第2話 ふたりのちがい
「クロー?ユキー?ちょっとおいでー?」
「「はーい!」」
と二人に集合をかけたのは妻だ、彼女には新たな特技があるのだ。
「う~ん、やっぱり二人とも服が小さくなってきたね?じゃあ今日でこの服はバイバイしましょうね?」
「服なくなっちゃうの?」
「どうしよう!」
「大丈夫だよー?じゃーん!新しい服でーす!」
「「わーい!」」
それは“裁縫”である。
子供というのは成長が早い、とりあえずこれ着せとけってやつもいつのまにか着れなくなっている。
父さん達が持ってきた子供服も今となってはただの布に過ぎない、一度も着てないやつすらある。
そこで妻は考えた…。
「ひとつ試してみたいことが!」
するとどこにあったのか裁縫セットをとりだしなにやらチクチクとやり始めた。
当時、まだ慣れていないのか「痛ッ!」とか聞こえるのが心配だったけど彼女は自分と俺の古い服や子供たちの古着などを使い作り上げてしまったのだ。
子供服を。
それを見たミライさんからはすぐにミシンが支給された。
ミシンちゃんとなった妻は瞬く間に服を量産し始めた。
時には俺の服を直してくれたり、寒いのが苦手なサーバルちゃんに長袖の服を作ったりもしていた。
だいたいの場合、クロはかばんちゃんのフレンズ服を小さく加工したものを、ユキは俺が着てたシャツを小さくしてワンピースのようにされたものを着ることとなっており、そこに上着ですとか季節に応じて、服を変えたりしていくのです。
そのためクロには赤がよく似合うし、ユキには青がよく似合う。
もちろん逆でもいいとは思うが。
材料として“ヒトのフレンズの毛皮”であるかばんちゃんが着ていた例の赤い布なら無尽蔵に作り出せる。
かといって制作中の間妻が全裸でミシンをガタガタ動かしている訳ではない、そんなことは例え本人がやると決めてもこの俺がさせん!
というのは、今では彼女も俺と同じように普通の服を着ているのでその点まったく問題はないのである、妻を痴女みたいに言うのはやめてくれないか?そうなるのは俺とベッドに入っゲフンゲフン。
かばんちゃんと言いつつ今はそんなにかばんは背負わない、とうとう本当にママんちゃんとしてこのジャパリパークに君臨している。
今では普通にセーターとかスカートとかを身につけており、新しい服を着ると妻は俺の前にきて言うのだ…。
「どうですか?」クルリ
思い出しますね、地下室での一件を… 俺はこう答える。
「ハピネス!」裏声
「え?」
「君は何を着ても似合うよ、そんな素敵な奥さんを持つ俺はきっと特別な存在なんだと思います… さぁ寝室に行こうか」←訳
すると「朝ですよ!」とツッコミが入りラッキーからもお叱りが入る。
「シロ デリカシーガ無イト 嫌ワレルコトガアルヨ」
「ラッキー 君ニデリカシーノ話ヲスル資格ハ無イヨ 君ノ録音ハ犯罪ナンダ」
「アワワワワワ」
まぁ、妻としてもせっかくお洒落して着た服を脱がすなという話しだ。
こういうのは確かにデリカシーに有無の話になる、みんなもパートナーがお洒落してたら褒めてあげるといい。
ところで双子の二人だが何度も言うようにクロは母似、ユキは父似となっている。
これはまぁ所謂“二卵性”の双子というやつだろう、双子だが顔が違って生まれる。
でもクロが完全に妻にしか似ておらず、ユキが完全に俺にしか似てないのか?と聞かれるとそうでもない。
例えばクロユキくんはですねぇ?
