Familia Crear On-Line

「これで、ゲームができる」

 そうつぶやく男はヘッドセットを手に取りベットに向かう。


「これでやっとできる。だいぶ遅れてしまったが、みんなに遅れないように頑張ろう」

 ベットに横たわり機器を頭につける。そしてある種の魔法の言葉をつぶやく。

「ファミリア・クレール・オンライン、ログイン」


《音声認証確認しました。これよりFamilia Crear On-Lineにログインします。》

 そのアナウンスを聞き届けると気が遠くなる感じがする。実際には体だけが目眠っている状態で意識がはっきりしているだけなのだが。

 目の前が晴れる感じがすると目の前にはホログラムの画面があった。その下にはキーボードもある。


《Familia Crear On-Lineにようこそ》

 画面にそう表示された。文字は下に続いていた。

《ここはキャラクターを作成する場所です。

 この後に詳細に決めていきますのでご了承ください。

 問題がなければ「次へ」を押すか、声に出してください。》


 男は無言でボタンを押す。画面が左にずれ、右から別の画面が現れる。

《名前を入力してください。》


 キーボードが手元まで浮き上がり、打ちやすい位置に移動した。これもまた無言で入力する。

《入力確認しました。

 重複した名前はありません。

 このままでよろしいですか?》

 次を押す。


《種族を選択してください。


 人間種・獣人種・悪魔種・天使種

 妖精種・精霊種・機械種・植物種

 奇形種・ランダム


 選択してください。》

 画面に選択が出て、押すタイプだったので前から決めていた精霊種を選択する。

《確認しました。

 精霊種は実体がない種です。

 問題ありませんか?

 なければ「はい」を押してください》

 はいを押す。


《アバターの作成です。

 精霊種はベースを決めてから作成します。

 ベースを決めてください。》

 一覧が出てくる。タグで整理されていて見やすく、検索もできるようだ。ここでもランダムがある。せっかくなのでランダムにする。

《ランダムが選択されました。

 すべての精霊種から選ばれます。

 変更は不可能です。

 問題がなければ「はい」を押してください。》

 もちろん問題がないためはいを押す。目の前に現れたのは薄い水色をした女性だった。だった。

「えっ」

 さすがに声が出た。

《「アイシクル」

 精霊種では珍しく実体を持っていて、体が氷で出来ている。

 精霊種ということはわかっているため、本体はどこにあるかを現在研究中。

 少女の姿をしており、雪の姫と呼ばれている。

 生殖の必要がないが、女性の姿をしてる。

 なぜその姿をしているのかは今なおわかっていない。

 氷の体のためか熱いところは苦手にしている。

 体の一部が砕けてもすぐに直してしまう。》


「図鑑に乗っているような説明をありがとう」

 おもわず画面に感謝の意を唱える。しかし、それを見ても何かが進展するわけでもない。

 このアイシクルというのは女性の姿をしており、男はいないとされている。

 しかし、操作しているのは男だ。生体情報を記録していてこれが出たということは問題がないということだが、個人的に問題があると感じてしまう。

「変更はできないか。このままアイシクルで進むか、最初からやり直すのか。やり直すとなると、このデータを消す作業が入るから続きは明日になるな。まあ、自分からランダムにして今の結果だから仕方がないのか」

 男は肩を落とし、仕方がないと自分に言い聞かせながら次へを押す。


《アバターの体を作成します。

 身長は誤差10㎝。

 目、髪、身体的特徴は無理のない範囲で自由です。

 作成が完了したら「次へ」を押してください。》

 目の前に3Dの女性の姿がある。いまは自分の身長と同じで、体重は少し軽い。

《身長:173㎝

 体重:59㎏》

 自分の体重が66㎏だから少し軽い。女性の体だからか、それとも氷だからかわからないが、別に気にする必要もないだろう。

 スリーサイズなどは適当に設定する。好みが入ってしまうのは仕方がないかもしれない。

 髪や瞳の色などはほとんど意味をなさないが、少し青をいれた。

《入力確認しました。

 「はい」を押すとアバターに体を移します。

 意識の混濁が見られる可能性がありますので、ご注意ください。》

「楽しみにしていたゲームでいきなりネカマをすることになるとは。考えもしなかったなあ」

 自傷気味に笑いはいを押す。


 アナウンスの言っていたように瞬きをした次には視点が変わっており、少しふらついたがすぐに立て直した。

《アバターの作成、問題はありませんか?

 問題がなければ「次へ」を、問題があれば「戻る」を押してください。》

 見るに堪えない姿ではないし、体の調子も大丈夫だったので進む。


《それでは、Familia Crear On-Lineの真髄。コアを贈呈します。》

 目の前が渦巻き、晴れたそこには丸い石があった。直径10㎝程の石が。

《Familia Crear On-Lineではこのコアにモノを食べさせて眷属を作成します。

 作成の候補先は登録されているモンスターですが、食べさせたモノによって候補先がない場合があります。その時は新規に作成させていただきます。

 お時間をもらいますが、意見交換を密に行いご希望の眷属を作成します。》

 コアを手に取ると、コアがあった場所でまた渦巻き、一枚の羽根が現れる。

《その羽は『進化の羽根』です。

 それをコアに押し当ててください。

 これをすることにより、コアが眷属になるための準備が整います。

 これ以降も、同じようにモノを食べさせてください。

 条件が揃ったら眷属が姿を現します。》

 書かれたことを実行する。右手にコア、左手に羽をもってコアに押し付ける。するとコアの表面が波打ち、沈むように羽が消えていった。


《これで、キャラクターメイキングを終了します。

 なにとそ、Familia Crear On-Lineをよろしくお願いします。》

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