第4話 ゆうわく
「それで話って?」
「シロ、お前は子供もできてすっかり立派になったな」
「自分で言うとあれだけどそうだね、しっかりするように努めてるよ」
そう、俺ももう子供ではない、それどころか子の親だ。
姉さんはそんな俺を見て妙な単語を言い放ったのだ。
「“百獣の王会議”… 参加してみないか?」
「なにそれ?」
百獣の王会議とは?
パークにいる大型猫科フレンズ数人が集まった組織?である。
その強さはどのフレンズも強クラスで、その強い力に責任を持ち各ちほーを守っているという、まるでジャパニーズヤクザのようだがショバ代はとらないのでご心配なく。
「みんなで相談した結果、私はへいげんちほーを統治するためにこの城を任されたんだよ?」
「へぇ~そういえば誰かに任された風なこと言ってたもんね?でそれってなにするの?」
「年に数回集まってあーだこーだって話すのさ?そんな堅苦しいもんじゃないよ?」
それで俺がホワイトライオン席に着けと?荷が重いですよぉ?オーダーキツいですよ?
子供の世話もせなあかんしぃ?かばんちゃんとベタベタせなあかんしぃ?いろいろ忙しいんだけどなぁ?しかも姉さんに仕事を任せるフレンズって何者だよ?それ絶対みんな姉さん並みに強くてさらに上に越えられない壁があってめちゃ強いフレンズがボスだよ。
「俺は半端者だけど参加していいのかな?それに姉さんほどは強くないし、図書館からもあんまり離れられないし…」
「あぁ、その辺はOKだよ!パークでお前に勝てるやつはそんなにいないから!」
「そう?たくさんいる気がするんだけど」
じゃあなんだ?姉さん以外はそう強くもないのかな?百獣の王会議って結局のところなんなんだ?
「じゃあ姉さんにここを任せたのって誰なの?」
「みんなが推薦してきたんだよ~?柄じゃないんだけど~って断ったのにさぁ?」
「待って、その集まりで一番強いの誰?」
「私だね~」
あなたがボスか!なんかだんだん適当な集まりに感じてきた、ガキ大将を筆頭にみんなを集めてる的な。
「それでね?ホワイトライオンはずーっと欠番なんだ、どう?みんなシロなら納得すると思うけど?」
「ん~… 帰って相談してからでもいい?」
「そうだねー?それがいいよ!家族とよく話しておいで!」
そこで子供達を呼び戻し約束どおり牧場へ向かうことにした、姉さんは「もう行ってしまうのかぁ…」と寂しそうにしていたが、子供たちとの約束だから早く牧場行かないと。
それに早めにおやつを済まさないと「晩御飯前にお菓子食べさせましたね?」って嫁さんに怒られちゃうよ。
「二人にワタアメを作る約束してるから行くよ、姉さんもたまに遊びに来てね?二人も喜ぶから」
「わかったよ、またなクロ~!ユキ~!おばちゃんのこと忘れるなよ~!?」ギュウ~
「おばちゃん大好きー!」
「ユキも大好きー!」
美しき、家族の輪。
百獣の王会議は三日後だそうで、参加するなら朝一番に城まで来るようにとのことだ、帰ってかばんちゃんに相談してみないと、料理のお仕事もあるし。
…
一方ジャパリ図書館では。
「どうしますかねぇ博士?」ムシャムシャ
「どうもなにも、かばんにハッキリ言うとショックでどうなるかわかりません… やんわりとこの危機的状況を認知させるのです」ムシャムシャ
「そうですね、我々賢いので少し様子をみることも学びました… 小出しにしていきましょう」ペロリ
シュークリームを華麗に食べ終えた長は早速かばんの元に向かった。
当のかばんと言えば久々に親友サーバルと紅茶など飲みながら楽しく談笑しているところである、しっかり者の母となった彼女だがたまには何もせずにリラックスしたいこともあるのだろう、誰でも考えすぎては疲れてしまう。
「それでね?クロちゃんは肩車してあげるととっても嬉しそうにして耳をずっと触ってるんだー!」
「ふふ、ごめんね?あんまりされるの嫌じゃない?」
「ちょっとくすぐったいだけだよ?それにやっぱりかばんちゃんにそっくりだから、撫でるのも上手だよ!わたしも気持ちよくなっちゃうよ!」←性的ではなく
「そうなんだ~よかった~!ふふふ」
話の内容はもっぱら子供のことだが、最近の二人と言えば子供の世話ばかりなのでそうなるのも当然だろう。
そんな楽しいティータイムに長の二人は音もなく降り立った。
「かばん、おやつをいただいたのです」
「大変美味でした、ごちそうさまなのです」
「あ、はい!どういたしまして!」
「それでその~… どうですか?」
「え?」
「最近、シロとは」
「どうって… 変わりないですよ?いつも通り仲良しです」
なるほど… と長は思った。
シロのやつうまいこと真実を隠しやがるのです!