髪は黒く少しクセがあるのは母譲りである、ビックリしたり怖がったりすると「たうぇ!?」の顔をする、あの母の子であると誰が見ても分かる。
ただしおとなしく黙ってたりムスっとしてるところを見ると妻が言うには…。
「見てください、シロさんと同じ目をしています!」
「ほんとだー!ちゃんとシロちゃんにも似てるんだね!」
「不思議ですね」
「確かにあの横顔はシロと似ているのです」
目元がそっくりなんだそうだ、というのは俺がいつも不機嫌そうな顔をしてるとかではなく、本を読んだりして難しい顔をしてる俺の顔がおとなしくしてるクロの顔とよく似てるらしい。
そういうのパパ嬉しいの。
ただ歳のわりに知恵が回ったりする、物事を結びつけるのが上手いというか、考え理解して答えを出すというのが得意そうに見えるので、これはもうまさしくかばんちゃんのスキルをそのまま受け継いでいるということだろう。
小さく直された赤いシャツと白いズボンを着せると小さな“かばんくん”が出来上がる、猫耳も引っ張るし。
ただ担当のサーバル先生の話だと…。
「元気いっぱいだよね!毎日走り回ってるよ!」
とのことなので、もしかするとホワイトライオン的ワイルドさを内に秘めているのかもしれない。
そんな息子は可愛い。
それからシラユキちゃんはですねぇ?
ご覧の通りふわりと揺れる白髪です、これはアルビノの類いではなくどう考えてもホワイトライオン一族の遺伝でしょう。
こちらは息子のように特別に勉強ができるとかそういったことが物凄く上手いわけではない、もちろんダメだという意味ではなく年相応かややできるかな?という感じだと思われる、まぁ普通の3才児並だろうしそれでいいと思う。
「どこからどう見てもシロの娘なのです」「今に耳と尻尾が生えます」
と長は俺をじっと見たあと感慨深い目で娘を見ていた。
むか~しかばんちゃんも着たことのある俺の淡い青色をしたシャツ、それを妻が小さく直してワンピースみたいにして着ている娘は“シロ子ちゃん”と言って相違ないだろう。
だからかばんちゃん要素はないのか?と言われるともちろんそうではない。
順番で妹にはなったがどこか大人びた顔をすることがある、まるで弟でも見るような凛とした顔でクロを見るときがあるのだ
これは妻が子供をあやしてる時の顔とよく似ている… 授乳の時ですらガン見していた俺には分かるんだ。←怒られた
「どーしたのユキ?遊ばないの?」
とそんな顔をした娘に妻が話しかけると。
「たのしそーなクロを見てるの!」
と答えた、たしかにサーバルちゃんの耳に埋もれるクロは幸せそうな顔をしていた。←性豪の片鱗
そんな達観として視野が広いところが聡明な妻とよく似ていると俺は思う、尻尾も引っ張るし。
だが妻が以前言ったように甘えんぼさんなところが俺に似てるだとか、赤ちゃんの頃は俺が抱くと泣いてたユキだが、クロを抱っこしてると「ユキも抱っこして!」ときたもんだ、かばんちゃんとベタベタしてる時もちょこ~んと膝に座ってくる、その時はクロも便乗してくる。
子供のやることに嫉妬深いなんて言葉は使わないが、こういうとこは妻に似てるはずだ、きっと妻ならジトッと睨んできてる。
でもそれもこれも全て可愛いヤキモチだと思ってる、楽しそうにしてると羨ましくなるんだろうと。
そんな娘ももちろん可愛い。
あと容姿以外に二人の大きな違い言えば、実は双子なのにユキが既にクロよりも走るのが早かったり力が強かったりする、もう尻尾が引かれる強さと耳を引っ張る強さに差がでているのをこの身で体感している俺とサーバルちゃんはこう語り合った。
「耳はまだいいんだよね」
「そうだね~?尻尾だよね~?」
「「ヤバイよねぇ~?」」
年々強くなっていく、娘は戦闘民族なのかもしれない… 「興奮すっぞ宇宙へゴー!」とか言い出したらどうしようか。
とにかく、遺伝が強くでた面が互いにあるのだ。
このままいけばユキは今にフレンズ化するかもしれない、二人ともヤンチャなわりには考えてみればクロよりも怪我が少ない気がする、つまり頑丈なのだ。
かといってクロが純度100%ヒトというわけでもない、もう少し大きくなると身体能力が上がってひょっこり猫耳が生えるのかもしれない。
