第8話 おおきなまえあし

 猫の子超

 テレレッテッテ テッテッテレ♪ コーフンスッゾウチュウヘゴー♪


 前回までのあらすじ(嘘)



 ヘラジカに超フレンズ玉を押し返され死んだと思われたシロだったが、急激なパワーアップとともにその場に復活した。


 そんなシロの反撃にヘラジカは若干や動揺を隠しきれない、そして二人の熱い攻防は周囲をも熱くさせていった。


「いったい何が起きてるのだ… この目で見てもまだシロさんが行動したという実感が沸かないのだ!」ライバル感


 ヘラジカ勢シロサイがその姿に圧倒されつつ反撃にでるが。


「サイサイサーイ!往生際が悪いですわ!あなたは既に敗北してますのよシロ!」噛ませ感


 スッ←手を添えるだけで回避

 シロサイは謎に吹き飛んでいった。

 


「パパ急に強くなったねー?」

「パパ急にすごくなったねー?」

「「なんでー?どーしてー?」」


「もしかしたらぁ~!シロにとーっても素晴らしいことが起きてるかも知れませんねぇ~!ねぇ博士ぇ?」ネットリ裏声 ※助手です


「あ、あれはまさか!?“けも勝手の極意”…!?」※博士です


「えぇ~!?なにそれなにそれ~?たのしそぉー!」


 どよめく客席… そしてとうとうシロ渾身の一撃がヘラジカに届こうとしていた。


「デェヤァァァァアッ!!!」


 ズドォン!


「んぉお!?凄い熱量だなぁ… だが、それがお前の限界だシロ」


 しかしそれをあっさり受け止めるヘラジカ、シロは力尽きたように倒れた。


 そこに現れたフェネックはなにやら企みを感じる笑みで指先にサンドスターを集中し、彼に言った。


「やー思い出すねぇー?フェネック星でのことを…」キュイーン




 


「「パパ起きてー!」」グイグイー


「あいたたたた!?はーい!今起きます!」


 という夢をみた。


 なんだ夢かぁ… せっかく神でも習得困難な極意を身に付ける兆しがあったと思ったのに、残念…。


 おはようございます、シロです。


 あれから数日も経たないうちにアライさん達は次のちほーへ旅立った。


「アライさんの力が必要な時はいつでも呼んでほしいのだ!」


 力強い限りです、とても頼りになります。


 俺なんかが師匠でいいんだろうか?あんまり立派なので少し自分が情けない気にもなりますが、やはり彼女のような子が自分の弟子というのは嬉しいことです。


 ちなみに“師匠”といえば、今日は騒々しいお客さんがいらしているようだ…。


 凛々しき顔つき、流れる美しき黒髪、その頭には大きなヘラ状の角、さらにはその角を模した槍、強そうな腕、その腕を組み仁王立ちするその勇ましき姿の彼女こそが!


「たのもぉー!!!ヘラジカだぁッ!!!」


 し、師匠?いったいなぜ?


 確かにしばらく育児に追われて稽古に付き合えていなかったが、まさかとうとう痺れを切らして俺を直々にシゴキにきたのか!?

 

