第2話


「はい、いっちょあがり」

「今日は3人も捕まえちゃったね!」

「風が今日はやけに多いって言ってるよ!」

ルアル、エル、カピラタは目撃情報を元に辺りを探していると犯罪者を3人も捕まえた。先日サリエラが言っていた犯罪者の優劣が付いているという話はルアルは半信半疑だった。だが、これは本当かもしれない。

エルとカピラタは難しい顔をするルアルを見て、不思議そうな顔をする。

まぁ、考えたって分からない。どうせ明日には調査に行くのだから、その時考えればいい。

「嫌な予感が、当たらなければいいけど」

♢♢♢

「おかえり」

「ただいまアリマさん」

「ただいまー!!」

「ただいまー!!」

ギルドに戻るとアリマ以外のパーティーメンバーの姿が見られなかった。顔に出ていたのかアリマは「みんなは仕事だ」と付け足した。

「アリマっちだけ行かなかったの??」

「あぁ、仕事の内容は魔獣の駆除。私がいなくても問題は無い。それに、ちょっと気になることがあったからな。」

「気になること……?」

「いや、私個人の問題だ。だからお前らが気にする事はない」

いつもと変わらない声色だが、どこか一線を引かれたような感覚がした。なにも聞かないでくれと言いたげな背中を見て、3人は口を噤む。

「お前ら、明日の準備をしろ。」

「「はーい!!」」

自室へと走り去るエルとカピラタを見送り、アリマをじっと心配そうに見つめるルアルに「大丈夫だ」と告げ、肩を叩く。

「ちょっと出かけてくる。」

「あ、うん。気をつけて」

アリマとすれ違いに魔獣退治の仕事に行っていたメンバーが帰ってきた。ユースティアが

「アリマのやつ、どこへ行く気だ?」

「さぁね。俺知らな〜い」

「アリマさんだって女の子ですし、明日の準備じゃないですかね?ほら、服とか」

「アリマっちがぁ〜?うわぁ、想像出来ね〜」

「……俺、ちょっと行ってくる。」

「ちょ!?コエコエ〜!?」

アリマの後を追いかけるコエの表情は真剣だった。昔ながらの付き合いであるアリマとコエは他のメンバーには教えていない二人の秘密があるようだ。いくらパーティーメンバーといえど言えないことはある。それは二人に限ったことではない。それをわかった上で皆は追求しない。いつか自らの口で言える日を言ってくれる日を信じている。

♢♢♢

「アーリマッ!!」

「……なんだ、コエか」

「なんだとはなんだ!せっかく心配してこの俺が来てあげたのに!」

「別に心配して来てくれなんて言ってないだろ。」

「まーた、そんなこと言って本当にアリマは」

「可愛いよね」

聞き慣れない声がした。声がした場所に目を向けると裏路地からアリマと瓜二つの少女が現れた。

「あ、アリマ…………?」

「違う違う。私はアリマじゃないよ。ほら私の髪は青色。それに私は水属性でアリマは火属性。服だって真反対で」

「なんでいるッ!!!」

少女の話を遮り怒鳴り声をあげるアリマにコエは驚く。今にも火がメラメラと燃え上がってしまいそうな怒り。少女を睨みつけるアリマとそんなアリマを見てニコニコと笑っている少女。コエは状況を理解できない。いや、理解するための情報が少ない。彼女は誰だ。何故アリマはそんなに警戒する。

「久しぶりだね、アリマ」

「ッ!!」

「怒んないでよ。やだなぁもう……それより、君がコエくん?」

「えっと、」

「私はマリア。……アリマの双子の妹で、犯罪者だよ〜」

にこやかにマリアはまるで普通の自己紹介をする。だが、マリアの発言にコエは目を見開く。

今、彼女はなんと言った……?犯罪者……。アリマの双子の妹……じゃあ、こいつが。

「そう」

コエの心を見透かしたように返事をするマリア。彼女の気配はゾッとするものがある。冷や汗が止まらない。アリマはずっと睨みつけている。手が出せないのだ。彼女には隙がない。マリアはそんな二人をよそに言葉をつむぎ続ける。

「私だよ…?アリマの右目を義眼にした張本人。…………アリマの幸せを奪った張本人ッ!!」

あっははっと彼女は狂ったように笑った。


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