hide creature3
この辺りの地域のことは噂に聞いていた。ここはハンター達にとっはなかなかいいところなのだと思うのだがここを歩いてきた中でハンターを誰一人見かけなかった。
理由はおそらく圧倒的にクロウが多することだろう。さっきも物陰からクロウが飛び出してきて、駆除したところだ。そうしてできた黒玉を拾い集めている。
もうこれで三つ目だ。大きさはピンポン玉くらいだったが。これだけの高頻度で出てこられたらたまったもんじゃなだろう。
黒玉を拾いながら、さっきビルの屋上からアギリを見ていた男はため息をついた。
クロウはどんどん増加していく一方だ。この前だってクロウを狩っていたハンターが3人やられた。このままだといつ自分のチームに被害がでてもおかしくないだろう。
それに加えてより凶悪なクロウの出現頻度も上がってきている。凶悪なクロウは大きな都市をも再起不能にまで陥れる。勿論そいつを駆逐できればかなりの討伐費をはずんで貰える。
だが、よほど腕に自信のあるチームでも徒党を組んで駆逐にあたる。
そうでもしないとチーム全滅どころか町や都市も潰されてしまう。男は全ての黒玉を拾い集めると、辺りを見回した。
ここで少し時間を使ってしまった。
でも、心配はない。ここの通りを真っ直ぐ進んでいけばアギリに追いつくはずだ。男は携帯で時間を確認し、小走りでアギリの後を追いかけていった。
***
ここの通りは三年くらい前まではいろいろな店があってちょっとした商店街みたいな雰囲気だった。
今は看板は色あせたり、落ちかけていたり。ガラスは割れて破片が飛び散っている。中を除いてみると商品だなが倒れ品物が散乱している。昔はよくここで買い物をしたものだ。今はわざわざ隣町まで歩いて買い物にいっている。
この町に住んでいるのはアギリくらいしかいないだろう。ハンターとかはたまにみるがそれ以外は全く見かけない。
アギリは寂れた店をひとつひとつ眺めながら歩いていった。そうこうしていると、隣町との境界線を示す立て札が見えてきた。ここを越えればちらほら民家がみえてきて人も増えていく。
「………ねぇ!そこの君!!」
立て札の横を通ったとき、不意に声をかけられた。久しぶりに背後から声をかけられたことにより、身が強張る。
後ろを振り向くと少し先のところに声の主が立っていた。背は自分より頭一つぶん高い。丁度姉と同じくらいだ。白のシャツの袖をまくりに長いノースリーブのカーディガンを身につけた男が立っていた。
この辺に現れる人物といえばハンターくらいなのだが………それにしては軽装だった。
「……………なんか様ですか…」
と、ぶっきらぼうに返事をしておいた。
「君ってこの辺に住んでいるの?」
立て続けに男が問いたててきた。
「はあ…まあ、そうですけど……」
「あ、いや、ね。こんなとこに人がいるからハンターかなーって……それにしては軽装だったから」
「それはあんたも同じじゃないですか」
そう言い返すと男は「まあ、そうだけどね」と笑った。
「じゃあ、あんたもこの辺に住んでいるんですか?」
今までこの辺りに住んでいる人間なんて見たことはなかったが、わりとこの町は広いしそういうこともあり得るかもしれない。
そう思いながらアギリは訪ねてみた。
「いや、僕はこの辺りには住んでないよ。今日はちょっとした様があってねぇ……」
そう男は答えた。この辺りに様とは、やはりこんな軽装でもハンターの類なのだろうか。
「へえ、なんの様でこの辺り…」
そう、訪ねようとした時だった。アギリたちの隣に立っていた建物の壁が吹っ飛んだ。轟音とともにコンクリート片が飛び散る。
「……………!?」
アギリは瞬時の出来事にも関わらず後ろに飛んでコンクリート片を交わしていた。
自分でもよくわからない。ただ、飛んでくるコンクリート片を見た瞬間急に流れる風景がスローモーションようにゆっくりになりどこに、どう、コンクリート片が降ってくるかがわかった。
何だ、今の…………… 似たようなことは前からあったが今回はなにかが違った。なんというか、自分の意志で動いてなかったような……。
そう思考をぐるぐる回転させていると急に一つのことを思い出した。はっ、となり男が立っていたところに目を向けた。あの人は大丈夫だったのだろうか。コンクリートの下敷きにはなってないだろうか。そんなことが頭をよぎる。
だが、あの男性もなんとかコンクリート片を上手く交わした様だった。アギリの少し離れたところに立っていた。
だが、男は険しい顔をしてある一点を見ていた。アギリが男の目線の方へ目をやると………。
「何、あれ…………」
壊れたコンクリートの壁の向う。最初は暗くてよく見えない…………いや、それは「暗やみ」ではなかった。それはコンクリートの壁に大きな穴をあけ、こちらへと這い出てきた。高さ二メートルはあるかという巨大な黒い獣のような形をした何かが。
「クロウ……」
男は表情を変えずそうポツリと呟いた。それと同時に巨大なクロウは大きな前足で攻撃してきた。
「おわっ!」
アギリと男はそれを交わすが、すぐに次の攻撃が飛んでくる。クロウの大きく鋭い爪を持った足が男のギリギリ横を掠める。アギリも飛び交う攻撃を交わす。
相変わらず変な気分だ。次、どこにどう攻撃が飛んでくるのか読めてしまう。今までにも相手の動きが読めたことはあった。だが、なんとなく、こうかな?……という感じだった。
もちろんはずれることもあった。だか、今は違う。読んだ動きに確信を持てた。確実に読めてしまっている。読めた動きに合わせて体が勝手に動いていて、アギリはそれが気持ち悪るくて仕方がなかった。
このままいけば反撃の隙もつけるかもしないと思えてしまうのも気分が悪い。
「ちょっと下がって!!!」
突如あの男の声が聞こえてきた。
「へ?」
「いいから!!」
男に言われるままにアギリは後ろへ飛んだ。アギリが下がったのを確認した男は自分の腕を前へつきだした。
すると彼の腕が光だし、そこからポロポロと金属でできた部品のようなものがでてきた。それは出てくるなりガシャガシャと音を立てながら組合わさっていく。みたことのない光景にアギリは硬直してしまった。そんなアギリを横目に完成したのは…………。
「それって……」
重々しく黒光りする機関銃だった。
「百発連続発射……」
そう呟くと彼は容赦なく引き金をひいた。
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