ジャパリ図書館のシロお兄さんでした。
…
「サーバルちゃん!ジャンプしてー!」
「してー!」
「ふっふーん!わたしの得意技だよ?見てて?」ピョーン
「「すごいすごーい!」」
サーバルちゃんはあれをあと100回くらいやらさられることだろう、毎日遊んでるせいか反応にみん味が増してきたな子供たち。
「今度はユキと一緒にジャンプしてー!」
「えぇー!?すっごく高いんだよ!?怖くないの?」
「怖くないの!」
ユキはああして見栄を張るというか、怖いもの知らずなところがある、パパはそれでケガとかしないか不安なんですよ。
「ほ、本当に~!?クロちゃんは?」
「怖いよ~!」
「そうだよね、ユキちゃんも危ないからやめようよ?」
「やー!ジャンプして!」
ここでも性格の違いがでているな。
ユキはそのまままっすぐいくタイプだ、好奇心旺盛で行動力が高い。
クロも同じくらいヤンチャだが、いろんな可能性を加味した上で怖がっているのかもしれない。
サーバルちゃんは「ドジー!って言われるもん!」って自虐してたから確かに空中分解して落下しては大変だ。
つまり後先考えるかどうかと言うことだ。
それにしてもまったく困ったちゃんだねぇ?仕方ないな、助けにいこう。
洗い物も丁度終わった俺はワガママ娘のもとに駆け寄った。
「ユキ~?サーバルちゃんを困らせちゃダメだろ?」
「だってサーバルちゃんすごいんだよ!こーんなに高くジャンプするの!」
「えへへ!ユキちゃんありがとう!」
サーバルちゃんはそんな素直な性格が裏目に出て3才児にまんまとのせられている
「サーバルちゃんおねがーい!ユキとジャンプしてよ~!」
ん~… 聞いてやりたいがあまり無茶させると嫁さんの眉間にシワが寄るからなぁ
怒らせると寝るとき背中を向けられるんだよ、辛いだろ。
「シロちゃんどうしよー?」
「わかった、ユキは高く跳びたいのか?それとも高いとこに行きたいのか?」
「ユキお空の雲を掴まえてみんなに分けてあげるの!」
俺の子供天使過ぎ、はい許した… しかしお空の雲は捕まえることができないと伝えなければならない、なんて残酷な仕事だ!
「わかった… ユキ、クロもおいで?」
「「はーい!」」
「高く飛ぶことは実は簡単にできるんだ…」
「「ほんとー!?」」
「でもお空の雲はどんなに高く飛んでも掴めないんだよ」
「そうなの…?」
「…」
だって形がないんだもん。
なんかもうこの世の終わりかって目をして俺を見てくるんだが、いやごめん… でもそうして大人になっていくものだよ。
「でもアライのお姉ちゃんがフワフワの雲を洗って消しちゃったってはかしぇたちが言ってたもん!」
「そうだよパパ!触れないと洗えないんだよ!」
マジあの鳥適当なこと言いやがって… それはワタアメだろ。
結婚して間もない頃に牧場によくわからない機械があると聞き足を運んだことがあった、それが小型のワタアメ機だと分かると妻と使い方を調べてやってみることにしたのである、その時アライさんが…。
「こ、これは!なぜだか洗わなくてはいけない気がするのだ!それにベタベタしたいるのだぁー!」
ジャバジャバフワァ←消滅
「うぇぇぇえ!?」
「アライさんまたやってしまったねぇ?」
アライさんはベタつきが気になりワタアメを水につけるとそのまま溶けてなくなってしまい驚愕の声を挙げた、当たり前である。
そもそもワタアメはベタつくものだ。
「アライグマ、フワフワをどこにやったのですか?」
「フワフワを返すのです!」
「な、ないのだ!水に入れると消えてなくなったのだ!」
「「ほう…?」」
「野生部分の解放です」ギラァ
「食べ物の怨み、恐ろしいですよ?」ギラァ
「ごめんなのだ~!?」
「あぁ~はいはい!またすぐ作るから席について!」
…
そんなこともあったな。
「二人とも、それは雲じゃなくてワタアメって言うんだよ?今度牧場に行って食べさせてもらおうか、甘くて美味しいよ?」
「「ワタアメ~!?たべたーい!」」
「うみゃー!わたしもわたしもー!」
興味がサーバルジャンプからワタアメに移った、これでとりあえずOKだ。
「高く飛ぶのはどうやるの?」
「ユキにも教えてー!」
「わたしもー!」
サーバル先生!さっきから混ざらないでよ!
