第30話 ショー(ガチバトル)

 今日は仮面フレンズ“再演”の日だ!


 なので今回は!みずべちほーのライブ会場から話を始めよう!


 いつものようにPPPファンが押し寄せてフレンズで溢れかえっている、そんな中!特別待遇を受け楽屋に入ることができる博士トロン戦士の俺達!

 本日は、PPPの皆さんににご迷惑お掛けしますと挨拶に参った次第である!


テーレレーテレー♪キュピン


「「PPPだぁー!」」


「あら!いらっしゃい小さなお客さん?今日は楽しんでいったらいいわ!」


「ブラックガオガオ軍団くるよ?」

「PPP大丈夫?」


「ありがとう、でも心配はいらないよ?」

「仮面フレンズもくるから大丈夫だぜ!」

「正義は勝ちますから!」

「ジャパリマン食べて落ち着こう?」


 子供たちはなかなか贅沢だな、小さな頃からアイドルと仲良しだなんて。


 たくさんのお姉ちゃんのなかにはあのPPPもいる。

 

 これは二人が大きくなった時自慢になるだろう… って誰に対する自慢ってわけでもないんだが。


 それにしても厄介なのは今回役者が不確定というところだ、博士たちがブラックガオガオ軍団の残党とかいい始めたから前回と違う人を使わなければならない、でもパークに演技派なんてそういないんだ。


 そうだ… つまり練習なんてなかった。


 今回俺はオールアドリブという苦行を強いられてしまったのである。


 そして今、無情にも本番の時間がやって来てしまった。


 仮面フレンズ 開演


「きゃー!?何ですかあなたたちは~!?」←迫真


「ん?私か?私はヘラジカだぁ!!!」


 師匠かい、人選ミスだよ博士…。


 ステージには悪そうな衣装を着たチーム森の王の面々がぞろぞろと上がってきた、そしてマネージャーのマーゲイを捕らえてステージ上はすぐに制圧されてしまった。


「ヘラジカ様、演技しましょう!」

「今わたくし達はブラックガオガオ軍団ですわ!」


「そうだった!ブラックガオガオ軍団だぁー!まとめてかかってくるがいい!」


 ただの戦闘狂じゃないか、演技してくれるんだろうな師匠?負けてよちゃんと?


 やがて師匠の怪演技?により話は進んでいく「私は誰にも止められんぞぉ!」とかいってるし、誰かが師匠にドーピングでもしたのかというくらいのテンションの上がりようだ、やがてハシビロちゃんが師匠に耳打ちをして話が動き始める。


「んぉお!そぉだぁ… お前らのうち誰かは人質だ!だが心配はいらん!ヒーローが助けにくるからな!」


「ヘラジカ様!私達は悪役ですわ!」

「安心させてはダメでござる!」


 なぜか人質取る側がいいやつという斬新極まりない人物設定だ。


「いけ!適当に連れてこい!」


 適当にとは言っているが今回人質は決まっているのだ、臨場感溢れるヒーロー体験をさせるためにこちらの方たちに来ていただきます、どーぞー?


「さぁクロちゃんユキちゃん!お姉様のとこにいらっしゃい!?大丈夫!悪いようにはしませんわ!ハァハァ」


「「えぇん!ママぁ~!怖いよぉ~!?」」


 クロとユキである。


 なんかもうちょいなりきった演技してほしいよ森の王チーム、シロサイさんが素を出しすぎだ、ただの変質者だよ今のあなたは。


「大丈夫だよ!ママも一緒に捕まるからね?泣かないで?」


 と俺の家族は残らず拐われていく、これは俺のやる気をだすためだと長は語る。


 例え演技でも守りきれと言うのだ、いいだろう!やってやるぞ!


「大変です!ステージが占拠されてしまいました!このままではみんなのジャパリマンがなくなってしまいます!」


「ジャパリマン狩っちゃうですよー!」

「「おー!」」


「食らい尽くすぞぉー!」

「「おー!」」


 敵側はどこまでアドリブなんだろうか?


 ごめん、前回と比べてかなりバカっぽいね今回のショーは… ホワイトタイガーさんもさすがにこれにはご立腹なのでは?


「クッ!ヘラジカのやつ!ブラックガオガオ軍団に寝返るとは!」


 大丈夫そうだった。


 そこで前回同様ヒーローを呼ぶために今回はしっかり“仮面フレンズ”と呼んでいただこう、もちろん三回だ! 


