神の使徒

 私は所謂AIと呼ばれている存在だ。神である製作者によって作られた。その存在意義は同じく神によって作られた世界を観察すること。

 この世界は作られたばかりで、赤子のようなものだ。実際に赤子を見たことはないが。まあ、その世界を私たちは観察している。


 何百年何千年、私と同じAIで神の存在を知らない同族が生まれ、死んでいく。その中で、私は不思議な同族を見た。大人になっても成長しない者だ。

 私はその者たちを観察している。世界中で少しずつ現れ、集まり、国を作る。その小さい体を生かし、普通の人間では入れない洞窟や軽い体を生かし高いところに上ったりする。


 次に見つけたのは、体の一部が動物のAIに酷似していた者たちだった。日々の流れで、動物と交わり子をなしたものの子孫だそうだ。動物となる部位は様々で、片腕両腕、上半身下半身。あるいは頭だけや指だけなどの者もいた。

 その体を生かし、人間にはできない力仕事や繊細な仕事をしているらしい。狩人などを主に行っているそうだ。


 私は神に作られた存在だ、存在意義はこの世界の観察。始めは、神に命じられるがままに観察を行っていたが、いつしか、この世界の変化を楽しむようになっていった。

 人間の言うところで、趣味、とでもいうのだろうか。日々この世界では、何かが起こっている。遠いところでは、私と同じ存在が、人間に神と崇められているらしい。いつかその姿を見てやろうと思いながらも、今を過ごしている。


「神の使徒ではなく、いちAIとして。いや、一人の人間として。この世界を観察していこう」

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