ姉だもん?僕だってどんな子かくらいしっかり理解してるつもりだ。


 でも… 相思相愛であるはずなのに破局の道を行く僕らを見て黙ってられなくなったのか、ツチ姉が言ったんだ。


「あぁわかったおまえら!どーせ口で言っても意地の張り合いだ!ここは正々堂々恨みっこなしの一勝負だ!いいか?いいな!」


 するとツチ姉はおもむろにジャパリコインを取り出して表と裏を交互に見せた。


 コイントス…  裏か表かの2択、見事当てた方の勝ち。

 

 単純な賭けだ。


「クロは表でスナネコは裏だ?いいな?表が出たらおとなしく二人で帰れ!裏なら… オレと来い?いいな?じゃあいくぞ?」


 ピキーン


 有無を言わさず弾かれたコインは回転を繰り返し宙を舞い、またツチ姉の手の中へ落ちていく。


 パシッ


「じゃあ開くぞ?」


 戻ってきたコインを手の甲に乗せもう片方の手を被せている。


 そしてゆっくりと開かれたコインは…。


「表だ」 


 表、つまり僕の勝ちだ… でも違う、うまく誤魔化したつもりだろうけどダメだ。


「さぁ約束だ?クロと行け…」


「待ってよツチ姉?」


 僕はその結果が不服だったわけではない、気に入らないのは過程のほうだ。



 ツチ姉は…。



 イカサマをしてる。



「コイン見せてよ」


「始めに見せたろ?」


「それは違うコインだ」


「チッ…」


 しぶしぶ見せられたコインは両面が表の柄になっていた、いつすり替えたのかまではわからないし、何故そんな作りなのかもわからない。

 でもただ一つ言えることは、ツチ姉は初めからスナ姉を納得させるためにこんなイカサマを用意したってことだ。


 でもそれじゃ納得いくわけない。

 僕も、スナ姉も…。


「もう一回だ、今度はスナ姉にやってもらう… いいね?」


「ボクですか?」


「はぁ… わかった、コインはこれだ?間違いなく裏表がある、自分で見て確認しろ?無くすなよ?」

 

 受け取ったコイン、いつの物だろうか?かなり古いはずだけどそれはキラリと輝いている。


 スナ姉がこっそり教えてくれたのだけど、なんでもこれは父との思い出のコインらしい。


 なるほど、確かにこれは無くすわけにはいかない。


 手に取り確かに裏表があることを確認した僕は、それをスナ姉に渡し本当に最後の最後で恨みっこ無しの最後の勝負を挑む。


「じゃあ、いきますよ?」


「うん、これで決めよう?」



 ピキーンッ…!







 結果は言うまでもないね?そう、“裏”だったんだ。


 僕はスナ姉をかけた勝負に敗北して二人の背中を見送ると、また静かに泣いた。



 彼女との恋はその時終わりを告げたんだ。



 それから帰る気になれなくて一年くらいだろうか?僕はバギーと少しの荷物、それからギターを持ってしばらくゴコクを彷徨っていた、いろんなフレンズさんともあったしいろんな不思議なこともあった…。


 でもそれも虚しくて、ある日カコばあちゃんの家に戻って帰りたいと伝えるとすぐに船の手配をしてくれた、そうして僕は再びキョウシュウの地にまた足を踏み入れることになった。



 僕はその時17才、父が母と結婚した歳だ。

 



「おかえりクロ、何か食べるか?」 


「カレーがいいな?パパのカレー… しばらく食べてないから」


「よしきた、パパに任しとけ?」


 “パパに任しとけ”


 この言葉がどれほど頼もしく、力強いか思い出した気がした。


 傷付いた心に懐かしい味が染み渡り、僕は泣きながらカレーを食べた…。

 何回も何回もおかわりして食べたあともずっと泣いてた。



 その日はいろいろあって気付かなかったけど、翌朝ユキが家にいないことに気付いた。


 僕はてっきりおばちゃんのとこでお泊まりでもしてるんだと思ってたんだけど尋ねると衝撃的なことを聞かされた。


「ユキはどこ?」


「ユキ… ユキはなぁ?あぁユキ大丈夫かなぁ?」


 なにこれ?