嫁との仲も大事に愛人ともよろしくやるなんて器用なやつなのです!
もちろんそんな事実はない、だが今賢い長は暴走中である。
「そうですか?なんていうかー… 最近静かですよねぇ?助手?」
「そうですね、静寂の夜なのです」
「あ!そういえばそうだね!ギシギシも聞こえないね!」
ナイスなのですよサーバル、言いにくいことをずばっと言える人材なのです。
と二人は内心ニヤリと笑った、これで確実に勘のいいかばんは「夜がご無沙汰」だろう?と言われているのに気付く、頬を赤らめているのがその証拠である。
こうしてシロへの注意を促すのである。
「あの… やっぱり子供もこれからいろんなことを覚えるので、それに朝も辛くなるし、しばらく我慢するって彼が…」
「へぇ~!二人とも偉いね!」
「殊勝な心掛けですが、意外ですねぇ?」「そうですね?あのシロが無防備なおまえを前にそこまで禁欲を貫けるものなのですか?」
「ゴコクでやってた修行をまた始めたんです、それで夜は抑え込んでるみたいです」
心の声が手に取るようにわかるのです…。
と長はまたニヤリと笑う、今のかばんは子供や自分の身を案じてそういうことを我慢する素敵な旦那さんだと喜んでいる心境だろう。
だが長には分かるのだ、さらに内に秘める思いが。
「しかしあの性欲の塊がですか?」
「怪しいですね?本当になにもされないのですか?」
「な、なにもされませんよ!ちゃんと頑張ってくれてます!」
「「それで良いのですか?」」
「え…? えっと…」
「なになに?かばんちゃん?どういうことなの?」
その言葉にかばんは思わず目を逸らした、それで良いのだ、良いはずなのに… かばんの中にモヤモヤと燻るものがあったのだ。
「朝が辛いだとか、子供の教育に悪いだとか、なにやら真面目そうなことを言っていますが」
「本当は寂しいのではないですか?」
「そ、そんなこと…///」
訳 “奥さん溜まってますね?”
反応を見るに、これは当たりですね… と長たちは心でガッツポーズをした。
所謂すれ違い、かばんにとっては頑張る旦那さんだ、しかしかばんとて人間である。
性というものを夫に体で学ばされ、そして毎晩愛する夫に抱かれるのはあーだこーだ言いつつもやぶさかではなかったのだ。
しかしシロが頑張るほどかばんの寂しい夜は続いた。
かといって自分から誘うなんてことをせっかく我慢してくれている夫にしてしまっては意味がないし幻滅されるかもしれない「君結構変態だね」なんて言われた日には立ち直れないかもしれない。
「修行だかなんだか知りませんが、変ですねぇ?もうめっきりご無沙汰のようですが?」
「夫婦としてそれは少し問題なのでは?」
「あの!博士さん達がほどほどにしろと言うから彼も我慢してるんですよ!」
「我々は“ほどほど”にと言ったのです」
「なにもゼロにしろとまでは言わないのです」
「あ…」
「かばんちゃん、もしかして寂しいの?