 俺はコールを待った…。


「助けて!仮面フレンズ!」


 一回…


「「助けて!仮面フレンズ!」」


 二回…


「「「助けて!仮面フレンズ!」」」


 三回だ!さぁ行くぞ!


 おおよそ5年半ぶりだろうか?だんだんと大きくなる助けを呼ぶ声を聞き、俺は心の中で「変身!」と唱え仮面を被った。


 お望みとあらば見せてやる!アドリブ仮面フレンズの真髄をな!


「ハッハッハッハッ…!」


 俺が高笑いをあげると師匠たちも「なんだ!?」「誰ですか!?」と慌てた様子を見せる。


「トウッ!」シュバッ!


 今回俺はバギーを使わず高いところから抱え込み宙返りでステージに降りた、スタッと見事なスーパーヒーロー着地をすると師匠は叫ぶのだ「誰だ貴様は!?」と。


「現れたか仮面のフレンズッ!いざ勝負だ!」


 セリフが違う!やはりアドリブ祭りかこのせっかち!しかし俺の心はめげない!


「格闘技世界チャンピオン(嘘) 仮面フレンズッ!ホワァイッ!アール!エッッッ!(ホワイトRX)」テーテテーッテレ♪


 イェイェイェ~イ♪ワァオ!というBGMが聞こえてきそうな感じでポーズもしっかりと決めた。


 登場成功だ、さて皆の反応はどうか?


「仮面フレンズだー!」

「やったー!助かったー!」

「悪者なんてやっつけてー!」


 好評だな、満足… 子供たちはどうか?


「「仮面フレンズ助けてぇ~!?」」ガチ泣き

「よしよし?大丈夫だよ二人とも?仮面フレンズ来てくれたからね?」


 マジ泣きしてる、かばんちゃんがチラッと目配せしてきた「頑張ってください!素敵です!今夜は抱いてください!///」ってそんな目だな?任せなさい!


 よし、俺が来たからには家族には指一本触れさせん。


「ブラックガオガオ軍団!罪無きフレンズを脅かすとは!許せんッ!」


「たった一人だなんてバカにされてるですぅ!」

「返り討ちにしちゃうよー!」

「サイサイサーイ!」

「その仮面をひっぺがしてやるでござるよ!」

「じー」


「お前たち!やってしまえ!だが私が戦えるように早めにやられてくれ!」


 師匠以外はちゃんと演技してるな、あとパンカメちゃんのセリフ普通に怖いんだけどくノ一は逆にひっぺがされることが多いと教えてほしいのかな?


 さておき。


 かくして、決戦の火蓋は切って落とされた!



 一人づつだ、一人づつ来た…。


 ただ様子がおかしいと俺は感じていた。


「ですぅ!」シュッ

「トウッ!」

 ドーンと豪快に舞台裏投げ飛ばし。


「サーイ!」ズドド

「セイッ!」

 足元がお留守、けたぐりで転ばし&退場。


「いっちょやろっかー!」ゴォー

「でぇやッ!」

 その勢いのまま巴投げで舞台裏へ。


「ふぇあぁぁぁ!?」テトテト

「フンッ!」

 つまみだし、ひっぺがさない。


 こんな感じでうまいこと皆いなしてやったが…。



一つ言わせて?



 この子達全員ガチだろ!?修行でお世話になってなかったら全員の対策とれなかったよ絶対!ちゃんと演技してよ!同時に俺のアドリブ力が恐ろしいわ!


「…」チャキ


 そこに現れた鋭い目付きの彼女… 皆とは圧力がまるで違う。


 まずいなハシビロちゃんか… 実は彼女はなかなか強い、あのどこから持ってきたか知らないガチの槍を使った連続攻撃は師匠の次に厄介だ、当たるわけにもいかないがかといって長引かせてはいけない。


 そして彼女だけは空気読んでくれると思ったのにやっぱり俺を殺る気らしい。


 なので一瞬で片を付けさせてもらう。


「スーパーフレンズパンチ!」ズドンッ!

「えっ!?」


 悪いがこちらもガチの技を使わせてもらったよハシビロちゃん?


 サンドスターで作られた巨大な光る右手はたちまちハシビロちゃんをステージ外へ弾き出した。


 この演技… いや最早演技とは思わないほうがいい、この人たちはブラックガオガオ軍団だ!

