第4話

──大丈夫だよ。アリマ……痛いのなんか一瞬なんだから。

燃え続ける家の前でマリアは私の右目に手を伸ばす。マリアは今と変わらない笑みを浮かべていた。

♢♢♢

「よし!皆!この俺についてこいッ!」

「アリマ何処へ行くんだ?」

「まずは近場から当たってみようと思う」

「エルエル頭に葉っぱついてるよ〜」

「わぁ、ありがとうキロっち〜」

「あ、シンさん。飴いりますか?」

「ッ!……ありがとう」

「風くん心配しすぎだよ!」

「なぁ、フォスター角取れてないか?」

「あぁ、脱皮の時期なんですよ」

「カリンちゃぁぁん。乗せてよ〜」

「だ、ダメですよ。ちゃんと自分で歩かないと……」

「皆酷くないッ!?」

コエの事は気にせずスタスタと歩いていくメンバー、コエも頬を膨らませながら付いていく。近場といっても場所は隣町。歩くには距離があるとスバルは文句を言う。それを聞いたアリマはスバルを殴った。

「〜ッ!いっ……てぇぇぇぇなぁぁッ!?何すんだよッ!」

「文句を言うな」

「はいはい、喧嘩しないでくださいね」

フォスターが仲裁に入る。今町で炎を出し合い喧嘩するわけにはいかない。なんとかスバルを宥め、また隣町を目指して歩き出す。

1日では着くわけがなく、今夜は野宿をすることになった。テントを準備し、火を起こす。

食事を済ませ、アリマが口を開く。

「……私の事だが、今日……話すって言ったよな」

皆はアリマへと視線を移す。アリマ本人は口をパクパクさせ、目が泳いでいる。クールなアリマは人の目を見て話す人だ。そんなアリマが挙動不審な態度を取るのは見たことがない。決心したようにアリマは皆の目を見てゆっくり微かに声を震わせながらも話した。

♢♢♢

とある街の近くの森。そこには立派な洋館が建っていた。洋館で産まれた赤と青の双子……アリマとマリアが遊んでいた。その二人を微笑ましく見る両親と執事やメイド。何不自由なく二人はすくすくと幸せに育った。数年後マリアはアリマにこう言った。

「アリマ……火……出してよ。この棒に」

「?……なんで、そんな何本も棒に火をつけなきゃいけないの?」

「遊ぶため」

「火遊びはお母さんとかお父さんとか大人がいないとダメだよ」

「大丈夫だよ。すぐ終わるもん」

「……怒られないかな」

「怒られないよ」

恐る恐る棒に火を灯す。マリアは全てに火がともされたことを確認するとそのまま棒を家へと投げた。すぐに家は炎で覆われた。家からは悲鳴が聞こえる。アリマは突然の出来事に呆然としていた。ハッとしてすぐ様マリアに駆け寄り

「ねぇ!?なんで!?なんでこんな……ッ!は、早く消さなきゃ!家にはみんながいるんだよ!?お母さんやお父さんがいるんだよ!?執事さんやメイドさんだって!?……ねぇ!?マリアの水で消してよ!!ねぇ!!早くしてよ!皆が死んじゃうよ!!!」

「ねぇ、アリマ」

「……?」

「私が放火したのは、私の水で消すためでも皆を助けるためでもないよ。……その逆、殺すために放火したの」

「……なん、……で」

「うーん。なんとなく……で片付けたいけど、アリマが理由を求めるなら理由をつけてあげる。……親に興味なくなったんだよね。だから、捨てるの。お母さんだってよく言ってたじゃん。要らなくなった玩具は捨てなさいって……だから、捨てたの。」

「そん、な……」

「でも、アリマも共犯だよ?」

「えっ」

「だってこの火……アリマのじゃん!!」

目を見開く。マリアは嘘を言っていないこの家を家族を燃やしているのはアリマの火だ。アリマは腰が抜け、その場に尻餅をついた。マリアはニヤリと笑い

「今のアリマの目……すっごい綺麗……大丈夫だよ。アリマ……痛いのなんか一瞬なんだから」

アリマの右目に手を伸ばし、そのままアリマの目を引きちぎった。想像を絶する痛みにアリマは発狂し、右目を押さえ、その場に蹲った。マリアはうっとりとした表情でアリマの右目を見つめた。

「あっ、そうだー。アリマとお揃いにしよ!!アリマは右目だから、私は左目だね」

躊躇なくマリアは自分の左目を抉りとった。

「あっはは!痛いねこれ〜あー、おっかしい…じゃあねアリマ」

「……どこ、いくの……」

「ん?ここにいたってしょうがないじゃん?だから、私は違う街にいくよ。」

手を左右に振りマリアは姿を消した。

♢♢♢

廃墟ビル積み重なった死体に座るマリアは月を見ていた。

「昔思い出すな〜」

「なぁにを、思い出してるの?」

「ひのわっち……あれ?みんなもいるじゃん」

「いくよ、まりちゃん」

そこにはマリア含め12人の犯罪者がいた。

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