第15話 老い

誰でもそうですが、歳は取ります。

私がキックボクシングやってるZeeeええ~ってこんなとこでイキがっててもも、もう38歳です。



やっぱ歳を取ると弱くなりますよ。

歳をとっても技術的なものは上手くなりますが、やっぱり練習でこなせるラウンド数が減ってきて、

今はもう、経験値だけで他人様の相手をしている状態です。


あれは30過ぎたあたりですかね、

サンドバッグをボコボコ叩いていると、

「あ~もうこの辺でええわ」みたいな気分になってきて、練習をやめてしまいます。

20代の頃はそんな事はなかったんですよ。

すごく激しく練習して疲れても、

「ワイはやったる!何がナンでもやったるんじゃああああ!」

とか自分を奮い立たせて気合と根性で乗り切ったものですが、

それができなくなりました。


まぁ、30過ぎて太ってきても、体は問題なく動くんですよ。

ですが、気持ちが体に追い付きません。

マススパーはするので小手先の技術と経験だけは向上しますが。

実際、右ストレートのカウンターができるようになったのは36歳の時です。

それからはイケイケパンチャー相手でもすごくやり易くなりました。

でも気持ちが追い付きません。

そういえば「新宿赤マント」の椎名誠って昔に比べて丸くなったと思います。


あと、30代前半にBジムでトレーナーしていた時の事ですが、

アラフォーの会員さんとおしゃべりしてて、ふと気がつきました。

僕ら血圧とか体脂肪率とか、食事の事とか、健康の話ばかりしているんですよ。


若い頃は「オレ スパーリングで○○さんに勝ったぜぇえ!」とか

腕立て100回こなしたぜ!とか、そういう事を語るもんですが、

気付いて愕然としましたね。

その時ほど

「ああ、俺って年老いたんだんなぁ」

って実感した時はありません。

もう若くはないから…って口では言ってても、全然わかってなかったんですね、それまで。


20代前半の頃は、私には何も無くて、お金も社会的地位も、友達もいなくて、

ジムだけが私の居場所で土曜日とかみんながフィーバーしてる夜の12時に一人でサンドバッグ相手に練習し、

私を排除しようとした世界に復讐したくて、

しゃかりきに練習したものですが、あれは一体何だったのでしょう。


分からないですね。


30代でプロ格闘家を続けている人なんて、本当に尊敬します。

全日本キック・元ライト級王者の酒井秀信選手なんて

45歳になった今でも階級を上げて試合しています。

そして、かつてのトリッキーな動きに加え、老獪さが増し、

まだ一線級の実力を保持しています。


今、ナイスミドルとかのおやじファイトとか熱いですね。

僕も一回くらい出場してみたいです。

かつてバンタム級(53.52㎏)の嫌がらせ野郎と ジ ム の 中 で 異名を取ったこの私が。

今は体重82㎏になりましたが。

はっはっは。

努力なしに30㎏近い増量に成功しましてライトヘビー級に転向しました。


私の事を何と言っても構わないが、

デブって言ったら頃すよキミィ!

            O山倍達(談)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る