第17話

あの森の事件から1ヶ月弱が過ぎた。ラストアークに戻ったアリマ達はそれぞれの傷を癒した。やはり1番時間を有したのはコエだった。手足が繋がるのに1週間、神経等を治すのに2週間かかったようだ。ほかの者達はラストアークにいる治癒属性の人達に治してもらった。そして、今現在。あの事件以来なかなか合うことが無かったアリマ達は会議室に集まっていた。

「……ひ、久しぶり……だね」

沈黙に耐えられなかったカピラタが明るく声を出す。

「いいさ、無理して明るくしなくても」

「…………アリマ」

「あぁ、ギルド長にエルの話をした時言われたことを今伝える…………私達でケリをつけろ……と言っていた」

「まぁ、そうなるよね」

「あぁ、元よりそのつもりだ」

「エルさんを救い出します」

「……皆!!」

コエが突然大声で立ち上がる。アリマ達はコエを見つめ、コエの言葉を待つ。

「…………謝らせてほしい…休養とかでなかなか言えずにいたけど…最後、エルの近くにいたのは俺だ。犯罪者のアジトにいるとき、体で止めることは出来なくても言葉で止めることは出来たかもしれないのに、俺、何も言えなかった……今回のこと、俺が1番何も出来なかった!!……だから、ごめん」

深々と頭を下げるコエ。それを見た皆は顔を見合わせ笑った。アリマは立ち上がりコエを殴った。何故殴られたり笑われたりしているのは理解できないコエの頭には?が飛び交う。

「あっはは!!やっぱりコエ君ってすっげー馬鹿なんじゃねーの!?」

「ちょっ!スバルダメですよ言ったら」

「元から馬鹿だからしょうがない」

「ユース、それは酷いですよ」

「コエくん、面白いね」

「らしくないぞコエ」

「コエコエの謝りなんて珍しい……謝り方知ってたんだ」

「風が気にするな!って言ってるよ!」

「エルちゃんがいなくなったのはコエさんのせいじゃないし」

「バカコエが……コエの責任は仲間皆の責任だ。お前だけじゃない」

「皆……」

エルが言っていた言葉を思い出した。

"皆が仲間だって思ってるからコエは仲間だよ"

コエは手を握りしめ、決意を新たにする。

「エル…絶対助けるから…」

「……でも、エルを助けるにしても奴らの居場所を知る必要がある。まだあの森にいるとは考えにくい」

「まぁ、新しい場所にいるでしょうね」

「場所探しなら任せて!」

「ラタちゃんに?」

「うん!!僕今まで特訓してたんだ!!皆の見て負けられないって思って!」

「ん?皆の見て……ってお前達俺が動けない間皆それぞれ特訓してたの!?なにそれずるい!!俺だけなにも成長してないし!!」

「お前はする必要ないだろ」

「なんでだよ!!治癒だって特訓すれば治りのスピードや自身の治せる範囲その他もろもろがパワーアップするんだぞ!!」

「コエなら時と場合なんて関係なく力発揮出来るだろ?」

「…………ま、まぁね!俺ってすごいから、特訓なんかしなくてもいつの間にかパワーアップしてるから!!」

「コエくんうっせー」

「カピラタの話を聞け」

「……」

「それでね!風の声が一気に複数聞けるようになったの!!今までは距離とかあると聞こえなかったけど、今は距離関係なく声を聞けるようになったから!!犯罪者の目撃情報を風から聞けるよ!てか!今既に聞いてるよ!」

「カピラタさん凄い……!」

「どこら辺だ?」

サリエラが机に地図を広げ、カピラタにペンを渡す。カピラタはえっと……と言いながら地図を見てペンで丸く囲う。

「多分この辺!」

「思ったより遠い……」

「時間制限はエルエルにかかってるってのが幸いだね……エルエルは犯罪なんか犯さない」

「……エルちゃん……」

「よし、直ちに準備しよう……出発は明日の明朝……それでいいな?」

皆は頷き、各自が行動し始めた。会議室に残っているのはコエとアリマだけとなった。会議室を出る様子がないコエをアリマは不思議そうに見る。

「あのね、アリマ……」

「なんだ?」

「俺、助けられてばっかりだった……俺は強いけど、俺より強い人なんて5万といるって実感した……俺、強くなるよ」

「……あぁ、勝手に強くなったらいいんじゃないか?」

「そして、アリマを守るよ」

「ッ!」

「もう二度と……アリマや皆を不安にさせない……連れ去られたりなんかさせない…」

アリマとコエの目が互いに互いを写し合う。

「……コエ…私も、コエを守るぞ」

「女に守られるってカッコ悪いじゃん」

「……そんな事関係ない……私はお前に感謝してもしきれない恩がある……助けてくれた大恩が……私がそれを返しきるまで死ぬなよ……コエ」

「…………なにそれ、死亡フラグだよ?」

「そんなものへし折ってやるし、燃やしてやる」

「アリマには一生勝てない気がしてきた」

「私はお前に負ける気なんか毛頭ない」

「ねぇ、なんなのアイツら」

会議室の扉に隠れながら2人を見守る複数の影。

「うさ公……なんかムカつくよアイツら」

「奇遇だな俺もだ」

「何故付き合わないのか不思議だ」

「2人にそんな気がないからじゃないかな?」

皆思ったことが重なった。

(((アイツら超めんどくせー)))

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