LASTArk

茜称

第1話


魔法が使える世界。人間以外の生物と暮らしている世の中。犯罪は耐えることは無い_______________


「はぁ……ッはぁ」

「観念したか……?」

「ッ!」

「おっと!いかせないよ」

「ッ!き、貴様らぁぁぁぁぁぁぁッ!!」

「指名手配犯ザランツだな。私はラストアーク所属アリマ」

「同じくラストアーク所属スバル=テール」

「なっ……!ら、ラスト、アーク……だと…ッ!?…」

「さぁ、大人しくしてもらおうか。」

♢♢♢

「お疲れ様アリマ、スバル」

オッドアイの少年…コエは腰掛けていた岩から降りると拍手しながらアリマ達がいる方へと歩いてくる。

「コエ、かすり傷だが一応頼む」

「了解」

「あれあれ〜??あんな雑魚に傷負わされたの……?……ダッセー」

「うるさいぞそのうさ耳燃やしてやろうか?」

「はぁ!?うさ耳なんかでてなっ…………あ、やべ」

アリマの挑発に引っかかったスバルの髪には男らしい体格には似合わないうさ耳が生えていた。それをスバルは慌てて両手で隠す。どうやら恥ずかしいようだ。

「とりあえず傷見せて」

傷を負った右足を見せるとコエはその傷に手を添える。

「はい、おしまい」

「相変わらずコエくんの治癒魔法は便利だよね〜」

「ふっ。だろ?さすが俺!自分でも認めよう俺すごい!!」

「はいはい、ナルシストかっこいいかっこいい」

「ホントのことだぞ……?」

二人が茶番をしている間にアリマはスタスタとギルドに戻るため歩き出していた。二人も慌ててアリマの方へ走る。

「他に仕事は?」

「ないはずだ。」

「やった〜。久々にゆっくり出来る〜」

町の中心部にくるとやはり人が多くなる。その一角にある大きくそびえ立つ城。そこが、アリマ達が所属するラストアークのアジトである。重苦しい扉を開けると、町にも負けず劣らず賑やかな声がしていた。人と人との間を器用にすり抜けこちらにやってくる青髪の少女。

「……ただいま。サリエラ」

「あぁ、おかえり。どうだった?」

「な〜にも。つまんない仕事だった。」

そう言ってスバルは欠伸をする。それを聞いたサリエラは淡々とした声で言う。

「そうか。まぁ、あまり足しにならない金額だし、見た目からして大した犯罪者でもない。」

「……それより、サリーはなんで駆け寄ってきたの?いつもなら自分の席にいるのに……はっ!!ま、まさか……俺のオーラがサリーを引き寄せ」

「刺すぞ」

「ごめんなさい」

「という茶番をしている場合じゃない。早く会議室に来てくれ。……仕事だ。」

さっきよりも真剣な顔つきのサリエラ。アリマ達三人はよく分かっていないのか互いに顔を見合わせる。サリエラの後ろを付いていくと奥にある会議室に入る。そこにはパーティーメンバー全員が揃っていた。

「……珍しいな、わざわざ全員なんて」

「てか、仕事あるじゃん。アリマちゃん嘘ついたね〜」

「別に嘘をついたわけじゃない」

「まぁまぁ、とりあえず座りましょう?ね?」

睨み合う二人を仲裁したのは獣人族のフォスター。

「……で?なんで集められたの?」

ソファに腕を組みながら腰掛けているのはユースティア。

「なんか緊急らしいじゃん?大丈夫なの?」

「風が内容によっては危ないかもって言ってるよ!!」

金髪の長髪を指でいじりながらサリエラに問うキロネックス。彼女の疑問に答えた少年カピラタ。

「んー、危ない仕事かぁ。どんなのだろうね!!!!」

「あんまりはしゃぐ事じゃないとは思うけど」

足をバタバタさせる少女エルをにこやかに見る少年ルアル。

「でも、珍しくないですか?緊急の仕事って……ていうか、私皆さんのお役に立てるか……」

青い顔をする巨人族の少女カリン。中には入れないので窓から顔を覗かせている。

「……飴が、ない」

シュンと耳を垂れさせる獣人族の少年シン。

計12人がアリマをリーダーとするパーティーだ。

「それで?仕事の内容は?」

「……最近妙に指名手配犯が出没してると思わないか?」

「……あ〜言われてみればそーかもね〜」

「どうも、犯罪者の中でも優劣がついて、勝負に負けたものは死ぬか、あるいは私らみたいなギルドに捕まりやすい所に隔離されるらしい。」

「なにそれ?つまり、俺らが捕まえた犯罪者達って皆その勝負に負けて隔離された奴らってこと?」

「あぁ、最近捕まえた犯罪者に吐かせた情報だ。間違ってはないと思うぞ……それにそんな事が行われた時期と犯罪者達が出没しやすくなった時期はぴったりと重なる。捕まりやすくなったのはいいが、犯罪者達の間で一体何があったんだ。」

「知らね〜し、ど〜でもいい」

「スバル!」

「なんだよ。」

「うさ耳…………出てるよ」

「そんな真剣な声色で言うセリフじゃねーだろエルちゃん」

そう言いながらうさ耳を隠すスバル。苦笑いしながらも気を取り直し、話を進めるサリエラ。

「それで、緊急の仕事とはその行為を調べること。犯罪者のアジトも知ることが出来る絶好のチャンス……と、ギルド長に言われた。皆大丈夫か?」

「大丈夫ッ!……てか、今のサリー、アリマよりリーダーっぽ」

「燃やすぞ」

「ごめんなさい」

♢♢♢


暗い空に怪しげに光る満月。少女は笑う。

「早くおいでよ。…………ラストアークさん」

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