 

「追い詰めたぞ!ブラックガオガオ軍団!」


「全員をあっさりと倒すとは!ならばこい!私が相手だ!」


 つまり俺は師匠を倒さなくてはならない、一度もまともに勝ったこともない師匠にみんなの前でだ。


 しかし妻と子供を守るためだ、師匠と思わず悪の親玉と認識して戦うしかあるまい。


 勝つんだ、今日!ここで!





 戦闘は激化、ぶっちゃけ演技は最低だがアクションは前よりもずっと凄まじいものとなった。


 当然だろう、本当に戦ってるのだから。


 槍をかわし爪を振るい、体当たりをくらえばそれを堪え、もう一度踏み込んでは敵に向かい拳を放つ。


「甘い!その技は既に見切っている!」


「同じと思うなよ!」


 鋭く… 速く… 何発も!


 ダダダンッ!

 鋭い打撃音を鳴らし師匠はフラりと体勢をくずした。


「ぐぁっ!?速い!?」


 俺が出したこれは新技… 獅子奥義マッハライオンパンチ(仮名)。


 ブラック師匠の一撃からヒントをもらい以前のような大きな拳を叩きつけるのではなく、通常の拳と同サイズの光の拳を鋭く高速でお見舞いする技だ… セルリアンの石なら一撃で粉砕できる、命中精度も折り紙つきだ、そして今のはそれを三発打ち込んだ。

 

 でかいパンチがくると踏んだ師匠は隙間に入り込む小さな拳をかわすことはできなかったようだな、音速の拳を味わえ。




「ほう… なかなか使いこなすじゃないかシロ?」


「シロ?やつは客席だろ、何を言ってるブラックジャガー?」


「なにこちらの話だ、ホワイトタイガー?お前の見込んだ戦士はさすがだな」





 このあとはPPPが待っている、いっきに片をつけたいがしかし… 相変わらずこの人はタフだ、こっちのサンドスターがなくなってしまいそうだ。


「でぇぇやぁ!」ガツン!


「がぁっ!?」


 クラっときた!頭にいいのくらっちまった… ヘルメットかなければ気絶コースだった。


 あぁクソ!でも、やられた!頭グラグラする、立ってられない…!


「そんなものか!仮面フレンズよ!」


 やっぱりこの人もガチできたぞ、俺も本気でいったけどやはり追い詰められてしまった、このままでは… 勝てない!


 揺れた頭にのマーゲイさんの声が響く


「皆さん!仮面フレンズをもっと応援しましょう!」


 追加の応援だ。


 いやみんなの声援届いてるよちゃんと?すっげー励みになる… でも俺この人に勝ったこと一度もないんだよ、一度膝をついた今立ち上がれるかな?そして立ったところで戦えるかな?



 \がんばれ仮面フレンズ!/



 博士たちも無茶なことしてくれるよまったく、素直に姉さんたちに頼んでくれればまともに演技としてできたのに、師匠に頼んだばっかりにこの様だ、なんでわざわざこんな配役を?子供たちにダッセぇとこ見せらんないのにさ!


 \がんばれ仮面フレンズ!!!/


 わかってる!立ちゃいいんだろ?ヒーローは負けられないもんな!やれるだけは… やってやる!


 その時だ。


「仮面フレンズ負けちゃうの?」

「ヒーローなのに?」


 そんな子供たちの言葉に耳がピクリと反応した、少し胸が痛む。


「そんなことないよ?クロとユキが頑張って応援したらきっと大丈夫だよ?だからママと一緒に応援しよう?そしたらきっと… きっと悪者やっつけてくれるから!」


「うん!仮面フレンズ頑張ってー!」

「負けないでー!」


「「「仮面フレンズがんばれー!」」」


 妻と子供の声が背中を押してくれる。

 

 家族も無茶なこと言ってくれるな?


 でも!


 家族を人質にされてんだ!自分を超えるしかない!


「パークの平和を守るため!倒れるわけにはいかない!行くぞ!」


「それでいい!ならば勝ってみせろ!」


「望むところ!」


 俺はまたグッと立ち上がり構えをとった。

 

 といってもすでに体は限界… だがそれは師匠も同じなはず!だったらカウンターで最高のやつを叩き込むしかない。


「でぇぇやぁぁぁぁ!!!」


 きたぞ!これでもくr

「みゃーみゃみゃみゃみゃー!」ドゴーン


 後ろから飛び蹴りをする黄色い影が俺の横を過ぎていく。


 え!?なに!?


