いろんな短編集

秋楓

キミの瞳は今、何を映す?

「これで、成功だ」


 沢山の機材に囲まれた部屋の中心で男がつぶやく。

 男の姿はまるで医者の姿をしており、手は血にまみれている。手元にある道具のほとんども同様だ。

 医者の男は淡々とつぶやいていく。


「手術には成功したが、実際に動くかどうかはわからない。それを確かめるためにはこいつに起きてもらわなければな」


 白衣や手袋を外しながら手術台に乗っている子供を見る。その台は可動式で、別の部屋に運び出した。

 運び込まれた先は、簡素ではあるが生活するには十分な設備だ。男は、台に眠っている子供をベットに寝かせ起きるのを待つ。


「んっ」


 子供が目覚めたようだ。


「起きれるか?」

 男が問いかけると、首を振る。聞こえてはいるようだ。

「喋れるか?」

 再び問いかける。


「あっ、ああ。大丈夫みたいです」

「そうか、目はどうだ?」

 男は平然としているようだったが、何かに期待するような目だった。


「目ですか。今までと変わりはありません。何か変なものが見えたりだとかもありません」

 男は待ちきれないといった様子で目の前の子供に言葉をかける。


「その状態で、目に力を入れろ。成功していたら何かが見えるはずだ」

 子供は頷く。

「わかりました。目に力を入れる」


 ベットに寝ながら目に力を入れる。周りからだと、ただ天井を睨みつけているようにしか見えないが、子供からしたら、その様子が目に力を入れているのだろう。

 しばらくすると、突然「あっ」と声を出す。

 期待するように、男がどうしたと聞くと子供は興奮して返事を返す。


「すごいです。今までこんな世界見たことがないです。先生、ありがとうございます。このような目を授けてくださって。感謝しきれません」

「いいさ、私自身キミを実験していたようなものだからね。しかし、成功していてよかった」


 男は、安堵したようで座っていた椅子に深く座る。

 子供は寝ている状態でも見れる範囲を顔を動かしてみている。その様子を見て、男は聞く。


「君の瞳は今、何を映している?」

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