く!しかし、忘れていなかったか… 仕方ないな。
「合言葉を唱えるんだ」
「「なにそれー!」」
「え~…コホン! オヤツターイム!!!」
すると空の彼方に二つの影が。
「シロ、オヤツはなんです?」
「当てましょう、チーズケーキですね?」
「あ、はかしぇたちだ!」
「オヤツまだだよ?」
「えー!?オヤツまだなのー!?」
いろいろすっ飛ばすが…。
事情を説明した俺は子供たちを抱いて少し飛んでくれないか?と頼み込んだ、報酬は弾みます。(ワガママ聞きます)
「いいでしょう、空を飛ぶのはよい経験になるのです」
「夕食はラーメンを作るのです」
「お安いご用だよ」
ノリで子供“達”と言ったが飛びたいのはユキの方だけだ。
クロは自分も空高く舞い上がるのかと察するとぎゅっと俺の足にしがみついた。
「ぼく高いの怖い…」
「大丈夫だよクロ?パパと一緒に待ってような?」
ひょいっと抱き上げるとよほど恐怖を感じていたのかぐっとしがみついて離れそうになかった。
「良いのですか?」
「二人くらい小さければ特に問題ないのです」
「クロは弱虫ね!ユキ強いからへーきだもーん!」
「こらユキ、ダメだろそんなこと言ったら?」
しかしクロには見栄っ張りなとこがあるようで、ムスっとした顔でムキになりユキに言い返した。
「弱虫じゃないよ!じゃあぼくもいく!」
「クロ、気にすることないんだよ?普通飛ぶようなことないし高いとこが平気だから強いというわけでも…」
「だいじょーぶなの!いくの!」
やれやれ誰に似たんだ?←コイツ
というわけでユキが博士に抱っこされ、クロは助手に抱っこされた。
すると長達の頭の羽がフワリと動き、体が浮き上がる。
「わぁーい!飛んだー!」
「ユキ、いい子だからおとなしくしてるですよ?」
「うぅ~…」
「大丈夫ですよクロ、しっかり捕まえているのです」
すっかり高い位置に… 図書館より高い。
上空をゆっくりと動き回り何やらボソボソと聞こえる… 多分どれがどのちほーだと教えているんだ。
クロは大丈夫だろうか?泣いてはいないみたいだけど…。
「あ、こっち見てるよ!おーい!クロちゃん!ユキちゃーん!」
きっと「下でパパが見てるのです」とか言って手を振ってるんだろう… クロも慣れたのか楽しそうにしている、不安だったが良いことだ。
が…。
「ぶぇぇぇ~ん!ごわぃ~!高いよぉ~!?」
うわ!?ぎゃん泣きしてる!?
それは意外にも先に飛びたがり「弱虫ね!」とか豪語していたユキの方であった。
始めこそ遠くの景色に一喜一憂していた娘だったが真下の予想外の高さに怖じ気づいてしまったらしい。
騒ぎを聞き付け妻も駆け寄ってきた。
「ユキ大丈夫!?どこ!?」
「あ、かばんちゃん!上にいるよ!」
「あぁ!?あんなに高く!?」
すぐに降りてくると今度はユキが俺にしがみついた
「びぇぇ~!パパぁ~!」
「よしよし… 怖かったなー?大丈夫もう足つくからね~」
「参ったのです、真下を見せるべきではなかったですね…」
一方クロは…。
「あ、ママだ!」
「クロ!おいで!怖くなかった?」
「楽しかったよ!ずっと遠くまで見えた!パパがこんなにちっちゃくて!」
「すぐに慣れたのです、恐怖よりも初めて見る景色への好奇心が勝ったようです」
不思議だね~?真逆になってしまった。
その後、クロは高いとこに上がりたがりユキは低いところで遊びたがるようになってしまった
肩車くらいならなんでもないが、図書館の階段も上がるときは抱っこしろと俺にしがみつく。
クロはこれで一歩踏み出す勇気を得ただろう、そしてユキは先を読むということを学んだはずだ。
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