第5話
「という……ことが、あったんだ……」
全てを話し終えたアリマは不安いっぱいといったような表情だ。こんな話はベラベラと話す内容ではないし、だからといって永遠に隠し通せる話でもない。いつかは話さなくてはならないのだ。
「……でも、家が無くなって死体まであるのに、そんな火事の話見たことも聞いたこともないぞ」
「……なかったことにされたんだ。」
「え?」
「多分マリアだと思う。あいつ、家族自体……存在していた事すら揉み消した。だから、家族がこの世にいたと証明できるものはなにもない」
「……アリマ」
「私が……私がマリアの口車に乗せられたから。……家族を殺したのは私だ。」
膝の上で拳を強く握りブルブルと震え出す。拳にアリマの涙が滴る。かける言葉が見つからない。静かに泣くアリマはどこか弱々しく見えた。
「じゃあ!こうしよう!」
「キロ?」
「倒そうよ!犯罪者!!どーせアジト見つけるのが仕事なら必ず犯罪者達と遭遇するに決まってる!そん時にその、マリア?……を、ぶん殴ってやろ!」
「……」
「それで、アリマっちの家族が帰ってくるわけじゃないけど、でもぶん殴ったら、スッキリするかもよ!!」
「…………キロ、お前」
「アリマっちなんも悪くないよ!大丈夫!!それに」
「?」
キロネックスは「ぁ…………うっ」と目を泳がせ、恥ずかしそうに、
「…………家族じゃん。……私ら」
下を向いてしまって表情は伺えないがきっとそれがキロネックスの本心だと分かった。アリマは意外な言葉に驚く。話を変えようとするキロネックスに静かにありがとうと感謝した。
「あ、あの!アリマさんはどうしてラストアークに入ったんですか?」
カリンが前のめりで聞いてくる。アリマが答えようとすると、コエが垂直に手を挙げた。
「俺!!俺がアリマを誘ったんだ!!」
「へぇ、コエが?」
「あぁ!そんな不審そうな目で見るなユース。な!!アリマな!!」
「あぁ、まぁ、そうだ」
「アリマを路地裏で見つけて!行くとこないならラストアーク入れば?って言ったんだ!!つまり、アリマは俺の後輩なわけ。」
「へー、なのにパーティリーダーアリマちゃんじゃん。」
「うぐっ」
「まぁ、実力だろうな」
「はうっ」
「コエコエ実力で負けたんだ……だっさ」
「うわー。コエ女子にリーダー取られたんだぁ」
「こら、エルちゃん。ダメだよもっとオブラートに包んで」
「風が妥当だって言ってるよ」
「ぐはっ」
「まぁ、こいつについていけってムリだろ」
「ユースもだめですよ。皆の本音言ったらコエが傷つきますよ」
「大丈夫ですよ!…………リーダーは似合わないかもですが……」
「……コエくんにリーダーは似合わないよ」
「……お前ら容赦ないな!?なに?それは愛情なの!?それとも嫌味!?悪意あるの!?……いや、愛情だよな!?ほら、俺カッコイイし何でもできるから!?な!そうだよな!!なっ!?」
「うっせーなもう寝るから黙れよメッシュ」
「煩いよ、オッドアイ」
「黙れ自称」
「眠いからちょっと黙ってくださいね恥知らず」
「……ナルシスト静かにしてくれ」
「ねぇ、ほんとになんなの?もう泣く!!泣いてやる!!」
「勝手に泣けよ変態」
「…………」
♢♢♢
翌日出発の準備を済ませ、隣町を目指して歩き出す。今日中には着くはず女子もいるのでお風呂に二日入れないのは流石にきつい。ペースを早めることにした。暫く歩き目的地である隣町が見えてきた。宿屋に交渉し4つ部屋を借りることができた。流石ラストアークだ。名前を言っただけですぐに部屋を用意してくれた。改めて偉大さを感じた。
「ここで1つ提案。」
「……?シンが珍しい。どうした」
「俺……サリエラさんと同室がいい。」
「……………………ンンン!?」
「私は構わないぞ」
「……ンンン!?」
「やった。」
「アリマ一緒にどうだ?アリマとは話し合ってみたかったんだ」
「あぁ、構わない」
「アリマ空気よもうよ!?」
「は?」
「これで飴が食べれる」
「そうそう飴が…………ん?飴?」
「ダメだぞシン。食べ過ぎじゃないのか?」
「そう……?」
「……あぁ、そっか。そうだよね。当たり前だよね。」
「何を想像してたんだ」
「あ、あのぉ……私は」
「あぁ、カリンには向こうの巨人族用に行ってもらう。良かったなここが観光地で」
水が豊かなこの町は有名な観光地だ。巨人族も訪れるようで巨人族用の宿があるらしい。ほっとしたようにカリンは納得した。部屋を決め皆は宿へと向かう。タンッと足音が聞こえた。シンは音のした方へと顔を向けた。だが、そこには誰もいない。
「シン?行くぞ」
「……うん」
いるわけないか……そう呟いてシンは歩き出した。
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