 えぇどうしよう… たのもー!とか言ってるし。


「あ!ししょーだ!」

「ししょー!」


「んぉお!?クロにユキ!少しは強くなったか?」


「ユキもう強いもん!」

「ぼくもぼくも!」


「よかろう!二人同時にかかってるくるがいい!」抱きぃグルングルン


「「わぁい!キャハハハ!」」


 子供達にとっては歩く公園の遊具ことヘラジカ師匠、今日はどう言ったご用件でいらしたのでしょうか?仕方ないので尋ねてみたところ当たり前のようにこう言われた。


「現れたなシロ!いざ勝負だ!」


「これから朝食なんだ師匠、後でいいかな?そうだ、一緒にどう?納豆もあるよ?」華麗なスルー


「なに?すまないな、是非頂こう!」


「なっとーいや!」

「くさいもん!」


「こらお前達!好き嫌いはダメだ!なんでもかんでも食べないと強くなれないぞ!」


「でもなっとーくさいんだもん!」

「ネバネバ嫌い!」


「はいはい、納豆は師匠しか食べないから安心しなさい?二人も大人になったらきっと食べれるようになるよ」


 二人にとって師匠は遠縁の親戚というか、ノリの暑苦しいお婆ちゃんとまで言うとさすがに失礼だが。


 まぁ言うなれば、快活で熱血なお姉ちゃんという感じだろう。


 子供達が師匠たちと本格的に絡み始めたのはまだ二人が喋り始めの頃だった。





「クロ~ユキ~?師匠だよー?」


「ししょ?」

「ひしょ?」


「クロにユキ!私はヘラジカだぁッ!!!」


「「えぇ~ん!?」」


 師匠は、例え子供だろうが態度を変えることはなかった、雄々しき姿正に森の王。


 子供達は気圧されて泣いてしまった。


「あらら… 師匠~!声が大きすぎるよ?ビックリしちゃったんだよ!」


「ん?そうか… すまなかった!しかしこれで私のことは覚えただろう!」


「そうだね、ほらよしよし… 怖くないよ?師匠も抱っこしてあげてよ?」


「よしわかった!おぉ…可愛いじゃないかぁ!よしよーし」


 師匠は意外に子供をあやすのが上手かった、ユキが知らない人に抱かれて泣かないのはなかなかに珍しいことである。


「ユキぃ?大きくなったら私の所へこい、一緒にライオンを倒そう…」


「らいおおばちゃ?」


「そぉだぁ…」ネットリ


「ちょっと師匠?やめてよ戦いに巻き込むのは、二人には伸び伸び育ってもらって何をやりたいかは自分で決めさせるんだ… そしてそれを応援するのが親の役目だと思ってる」


「なんだシロ、父親らしいことを言うようになったじゃないか?」


「まだまだ、父親のほうは見習いだよ」


 クロの耳遊びにも動じない師匠はすぐに子供達とも打ち解けた、さすがは師匠… 指揮能力は低いのに人望は厚い。


 そしてこの日はそんな師匠の人望の元に集まった皆さんにも子供を抱っこしてもらいました。


「じー…」


「「ふぇ…」」


「あ、ごめんね!私にはやっぱり無理だよ?怖がらせちゃう…」


「前髪を上げてみたらどうですか?この髪留めで… 完成です!」


 妻の即興ヘアメイクによりハシビロちゃんはその美しいアイラインを顕に… すると、子供達は一瞬静かになりすぐに安心したのか笑い始めた。


「キャッキャッ」


「笑ってくれた… ありがとうかばん!」


 続いてシロサイさんのターン、彼女は意外でもないが子供好きだったらしく、恍惚とした表情で二人を愛でた。


「なんて可愛いらしいんですの!?クロちゃんユキちゃん!お姉さまが可愛がってあげますからねぇ!」


「ねえちゃま?」

「おねちゃま?」


「はぁぅあ!?///」


 落ちたな… この一瞬でシロサイお姉さまを落とすとはさすがだ子供達よ。

 そして残りの三人も女子高生みたいなノリで子供達を可愛がってくれた。


 まずオオアルマジロお姉さん。


「へぇ~?この子達がシロとかばんの子供なのかー?ほれクロ~!たかいたかーい!」


「ウェヒヒ!」


「あ!この子はシロ似だねー!」


 待て、どこで判断した?その子は妻に似たんだ。

 そしてお次はパンカメ忍者。


「ユキちゃ~ん?見るでござる!いないいなーい…」←本当に見えなくなる


「!?」


「バァでござるぅ!」←出現


「…ぇぁ?」


「あれぇ… 反応が微妙でござるな?」


 ユキの情報処理が追い付いてないんだろう「いないいなーい」ってガチで消えたもんだから興味深そうにジーっと眺めてる、本気のビックリ顔だ。


 そしてアルマジロちゃんはそのままクロを連れてヤマアラシちゃんの元へ。


「ほらほらーヤマアラシお姉ちゃんのおっぱい触ってもいいからねー!」


「ちょっ!?やめるですぅ!」


「おみみ!おみみ!」ジタバタ


「へぇー?耳がいいんだ~?やっぱりかばん似だねー!」 


