第5話

「それで、どうやって俺の名前を思い出させるんだ?」


本当にどうするつもりだ?この魔女


記憶なんてそんなすぐに取り戻せるようなもんじゃないだろうし、頭を叩くとか言われないだろうな...


「失礼な事考えてるでしょ!顔に出てるわよ!」


「か、か、考えてねぇよ!」


この魔女、バカそうなのに結構勘がいいな...


「そ、まぁそれならいいけど。それで、あんたの名前を取り戻す方法だけど、私の固有魔法を使うわ。」


「固有魔法?」


「知らないだろうから、私が特別に教えてあげる。固有魔法っていうのはね、本人以外がどれだけ努力したり覚えたりしても使えない、言わば自分専用の魔法って感じね。」


「たまに似たような能力の人間がいたり、両親の固有魔法が治癒の魔法だったりすると子供も固有魔法が治癒の魔法になったりもするわ。そのせいで結婚相手を決められたりする人も少なくないらしいわね。」


「へー、視力とかみたいなもんなんだな。」


「例えが酷いけど、認識としてはそれでOKよ。」


だって、そう思ったんだもん。


「で?結局あんたの固有魔法はなんなんだ?」


「ふっふっふ、聞いて驚きなさい!私の固有魔法は【相手の記憶を本にする能力】よ!」


魔女が椅子の上に立ち、ドヤ顔で叫んだ。


「へ、へ〜」


「何よ!その返事!ショボいと思ったんでしょ!そうなのね!そうに違いないわ!見てなさい!あんたをアッと驚かせてやるんだから!」


やっぱりこの魔女は勘が鋭いようだ...


「じゃあ早速やってやるわ!覚悟しなさい!」


いきなり魔女が一冊の真っ白な本を開いて呪文のようなものを詠唱しだす。


「え?それ、痛い?ちょ、やめて!」


俺のストップを聞かずに魔女が詠唱を続ける。


「本よ!この男の記憶を汝の体に書き示せ!」


俺の周りにできていた赤く光る魔法陣と女の周りに青く光る魔法陣が輝きだし、魔女の持っていた本に吸い込まれていく。


「リメンバー!ライト!」


光が霧散し魔女の持っていた本にはギッシリと文字が書かれていた。


「できたわ、これがあなたの記憶よ!」


「これが...魔法...」


俺はその時、ただ驚く事しかできなかった。

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