第9話
「ちょ、……ちょっと、待ってくださいッ!」
「あっはは!待てないよ!」
カピラタは森を走り回っていた。それを追いかける少女──フィサリア。フィサリアの髪はまるでメデューサのように髪の先端にかけて蛇のようなうねりがある。それを見たカピラタは「メデューサのおねーさん」と呼び、それに腹を立てたフィサリアはカピラタと距離を詰める。だが、カピラタはフィサリアの横をすり抜けそのまま真っ直ぐ走っていく。カピラタの後を追いかけて、今に至る。フィサリアが息を切らしているにも関わらずカピラタた息切れをしていない。疲れがないようにも見える。
「メデューサのおねーさん!……休憩する?」
「…………それは、情ですか?」
「なさけ?……うんん、ただ単におねーさん疲れてるし」
「つ、疲れてなんか」
「それにさ、おねーさん攻撃とか苦手でしょ」
「えっ」
「……風がそう言ってる!風は嘘つかないもん!風はすごいよ!……なんでもお見通しなんだ。」
「……あなたは一体……」
「ん〜。風がね、君は不思議だって言ってるよ!」
「風が?」
「うん!君はなんで謝ってるのって、不思議がってるんだ!ねぇ!なんで?」
「それは……」
無邪気にカピラタはフィサリアに聞く。フィサリアは真っ直ぐカピラタを見つめ
「あなたが知らなくていいことを、私は謝っているのです。」
そう、静かに答えた。
♢♢♢
木々が燃え盛る。炎の原因はキロネックスの相手であるバルネシだ。すべてを嘲笑うかのようなその笑みはキロネックスのイライラを増幅させる。周りは炎に囲まれ脱出は困難だ。炎相手では雷など効かない。ならば、体術での戦法になるのだが、不安がある。なんといってもキロネックスは魔法派閥であり、体術には自信が無い。相手が女性なだけましかと思う。
「さぁ、どうします?キロちゃん」
「その呼び方やめてよ。キッショ」
罵った言葉に相手は高揚とした。それを見たキロネックスはうわぁ……と体全体が青ざめるほど引いている。
「いやですわ、キロちゃん。私との仲じゃないですか」
「あんたなんか知らないし」
「そんなこと言わないで」
「ッ!?」
急接近したバルネシはキロネックスの首を掴みそのまま押し倒す。キロネックスに上乗りし、キロネックスを嬲り倒した。
暫くし、やっとバルネシは手を止める。キロネックスの顔や体には痣が出来ている。
「……やっぱりキロちゃんは可愛いですね」
「……あんたに言われてもキモイんだけど」
「酷い方」
ふふっとバルネシは笑う。キロネックスは眉をしかめる。いちいちバルネシの言動は鼻につく。あぁ、ダメだ。殺したいってこんな気持ちなんだ。とキロネックスは思う。痛む腕を動かし、バルネシの首に指をかける。予想外だったバルネシな動かない。
「……あとは、締めるだけ」
キロネックスは指に力を入れた。
♢♢♢
「ッ!」
カピラタは一瞬体を強ばらせる。なにか嫌な気配がした。心がモヤモヤする。
「……風が焦ってる」
すぐさまその気配を辿ろうとすると目の前にフィサリアが立ちはだかる。
「い、いかせません!」
「……どいて」
「ッ!」
「……どいてよッ!!!」
カピラタの怒りを形にするように風がカピラタを中心に渦を巻く。気を抜けば直ちに渦に飲み込まれてしまいそうになる。
「ッ!なんですか、この風の量は……ッ!!」
「メデューサのおねーさん……君が傷つくのは君のせいだからね」
カピラタはフィサリアを指さす。すると、風はフィサリア目掛けて迫ってきた。まるで刃物のような鋭い風にフィサリアは傷を負わされていく。
「ッ!……このままでは」
フィサリアは姿を消す。ぼうっとそれを見つめていたカピラタは暫くしてバタッとその場に倒れ込んだ。
「あっはは……大丈夫だよ。風くん。久しぶりに力使ったから疲れただけ。……早く行かないとね、きっとあの子が迷っているから」
♢♢♢
「ダメだ」
キロネックスは腕を降ろす。
「ダメだよ……皆が、あいつが、悲しむもん。」
「……キロちゃん……?……はは、あっはははは!!やめてくださいよキロちゃんッ!!キロちゃんはそんなんじゃないでしょう?…………残念です。あなたとはいい同士になれそうでしたのに。」
「私も残念。あんたとは友達になれないわ。」
「何故……ッ」
「だって、あんた、神様に愛されていないもの」
バルネシが手を挙げキロネックスを殴ろうとする直前、とてつもない風がバルネシを襲う。風が吹く方向に顔を向けるとそこに居たのは少年──カピラタだった。
「遅いよ」
「ごめんね」
キロネックスはバルネシの腕をつかみ電気を流しバルネシを痺れさせた。距離をとるバルネシをニヤニヤとしながらカピラタの隣に移動するキロネックス。
「まさか、逆転したなんて……思ってないですよね?」
「どういう意味?」
「フィサリアちゃん、いるんでしょう?」
「…………真っ直ぐ確実に目を合わせて言うのやめてもらえますか?」
木の影から現れたのはカピラタの前から姿を消したフィサリアだった。カピラタを視界にいれるなりビクッと肩を震わせた。頭にはてなマークを浮かべているあたり、カピラタはなぜフィサリアに怖がられているのは分かっていないようだ。
「さっ、これで平等です。」
「……やるしかないんだ」
キロネックスが拳を強く握る。カピラタも珍しく相手を睨んでいる。
「勝って……皆と帰るんだ」
四人が同時に地面を蹴った。
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