「えっと…」
図星だった、率直に溜まってるとまでは言わない(言いたくない)、それに彼が家族のことを考えてくれるのは嬉しい、だが彼女も一人の女性。
誰にも邪魔されず愛する夫を独り占めしたいこともあるのだ。
「それにやめろと言われてスパッとやめれる男なのですかアイツは?」
「変ですねぇ?愛する妻がそれを求めているのいうのに」
長の言葉に、かばんはだんだん不安になってきた。
ぶっちゃけ寂しい、だがもちろんそれを口にするわけにはいかない、そんなことを言っては今の彼には迷惑がかかる。
でも気付いてほしいとも思っている。
もしも彼が悶々とした毎日を過ごしているなら自分が全て受け入れるので任せておけとそれくらいの気持ちではある。
でもこない…。
お風呂を覗いたり着替えを手伝おうとしたりしてきた彼がめっきりこない、前は好き(隙)あらば後ろから胸を鷲掴みしてきたものだ。
かばんは思った…。
もう僕じゃダメなんですか…?
「シロさん…」シュン
「「…」」ニヤリ
長!作戦成功!
「かばん!ならば試してみるのです!」
「直接抱いてくれと言う必要はありません!さりげなく誘うのです!」
「さりげなく… ですか?」
「そうです!」
「チラリズムですよ!」
「「チラリズム?」」
チラリズムとは、最早説明するまでもないだろう… チラリズムだ。
長は浮気の確認の為にかばんにシロを誘惑させることにした、その晩事が始まれば少なくとも飽きたわけではない。
しかしそれでも頑なに夜を断るならもう確定と言っていいだろう… お前の貧相な胸など飽きたのだとそういう意味で考えているのである。←超絶失礼。
「四人で考えるのです」
「さりげなくシロを誘惑する方法を」
「さりげなく?難しいよ!」
「誘惑と言われても… 例えばどうすれば?肩を揉んだりすればいいんでしょうか?」
「それではダメなのです」
「話になりません」
四人は頭を悩ませた… 例として、逆に凝った振りをして肩を揉ませる、わざと浴室のドアを開けたまま着替えをするなどの案が出た。
「あ!わかったよ!わざとお風呂にタオルを忘れてシロちゃんに手渡してもらったりすればいいんだね!」
「やりますね、そういうことです」
「冴えてますねサーバル」
「ふっふーん!」
背中を流してあげる。
急にバスタオル一枚で浴室を飛び出し「下着忘れちゃった~♪」テヘペロ とやる。
二人の時「今日は暑いですね~?」とわざと胸元を開けつつ髪をふぁさーっとやり女の匂いを振り撒く。
などの案があげられた。
「や、やってみます!」
「かばんちゃん!頑張ってね!」
かばんは思った…。
よーし!今夜は元気のでる晩御飯作っちゃえ!えへへ///←洗脳完了
即ち!かばん!暴走!!!
「かかりましたね?」ニヤリ
「えぇ、かかりました…」ニヤリ
一家離散の危機ではあるが長は数年ぶりにシロを罠にかけることに若干や快感を覚えていたのも事実だった。
…
「ただいまー」
「「ただいま~!」」
「おかえりなさい、二人とも楽しかった?」
「「楽しかったー!」」
「ごめんね?少し遅くなっちゃった、子供たち駄々こねちゃって…」
「大丈夫ですよ?さっき用意できたばかりです」
「そっか、よかった!」
いや、良くないな。
顔を見れば分かる、彼女なにかソワソワしている…。
やっぱり一緒に行くべきだったかな?自ら残ると言うから快く了承したが、あれは建前で「いいからおいで!」キラッ☆ と手を引いてほしかったのかもしれない、妻は乙女なので!失敗したなぁ… 今度二人きりでデートしよう、ロッジまで。
夕食はなぜだか実に豪勢だった、特に祝い事と言うわけではないがなにか元気のでそうな料理ばかりで子供たちもモリモリ食べていた、今日はお昼寝しないでずっと遊んでたから、きっとすぐに寝てしまうだろう。
でもどうしたのかな?なにかいいことあった?ソワソワしてるし、例えば三人目の妊娠が発覚したとか… だとしたらもうざっと一ヶ月半はご無沙汰なのにこのまま10ヶ月近く妻と絡み合えなのかと思うと実に悔しい、我慢なんてするもんじゃなかった!クソ!