 待て、どこで判断した?だがその通りだ。


「ふぇぁあ!?危ないでござるよユキちゃん!尻尾が気になるかもしれないけどトゲに刺さるでござるよ!」


「キャッキャッ!」


「あ!危ないですぅ!」


 そんなわちゃわちゃしたチーム森の王だったが、今回図書館に出向いたのは師匠ただ一人。


 子供達も師匠の力強い腕に掴まりグルグル回るのが楽しそうで何よりだが「たのもー!」とまで言ってきたのだ、きっと子供の顔を見に来ただけではあるまい。


 というか既に戦いを申し込まれてしまった、スルーしたい。



「ヘラジカさん、おかわりはいりますか?」


「もらおう!」


「ヘラジカ、少しは遠慮するのです」

「それで5杯目なのです、我々の分がなくなるのです」


「あ、大丈夫ですよ?たくさん炊いてありますから!」


「じゃあわたしもおかわりー!」

「ぼくもー!」

「ユキもー!」


「フッ… そぉだ二人とも?たくさん食べて強くなれ?そして私を倒せる戦士になれ!」


「だから~… やめてよ戦士にするの?」


 そしてクロにユキよ、ノリでおかわりするのやめなさい?絶対残すだろ、パパ知ってるんですからね?一口で「もういらない…」って言うの分かってるんだからね?


 いいですかぁ~?残すのは食材への冒涜となりそれは…。クドクド


 そんな賑やかな朝食の後、俺は師匠に何用なのかやっと聞き出すことに成功した。


「決まっている… いざ勝負だ!」


 それはさっき聞いたよ…。


「その理由を聞いたんだけど」


 というのも師匠はどうやら例の件を姉さんに聞いたらしい。


「聞いたぞシロ、ホワイトタイガーを返り討ちにしたそうだな?」


 げげげ… きっと怒ってるんだな師匠は。


 フレンズを一方的に叩きのめすための力を授ける為に弟子にしたわけではないとか思ったのかも。

 

 以上の証拠から師匠が何をしにきたのか俺にはお見通しだ。


 ヤg…×

 師匠は説き伏せるような説法は得意ではないので腕力で善悪を教えてくる、きっとオシオキタイムが俺を待ち受けているんだろう。


 やだな~…。


「師匠、あれは彼女が家族をバカにしたからついカッとなって…」


「光り輝くでかい拳で殴り飛ばしたんだろう?私はそんなもの知らん!頼む!私のことも殴り飛ばしてくれ!」


 あぁ違ったわ、ただ戦いたいだけだこれ。


 しかしだ…。


 いくら今回が模擬戦のようなものでも子供達にまた俺が暴力を振るうところを見せるのは教育によくない、基本的に「みんな友達!ケンカ良くない!」と教えているので、その俺が訓練と言って戦うのは矛盾というやつだ。


 俺が師匠のとこになかなか顔を出せない理由の1つだ、子供達の前で俺が牙を剥くところを見せたくない、そういう力の見せ合いからケンカとかイジメとかが始まるんだ。

 

 それに子供達が誰かに怪我させてみろ、その時はお互いの心に傷を残すだろう。


 その傷の深さは俺がよく知っている、決して子供達を同じ目に逢わせてはいけない。


 二人にホワイトライオンの力が無くてもそれは同じことだ、戦闘狂だけど師匠なら分かってくれるはず。

 

 俺はそういった理由で戦う訳にはいかないと丁寧に伝えた、師匠は難しい顔をしていたが、子供を引き合いに出されてはなにも言えなくなってしまったのだろう「むぅ…」と顔をしかめた。


「ごめんね師匠、稽古をつけてもらうのが嫌なわけではないんだ…」


「シロ、子供を盾にして言い訳するのは関心しないな」


「そんな言い方しないでよ…」


 確かに俺は子供を前に出して無理だと突っぱねてるのかもしれない、でもそれはそういう理由だからだ。


 人に殴りかかるところなど三才の子供に見せられない、でもそこまで言われたら俺もたまには思いきり体を動かしたいし…。





「という訳なんだけど?かばんちゃん… しばらく子供達が森に入らないように見張っててくれない?サーバルちゃんも、遊ぶときはなるべくここを離れないように」


「どうしてもやらなくてはダメなんですか?」


「怪我しないでね?」


「俺がいつも受けていた稽古を森でやるだけだよ?大丈夫、俺も師匠も引き際は分かってるから」


 俺は師匠に「この一回だけ」という条件で、手合わせすることを決めた。


 森の奥、あまり人も来ないようなとこなら誰かに怪我をさせることもないだろう。


「どちらが参ったというか…」

「どちらが背中を地面につけるかだ!」


「師匠、これで俺が勝ったらどうする?」


「言うまでもない、免許皆伝だ!もう教えることはなにもない!」


「わかった、それじゃ…」


「「いざ!勝負だッ!」」




 俺は… 昔は師匠からもらった槍を使って戦っていた。

 