 余程心配なのか父は頭を抱えて今にも泣き出しそうな声をだしていた、だから母が父の代わりに説明してくれたのだけど…。


「ユキねぇ?パークを出てお義父さん達のとこに住んでるの、学校に通ってる」


「え… パークを出て…ってナリユキじいちゃんとユキばあちゃんのとこ?えっと… が、学校!?」


 あのシラユキさんになにがあったの!?

 

 あまりにも理解が追い付かない、あのユキが?ずいぶん行動したじゃないか?なにがあったんだ本当に。

 

 聞くと。


 なんでも好きな男の子ができたらしく父の猛反対を押しきって追いかけていったらしい、ケンカして飛び出したっきり父とは顔を合わせていないそうだ。


 そりゃ愛娘が男の子なんか追いかけて知らんとこ行ったら不安にもなるだろう。


 それにしても恋をしたらわかるとは言ったけどさ?ユキ学校なんて平気なのかな?勉強追いつかないんじゃ?というか、人間がいっぱいいるんだよ?フレンズじゃなくて人間。


「だからパパったらユキの話ししたらこの調子で… 心配なのはママも一緒だよ?でも、なんだか上手くやってるみたいだし、きっとユキなら大丈夫!外も昔とはちがうから」


「んぁ~ん!?ユキぃ~!変なこと言われてないかなぁ?友達いるのかなぁ?勉強追い付いてるかなぁ?」


「はいはい、大丈夫ですよシロさん?ちゃんと信じてあげましょうね?」



 こいつぁおったまげ…。



 で、それからおよそ二年以内に僕は結婚に踏み込んだというわけだ。


 相手は誰かって?彼女に決まってるじゃないか?


 彼女は僕が辛い時いつもそばにいてくれた、本当に小さな赤ちゃんの時から僕を見ててくれた彼女さ。


 落ち着きがあって話し方も丁寧でたまに辛辣なことも言うけど基本僕には優しい、父や母とも旧知の仲でパークでは実質のナンバー2に当たる人物だ。


 博士が言ってたけど、脱ぐとすごいって。


 いやぁ本当にスゴかった///


 まぁそれはいいんだけど、彼女とは僕がキョウシュウに帰ってから急接近したのだ。


 いちいち僕をかまってくるんだ、どこに行くんだ?私が連れていく、一人で大丈夫なのか?とかいろいろ。


 だから「なんでそんなに世話焼くのさ?」って皮肉のつもりで言ったんだ。



 そしたら彼女言ったよ。



「私はずーっと昔からクロのことが好きなのですよ!そろそろ気付きやがるのです!」



 って開き直ったみたいに言われた。


 開いた口が塞がらなかったよ?まさか彼女が?僕を!?って… しかも親みたいなものだったし。


 僕も失恋して間もなかったからそういうの自重してて、でも18歳になったころにはだんだん僕も彼女を目で追うようになっていた。


 もう恋愛なんてできそうにないなぁ?って思ってたんだけど、あんな風に言われたらつい意識してしまって…。

 でもやっぱりいろいろあったから素直になれなくって、仲はいいけど付き合ってるのかどうなのか妙な関係が続いてた。

 

 だから!


 このままじゃダメだって思って今度は思い切って僕から伝えることにした。




…   




「懐かしいですね?昔はよく幼かったクロを連れて草花を監察したものです」 


「ねぇ、あの… これ覚えてる?」


 彼女を誘い、二人で森を歩いて思い出の花を一輪差し出した。


「ノコンギク… でしょう?忘れるはずがありません、その花言葉と一緒です」


「うん、だからその…」


 これより送るは愛の言葉、ノコンギクの花言葉を散りばめて…。


「僕に対して、ずっと忘れられない想いを持っててくれたんでしょ?小さい頃はいろんなこと教えてくれてずっと守ってくれたよね?

 だからもしその想いをまだ僕に抱いているなら、僕はそれに答えたいんだ?

