第8話
俺は、日光の眩しさに目を奪われる。目の前が真っ白だ。
目がゆっくりと状況になれて行く。
俺が街を見て最初に発した言葉はこれだった。
「すげぇ。」
ただそれだけだった。ゲームに出て来るよな金髪イケメンとかだったらもっと気の利いた言葉を言えたのかもしれないが、俺にとってはそれ以外の言葉は必要なくただ、すごい。その一言だったのだ。
街は真っ白で所々家によって赤や緑、青と言った美しい装飾が施されており、街の真ん中だろうか、そこには天をも突き刺すような高さの塔が立っており、その塔に向かって家が建てられ、道が作られているようだった。
今思えば、俺がこの時目を奪われたのは日光の眩しさではなくこの美しい白い街並みだったのかもしれない。
「あんたねぇ、こんなに美しい街並みを見てもっと感想はないの?」
ルナは呆れ顔で笑いながら茶化して来るが、ニヤニヤしていることから、俺の驚き顔を見て内心は満足なのだろう。
「いや!俺、今めっちゃ異世界って感じ!」
自分でも何を言ってるのか正直わからないがあの塔を見てテンションが上がらない奴なんていないだろう。
「うぐ!」
俺が叫びながら小躍りしているとルナにパーカーのフードを杖で引っ掛けられた。
「コハル、気持ちはわかるけど、もうちょっと落ち着きなさい。ご近所さんからの私の印象が悪くなるじゃない。」
たしかにさっきから周りの人間や、ドラゴンが俺のことを見ないようにして通り過ぎて行ってるみたいだ。
「ドラゴン!?」
そこにいたのは、顔が完璧に竜。というよりはトカゲだろうか。だった。
ドラゴンというか、服を着ているし二足歩行だし正確にはリザードマンとかいうやつなのだろうか。
そのリザードマンは俺の声に驚き、ビクッ!としていそいそと通り過ぎて行ってしまった。
「コハル!あんたほんといい加減にしなさいよ!?次うるさくしたら喋らないようにするから。」
「わ、悪かったよ。つい、ついな。」
ルナは俺の顔を鬼の形相で睨んでいる。あれは本気の目だ...
というか、その顔の方が近所の評判落ちそうだが。
「もう、仕方ないわね。ここからギルドまではちょっと時間かかるし移動中にこの世界のこと、ちょっとでも教えてあげるわ。感謝しなさい!」
人に物を教えることはあまりないのか、ルナは満面の笑みで笑った。
ちなみに、ルナの髪は黒だと思っていたが太陽に照らされて灰色に透き通り、見る角度によって髪の色が七色に変わるのではないかというほどに美しかった。
その時俺は、俺は何を思ったんだっけ...?
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