 当時はそんなことになると知らなかったが、セルリアンに直接触れるとサンドスターロウを吸収する危険性があるためその戦い方は正解だったんだろう、それにリーチが長いのは戦いにおいて良いアドバンテージだった、槍術なんて習ったこともないのでバカにみたいに力任せに振り回していただけだが。


 今は違う…。


 ホワイトライオンらしくこの爪と牙、そして身のこなしがそのまま武器となる、時にはヒトらしい体術もだ。


 師匠は槍が砕けた時に言った。


 「お前の力が槍を超えた」と…。


 それはたとえ片腕になってもその身が朽ちぬ限り家族を守れとそういう意味なんだと感じた。


 流派… というのがあるとしたら、俺はあの時師匠の流派を卒業したんだと思う。


 しかし、信念はヘラジカ師匠!あなたから引き継いでいるつもりだ!


「どうしたシロ!例の技は使わないのか!」


「“技”に頼るな… これも師匠から習ったんだ、タイミングを図ってるのさ!」


「面白い!いつ出てくるか楽しみだ!」


 ガキィン!


 ある夜、サンドスターを操るうちに気付いたことがある。


 ボール意外には何が作れる?大きさは?形は?固さは?重さは?動きのあるものは作れるのか?


 例えば服は念じればオートで白いコートになるが腕だって作れたんだ、完全にそこにけものプラズムを構成するのではく、未完成体のものなら理論上どんなものでもつくれるんじゃないか?


 だから初めはボールから四角、三角、星形、漠然と形を変えて作っていた。


 次に棒を作った、ライトセイバーみたいになるかと思ってね?


 初めは細長い風船みたいでなにかに当たると飛散していたが、だんだん重さや固さのバランスを操れるようになっていった。


 ただし形を保ち続けるのは非常に体力を使った、常にサンドスターを供給しなくてはならないのだ。


 一瞬でちょうど良い物を出して使い、すぐに体内に戻す。

 

 この修行が必要だった、そしてその修行で掌に光の壁を作りガードすることができるようになった、固さはホワイトタイガー戦で実証済だ。


 またある日気付いた。


 何も“物”である必要はないのではないか?


 例えば伸びる腕とかならパンチの感覚で出してすぐ戻せる、棒などの道具になると持って使うという動作が必ずついてくる。


 伸びる腕… それでは伸ばすのにまた容量を使う、なので一回で済む強力な物はどうだ?


 自由に動く巨大な手は作れないのか?


 例えばロケットパンチみたいな…。





ガギィ…!!!


「くぅ…!」


「押し合いで私に勝てるか!」


「いいや… でもこれを待ってたんだ!」


 俺は右手にサンドスターを手中させて力一杯拳を突き出した


「ぶっ飛べぇッ!!!」


 瞬間サンドスターで形作られた大きな拳が師匠を何メートルも向こうに吹っ飛ばした


スドォンッ!!!


「何ッ!?ぐあっ!?」ドンッ


 師匠は木に背中を打ち付けようやくその勢いを止めた…


 突きだされた俺の右腕の先にぼうっと浮かぶフレンズ一人分はあろう光輝く大きな拳、役目を終えるとスゥッと右手に吸い込まれていく。


「見えた師匠?」


「効いたぞ…!あれだけでかければ嫌でも視界に入る… しかしスゴい技だなぁ!」ゾクゾク


 サンドスターコントロールで生み出した大きな右手、大きさが大きさなだけに一瞬しか出せない上に飛散するのも早いのですぐ体に戻さないとならない、そして自由に操るには右手から出さないとならない。

 昔のクセで左手から出していた時は宙に浮くこともないただの手の形のオブジェだったが…。


 新しく作られたこの右腕ならできる!原理はよくわからん!


「名付けて“獅子王の前足”… なんてどうかな?」ドヤァ←中二病


「名前などいい!面白くなってきたぞ…! さぁ続きだ!こい!」



 あれ?まだやるの…?




 油断した、その後ノッてきた本気師匠を相手にやがて俺はガス欠に。


 また負けかぁ、運動不足かなぁ?いや歳かなぁ…。






 そんな時だ、予想もしていなかったことが起きたのは。

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