 これからは僕が君を守るよ?でもわかんないことは教え合おう?二人で幸せに長生きしたいんだ?だから…」


「あの… クロ?それはそのつまり…?」



 そうだ、だから… だから聞いてほしい。



「僕と結婚しよう!“助手”!」



 これがついこの間のことだ、つまり僕が結婚するのは助手、ワシミミズクの助手だ。


 彼女は僕のプロポーズに対してオドオドしながらこう言ったのさ?


「クロ?嬉しいのです、そんなことを言われては私は涙が止まらないのです…

 でも私は、すでに結構な年数を生きているのですよ?フレンズなので見た目こそ若いですが、クロから見ればおばあちゃんみたいなものなのです… そんな、そんな私なんかと?それに寿命だって私が先に…」


「歳なんて… 関係ある?」


「本当に良いのですか?」


「助手がいいんだ…」


 ぎゅっと彼女を抱きしめると、始めは驚いていたもののだんだんとその腕を僕の背中に回し顔を埋めてきた、可愛い。


 そしてそんな彼女は照れ臭そうに僕の顔をチラチラと見ながらこんなお願いをしてきた。


「では、どうか私のことは“ミミ”と呼んでほしいのです?ダメ… ですか?」


 この時、僕はぶっちゃけくっそ可愛いと思った、つまりミミは実際可愛いし脱ぐとスゴいし可愛いので可愛い。


「じゃあ改めて言うよ、ミミ?僕と結婚しよう?」


「もちろんですクロ、ずっと私が隣にいてあげるのです、答えは“はい”ですよ?」



 とまぁ、僕はこうして結婚することになったわけだ。


 式にはナリユキじいちゃんとユキばあちゃん、ゴコクからカコばあちゃん、もちろんミライばあちゃんも。


 ユキだって帰ってくる、パパはむしろそっちにそわそわしているくらいだ。


 みんな来る、僕らを祝いにパークだけじゃない、外からも来てくれるんだ。




 あの二人は、来ないけどね?





 図書館にはたくさんのフレンズが集まり、ウェディングドレスを着たミミと正装の僕が祭壇の前で並んでいる、隣の妻になる彼女に言った。


「ねぇ?」


「はい?」


「綺麗だよミミ?」


「フフ… クロも素敵ですよ?」


 そんなことをこそこそ笑い合いながら話してた僕らは「病めるときも~」のやつを待っている。


 そしてその時がきた… 牧師はなぜかナカヤマのおじさんだ。


「え~病めるときも~?健やかなる時も~?愛しぃ合うことを~?誓いぃ~ますやんか?」←確定


 牧師他にいなかったのかよ!


 とは言わない、ナカヤマさんどうもありがとう、答えはもちろん決まってるよ?


「「誓います」」


 僕達は一度目を合わせると同時に答えた。


 迷いなんてない、僕らはちゃんと愛し合ってるから。




 もし来年辺り僕らの間に子供ができたら、いったいどんな子が産まれるのかな?なんにせよ可愛いに決まってるよね?パパとママから見れば初孫だ、じいちゃん達から見れば曾孫ってやつだよ?ユキは… おばさん?ユキおばちゃんか、あとで言ってやろう。


 僕はスナ姉のことを本気で愛してた、彼女意外ありえないって思ってた… でもいろいろあって今はこういう形に落ち着いてる、仕方なくってことではなくてね?ちゃんと僕はミミのことを愛してる。



 でも意識してないだけで、僕の心のどこかにはスナ姉がまだどこかにいる気がする、あれほど情熱を注いだ相手だもの。



 だからもしサンドスターがイタズラ好きなら、僕とミミの間に産まれた子供はほんのすこーしだけスナ姉にも似てたりして?





 

 さて… 親猫さん?僕はあなたみたいに立派になれたかな?僕にはホワイトライオンの特性はないから猫ではないけど、いつか僕も親になれるなら、その時はお手本にさせていただきます。




 ところで僕はもう大人になれたかな?




「なぁクロ?」


「なにパパ?」


「背、伸びたな?」



 僕は今、こんなに幸せだ。




 おわり

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