でも本当に妊娠ならおめでとうだ!でかしたぞハニー!
…
その日の子供たちのお風呂は妻の担当だった、俺は退屈凌ぎに“シロくん特製レシピ集”を読み返して修正点などないか探していると妻にしては珍しくこんなことを言ってきた。
浴室のドアがすこーしだけ開き妻がひょこっと顔を出し言った。
「あ、あのシロさん!」
「ん?どうしかした?」
「タオル忘れちゃって!も、持ってきてくれませんか?///」
いいとも任せなさい、お支払は覗きで勘弁してあげよう。
俺はタオルを取ると意気揚々に少しだけ開く浴室のドアまで向かった
「はい、どーぞ?」←ポーカーフェイス
「あ、ありがとうございます///」
よし!見え…!
バタン!
なかった~!クソ!でもちらっとお尻だけ見えた、俺レベルになるとあれだけでご飯軽く50杯はおかわりできるよ。
でも任せといてくれ妻よ?俺はしっかりすると決めたんだ、またラッキーにアラートされないようにちゃんと我慢するよ、子供ができたなら尚更!
少しすると子供達がほっかほかになって浴室から出てきた、子供用のベッドに二人とも寝かせてやると疲れていたのかとてもおとなしく布団の中に入ってくれた。
「いいこだねぇ~?よしよしおやすみ~」
「「おやすみなさーい」」
なんてやってると妻が突然バスタオル一枚で飛び出してきた
「え!?どうしたのそんな格好で!?」
「や、その~… 下着忘れちゃって!えへへ///」
ってそんなあられもない姿で俺の前に立つなんて… いい度胸してますわね!
でも我慢する、えらいねぇ~?いいこいいこして?
しかし試練は続く。
「ど、どこかな~?」←白々しい
お、奥さぁん!あなた今ノーパンなんだから屈んだら見えちゃいますよ!?見え… もうちょい… 見え…。
「あった~!これこれ~!」(棒)
という大変丁度良いタイミングで見ることはできなかったが、妻の素肌をこんなに見れたのは久しぶりだ、も、もうダメ…!限か… い…。
じゃなぁ~い!
「今日はそそっかしいね?なにかあった?ハァハァ」汗ダラダラ
「え?アハハ… 何でもないです、疲れてるのかな~?」
乗りきった~!
頭のなかでクラッシック音楽を流して我慢するうちに寝巻きの妻が子供達の元へ行った、その隙にお風呂に入り俺は気持ちを落ち着かせるが…。
「ふぃ~いい湯だヨヨヨ…」
ガチャ
「シロさん!子供達すぐ寝ちゃったので!お、お背中流させていただきます!」
「あっひぃ!?」バシャバシャ
ふーんそういうことするの?俺も今度やろうっと!
しかし、なんだろうか?変だな、なんだかご機嫌とりでもされてるような?それにすごく慌ててる、彼女らしくもない。
なにか隠してるのかな?サーバルちゃんといけない関係になってしまった罪悪感とか?
いやそれは冗談として、まず浮気の線はないだろう、だって男って俺とクロだけだもん、次に父さんたちがくるのもまだ先だし… やっぱり妊娠かな?急だからテンパってるのかも。
…
シロをターゲットに苦行とすれ違いが始まった。
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