hide creature8
話を聞きおえ、アギリとジャスティーは廊下を歩いていた。
廊下にはずらりとドアが並んでおりそれぞれナンバープレートがついていた。この辺りの部屋は全て埋まってしまっているらしい。
「どう?さっきの話。理解できた?」
「まあ、何となくだけど…………」
ジャスティーの問いにアギリはそう答えた。アギリとジャスティーは更に奥へと進んでいき、ひとつのドアの前にたどり着いた。ドアには「32」のナンバープレートがついていた。
「ここが君の使う部屋だよ」
そう言ってジャスティーはドアを開けた。そこは14畳ほどの部屋だった。
部屋にはベットとウォークインクローゼットがあった。アギリはキョロキョロと部屋をみわたした。中に個別にシャワーとトイレもついていた。
「思っていたより広いな………」
あの今暮しているボロいアパートよりは確実に広い。アギリはそう確信した。
「この部屋は自由に使っていいからね。明日から荷物を持ってこれればいい。僕は用があるからそろそろ行くよ」
ジャスティーはそう言うとさらに「帰るときはこれを使ってよ」と、アギリにあの液体の入った小びんを渡した。
この世の黒を固めたような色をしているが、本当に壁に塗った液体は落ちるのだろうか。
「今日はありがとう。いろいろ……」
「いいよ、そんなこと言わなくて。とりあえずこれからよろしくね」
そう、言うとジャスティーは振り返ってドアの報へと歩いていった。
が、「あ、そうだ」と何かを思い出したようで再びアギリの方をむいた。
「能力診断のことだけどさ、手続きとかこっちでしちゃって大丈夫かな?」
「あー………うん、大丈夫です。お願いします」
アギリはそういう書類を書くことはあまり得意ではない。そういうことを引き受けてくれるならお願いしておこう。
「じゃ、こっちでしておくよ。日程が決まり次第知らせるからね」
そう言い残してジャスティーは部屋をあとにした。
アギリはジャスティーが部屋を出ていくのをみおくったあと部屋の中を少しだけ歩きまわり、クローゼットを開けてみたりした。クローゼットもそこそこ入りそうであった。
そして、ベットにたおれこんだ。ボスッという音がした。新品のシーツの匂いが鼻をくすぐる。
アギリはベットに倒れたまま今後のことを考え始めた。
今日でたくさんのことを学んだ。自分の今の状況も。自分が尾行されてたのを知った。自分の状況よりアギリはどうも自分が危機感を持てていないことに危機感をもっていた。よくわからんがさすがにこれはまずい。
アギリは寝返りをうち今度は能力診断検査について考え始めた。KPはいろいろな分野においての検査を行うといっていたがどんなことをするのだろうか。身体測定だけでなく筆記試験なんかもあるのだろうか。
アギリはそう考えているとなんだか一気に疲れがでてきた。こんなに疲労感があるのはひさしぶりだった。頭を使うと案外疲れるものなのだろうか。
アギリはそのまま深い眠りについていき、起きた時には日付が次の日になっていた。
***
ジャスティーはさきほど通った道を引き返していった。ジャスティーが右の角を曲がったとき、
「ひゃっ!!」
「うわっ!」
誰かにぶつかってしまった。
そこには尻餅をついた黒髪と赤目の少年がいた。ここに少し前にやって来た少年だった。
「ごめん!……大丈夫?」
ジャスティーが手をさしのべると少年はこちらをみた。
「あ………………だ、大丈夫、…です………。」
少年はおどおどした感じで答えた。ジャスティーが始めてあったときもこんな感じだった。
少年は立ち上がると「あ、あの…………27番の部屋って……どこですか…………」と、これもまたおどおどした感じで聞いてきた。
hide creatureは少しばかりいりくんだような構図をしているためここに来てまだ日がたっていない人はよく迷う。
「27番の部屋はここの廊下をまっすぐいったとこにあるよ」
「ありがとうございます………」
そういって少年はジャスティーにいわれた通りに歩いていった。
ジャスティーは少年とすれ違うとき、少年の左の首筋に火傷のような痕があるのをみた。たしか彼の履歴書を読んだときにそれに関することが書いてあったような記憶があった。何が書いてあったかは忘れてしまったけど。
そんなことを考えながら歩いていると、
「ハル?どこ行ったのー?」
少女の声が聞こえた。声のする方へいってみると黒髪と青い目をした少女がいた。長い髪をツインテールでまとめている。どうやらさっきの少年を探しているようだ。
瞳の色や男女の差があるといえど少年とよく似た容姿をしている。
そういえばこの子たちは双子だったな、とジャスティーは思った。
ジャスティーは少女とは反対の方向に歩いていった。
ジャスティーの向かった先はさきほどの共同スペースだった。
相変わらずこの貼り紙のトマトは謎だ。KPの趣味なのだろうか若干つぶれている。
ジャスティーはそんなトマトの絵を見ながら共同スペースのドアを開けた。
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