霧晴れの向こうに

「ねえ、最近霧が世界中で発生してるって噂聞いた?」

 クラスメイトのめいにそんなことを聞かれた。

「知らない。興味もない」

 そう返事をしたら頬を膨らまして腕を組む。

「もっと会話をつなげる努力ぐらいしようよ。でないと唯一友達の私も離れちゃうぞ」

 初めて知る事実だ。友達かどうかは置いといてたしかに、私に話しかけてくる人はメイリン以外に教員ぐらいだ。赤の他人ではないだろう。

 私も、別に会話をしたくないわけではないので先ほどの続きをしようか。したいというわけでもないけれど。

「じゃあ、その霧が出てくるとどうなるの」

 命は腕組みをやめ、机をたたく。


「よくぞ聞いてくれました!まあ、私もネットで流れてることしか知らないけど。その霧が出るとね、中から変な生き物が出てくるんだって」

 変とはどのようなものなのだろう。

「山で霧が出ると巨大化した蟲や足が多い猪が出てきたり、海だと全身に鰓が付いている魚がいたり。動物とか虫が突然変異したような生き物が出るんだって」

「ふーん」

 そんなもの眉唾物だろう。虫が大きくなったところで体が重くて動けないだろうし、猪は短足のため足が増えたところで早くなるわけでもない。魚は呼吸器官が増えたら酸素中毒になりそうものだ。

「ほんとに興味ないんだね。でも、これを聞いたら興味を持つと思うよ!」

 命は自身の携帯電話から掲示板を開く。その中にはこう書かれていた。


『今外に霧が出てて、噂もあって外に出てないんだ。でも、噂が本当かどうか気になって、窓から外を見たらすげえものを見た。

 鳩が一羽電線に止まってんだけど、その鳩を丸呑みした鳥がいた。

 とっさに隠れたから全身を見てないけど、電線に止まってた鳩を食えるぐらいには大きかった。』


「これ、信用できるの?」

「私も気になって調べてみたんだけど、複数人から警察に似たような通報があったんだって。この書き込みをした人、街の名前も書いてんだけど。ニュースに出る前に書いてるんだよね。だから、そこそこの信用性はあると思う」

「そこまで大きいと飛べないと思うけど」

 鳥がなぜ飛べるかというと、あの小ささともう一つに骨が中空になっているらしいのだ。体が大きくなればそれを支えるための筋肉と強固な骨が必要になる。


 命が、携帯電話を弄って何やら調べている。私も本の続きを読むことにする。

 しばらくすると、命が声を上げる。

「ねえ。今まで日本で霧が発生した街って、一直線なんだって。世界の街とも線で結べるんだって。でね、その線上にこの町も入ってるの」

 何が言いたいのだろう。

「もしかしたら、近いうちにこの町も霧が出るかもしれない」

 その顔は少し青くなっていた。掲示板のことも含めていろいろ知っているのか、今になって怖くなったらしい。

明菜あきな、帰り道途中まで一緒だったよね」

 そこまで言われたら先のことは想像がつく。

「一緒に帰って!」

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いろんな短編集 秋楓 @unknowun

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