第8話
目を覚ますと目に広がったのは薄暗い天井だった。廃れた建物なのだろう。窓ガラスはあちこちに散らばり床も支えている柱も今壊れてしまいそうなほどきずついている。フォスターはキョロキョロと辺りを見回し、扉があることに気づく。ギィィと耳障りな音を立て扉を開ける。廊下にでると、隣の部屋の扉が空いてることに気づいた。そっと覗いてみると、フォスターは目を見開き、そして、悲しそうに眉を八の字にした。相手は後ろを振り向き、立ち上がりながら
「よぉ、久しぶりだな。……クソ弟」
「お兄ちゃん……」
不敵な笑みを浮かべる彼──ルシフェンは腰に手を当て、余裕な態度だ。
「へぇ、意外だな……お前まだ俺の事『お兄ちゃん』って呼ぶんだな」
「そうでもないですよ。お兄ちゃんに変わりはないただ……」
フォスターは武器の杖を持ち、ルシフェンは踏み出す準備をしている。
「私の敵になっただけのことですから」
その言葉を合図に二人の戦いが始まった。
♢♢♢
ユースティアが目覚めて約数十分。ユースティアの相手であるロウディアは木に体を委ね爆睡している。彼女が起きるまでユースティアはある程度の距離に座っている。相手が眠っているのだからこんな絶好のチャンスはないだろう。だが、ユースティアは正々堂々とした戦いが好きだ。動かない相手に一方的に殴り掛かるなど正義感の強い彼にはできなかった。暫くしてロウディアが目を覚ます。
「なぁ、どうして攻撃してこない?」
「だって、指示がないもの……私、無意味な戦いしない……」
その言葉にユースティアはカッチーンと来た。ロウディアになめられている、バカにされたと思ったのだ。ユースティアは挑発的に
「俺はお前に相手にされないほど弱いつもりはなかったんだかな」
同じくロウディアも頭にきた。言葉にでは無い、ユースティアの態度と言い方にムカついたのだ。ロウディアは立ち上がり水で鎌を造った。
「私だって……弱くない」
ユースティアも自分の武器である槍を手にし
「じゃあ、どっちが弱いか……試してみるか?犯罪者」
♢♢♢
フォスターはおされている。植物を操っても腕一本でルシフェンはいともたやすく薙ぎ払ってしまう。フォスターは魔法を駆使しているが相手は魔法はおろか、まだ片腕で応戦している。逃げるが勝ちかと思ったがそれは無理だろう。フォスターよりルシフェンの方が足が速いのだ。
「おいおい、さっきの威圧はどーしたよ。」
「くっ!!」
ルシフェンの回し蹴りを避けきれずに脇にくらってしまった。あまりの痛さにその場にうずくまる。
「……ちっ……つまんねーなオイッ!!」
「……ッ!」
「お前さ、いつからそんなんなったんだよ。……」
「……それ、……は、こちらの、……セリフ……です」
蹴られながらもフォスターは答えた。ルシフェンは冷たい目でフォスターを見下している。なんとか一方的な攻撃をやめさせなければと思うが、なかなかできない。隙を作ればこの建物から脱出し外に出ることが出来るならフォスターは有利になれる。だが、どうやって隙を作ればいいのだろうか。
「…………まじで、つまんねーよ。欠伸が出るくらいにな。」
思い蹴りがフォスターの腹に直撃した。唾液とともに血までも吹き出す。ルシフェンはフォスターの髪をわしずかみにし、無理矢理顔を上に向かせる。
「さぁ、おしまいにしようか」
♢♢♢
一方ユースティアもロウディアとの戦いに苦戦していた。ロウディアは水属性、ユースティアは光属性なのだが、不思議とこの森に光がささない。薄暗いのだ。自分で光をつくれればいいのだが、そんな事は無理だ。それにユースティアは対人派閥。つまり、魔法を得意とせず肉弾戦に特化しているのだ。だが、ロウディアに勝つためには魔法も使わなくてはいけないだろう。
「……魔法、使わないと、私には勝てない」
「……ッ!分かってるさッ!!」
今はなんとか技をしのげているがこれも長くは続かないだろう。困ったものだ。息も上がってきた、体にだって相手にやられた傷もある。だが、それは相手も同じこと。可能性は五分五分だ。
「…………だから、やだって……言ったんだ」
「?」
「私には……向いてないんだから、なのに、あいつらが……無理やり私を連れてきたりするから…………あぁ、なんか、……ムカついてきた」
ギロりとロウディアに睨まれた時、金縛りにあったかのように体が動かなかった。さっきまでとは何かが違う。あぁ、彼女も犯罪者なのだと納得できる。こんな禍々しいオーラを放つのだ。
「……やっぱり、魔法を使わないとダメか……。」
どうしたら良いのだろう。脳みそをフル回転させるがいい策が見つからない。そこでふと彼の姿が思いついた。フォスターなら、あいつと一緒なら、倒せるかもしれない。一か八か……
「なぁ!」
「……は?」
「フォスター知らねーか?」
「フォスター……?あぁ、あの傲慢野郎が廃墟に連れてったやつか…………………あっ」
「…………お前ばかじゃねーの」
だが、ラッキーとユースティアは自然と口角が上がる。ロウディアがバカで助かったと、心の中で思う。場所が分かった今、コイツを何とかして気をそらしてくれれば……
「…………はぁ、無理だ……やってらんない。」
「……?」
「なんか、……もう。いいや。」
──殺しちゃお。
ロウディアの水がユースティアの体を貫いた。
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