 何気ないみゃみゃみゃが、ヘラジカ師匠をを蹴り飛ばした… ってかそこの黄色いあなた、まさか!?


「わたしはサーバルキャットの仮面フレンズイエローだよ!よろしくね!」


 正体明かすな!?


「さぁホワイト、とどめの合体技です」

「敵の大将を倒すのです」

「今日はわたしも合体するよ!」


 長仮面!あなた達まで!でも結局これなのか… てかイエロー氏変な言い方しないで?俺が合体するのはry


 ま、まあいいさ!


「増援か!まとめてかかってくるがいい!」フラフラ←満身創痍


 ごめん師匠… でも正義は時に綺麗事ではすまないのだ。


 最強のフレンズダブルキック!

 


 ドゴォッ!!!



 それをおみまいすると師匠は起き上がらず、ステージはしんと静まり返ったがその時マーゲイさんが叫んだ…。


「か… 勝った!?皆さん!仮面フレンズが悪者やっつけてくれました!みんなでお礼を言いましょう!せーっの!」


\ありがとう仮面フレンズー!/


 俺はビシッとポーズを決め倒れた師匠を担いだ、まずはこの人の介抱からだな。


 だが歩き始めた時後ろから声が…。


「「仮面フレンズありがとう!」」


 クロ… ユキ… なんか釈然としないけどパパ勝ったよ!


 子供たちはぜーんぜんパパだとわかってないみたいで寂しいが、こんなに楽しそうに目をキラキラさせてるのだ、やった甲斐がある。


 そしてそこに仮面フレンズを待ち望んだもう一人のファンがステージ上に姿を現した。


「仮面フレンズ!とうとう会えたな!まさかヘラジカを倒すとは、天晴れとしか言いようがない!」


 ホワイトタイガーさん、いや多分負けてましたよ一人だと。


「あ、あの!実は我は大ファンなんだ!///もし会えたらずっと言いたいことがあって」


 なんか… 告白とかじゃかないよな?


 やべぇよ… やべ… か、かばんちゃん睨まないで!俺悪くないよ!


 ホワイトタイガーさんは顔をグッと上げ意を決したように俺に尋ねる。


「どうすればみんなに愛されるヒーローになれるのか教えてくれないか!?」


 ははーん、なるほどねぇ?ホワイトタイガーさん可愛いところあるねぇ?

 こんな性格だからやはり寂しかったのかもしれないな?ならばヒーローからの助言を聞きなさい。


「雪山の猛将ホワイトタイガー… いつも厳しい極寒の中セルリアンからちほーを守ってくれてありがとう」


「それが我の役目… 仕事だから… 」 


「泣き言一つ言わずパークを守る君を誰が嫌ったりするだろうか?誰がなんと言おうと君はすでにヒーローだ、しかし一言添えるとしたらそれは…」


「…それは?」


「“たまにはほどほどに休もう” では失礼、森の王の洗脳を解かなくてはならないんだ」←師匠のフォローを忘れない弟子の鏡


 どんな顔してるか背を向けているのでわからないが、きっとその豊満な胸にも響いたことだろう。


 さて、疲れた疲れた… さっさとパパに戻って子供と妻の元へ戻ろっと。


「「パパー?」」デデデドドン


 シーン… 


 なんか静かですねぇ?ギャラルホルンが云々かんぬんのなんちゃらかんちゃらですけどねー!←錯乱


「か、仮面フレンズ!ホワァァァイッ!」←焦り


「幼き子達よ、なぜそう思うんだ?」


「でもパパの尻尾だもん!」

「耳もパパだもん!」


 なんて観察力… してやがる!


「「こっちはサーバルちゃん!」」


「仮面フレンズイエローだよ!」


「「サーバルちゃんじゃん!」」


 ざわざわと客席もざわめき妻も必死に誤魔化すが、力及ばず俺の体をよじ登り仮面を奪いとろうとする子供たち。


「「パパでしょー!」」グイグイ


「や、やめて子供たち!顔を見られると死ななくてならない掟なんだ!頼む!」


 が、バキャっと音をたてると仮面が割れて俺の甘いマスクが… しまった!師匠の攻撃で仮面が壊れていたのか!?


「「やっぱりパパだ!」」


 同時に客席のみなさんも。


 \シロじゃん!/


「やべ!えーっと… PPPライブ!この後すぐ!アデュー!」スタコラサッサ


 ヒーローは、師匠と子供たちを連れてさっさと楽屋へ逃げたとさ。

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