機械に覆われた惑星

「よいっしょっと」

 瓦礫の山をパワードスーツを使いどかす。これ自体はかなりの旧式で、骨格のような形をしているが、力が必要なだけの場合はこの旧式で事足りる。世の中には全身を覆うものがあるとか。


「何かあったかー?」

 同僚の男が別の山の奥から声をかけてくる。その声にこたえるために体を起こし、声を張る。

「いまお前が見ているものがあるよ」

「そうかー、どんな小さなものでも見流すんじゃないぞ。何か使い道があるかもしれないからなー」

「わかってる」


 体を起こしたついでに周りを見る。先ほど瓦礫の山を言ったが、今立っているここがすでに瓦礫の山だ。今目の前に立ちはだかっているものは言わば瓦礫の山のこぶだ。

 その山の周りを見ても茶色ばかりで、他に何も見えない。昔に本と呼ばれていたものを見つけ、その中に植物というものがあったそうだが生まれてこの方見たことがない。緑色をしているらしい。


「お、おおぉ。おーい、なんかすげえもん見つけたぞ!」

 同僚が身を乗り出してこちらを呼んでいる。目の前の山をひっくり返しても何かが出てきそうにもないのでそちらに向かう。

 同僚が見せてきたのは、何かの石だった。

「これなんだろな」

「光ってるから宝石か何かじゃね?」

 石を持って空を仰ぐ男。時折目がびくついているので光が反射しているのだろう。

 満足したのか、石を下ろし掌で石をもてあそぶ。


「市で売るのか?」

 俺がそう聞くと男は首を振った。

「いや、売らない」

 なぜと聞くと男は俺に体を向け話す。

「宝石なんて滅多にない宝物だろ?売るよりこれを自分のお守りにする」

「俺にはわからねえな。いつの世も金だろ?」

「お前はその金で本を買ってるじゃねえか。お前にとっての本が、この宝石だよ」


 理解はしたが納得はできない。いつまでも宝石に見とれている同僚を置いて、先ほどの山に戻る。何も見つからないかもしれないが、何もしないで見つからないより何かして見つからないほうがまだましだ。

 しばらくしたのちに、同僚のほうも作業を再開したようだ。瓦礫が崩れる音が聞こえる。


広い範囲の瓦礫をどかしていると、一つの棚を見つけた。引き戸のようだが閉まっており、開けることが出来ない。

「パワードスーツにかかれば鍵なんて意味ないけどな」

 独り言を言いながら拳で慎重に壊す。万が一中身が入っておりそれもろとも破壊しては意味がないからだ。

 派手に壊れる音とともに、中身が姿を現す。それを自身の手で手に取り埃を払う。


「本、か?」

 中に入っていたものは本だった。今日はいい日だ。同僚も宝石が手に入り、俺も本を手に入れた。だいぶ昔のモノだろうが、形が残っているということはそこまで昔でもないのだろう。

「内容はっと」

 本の題名は掠れていて読めなかったが、一ページ目に目次が書かれていた。



「『この世界はなぜ出来た?』」


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