「大人になった」と感じた瞬間

 これはね、忘れられないんですよ。

 ああ、私、もう大人なんだ、と思った瞬間。


 それは私が十九歳かな、二十歳かな、どっちかだった大学生の頃。

 電車に乗ってたら、前に立ってたおっさんがスポーツ新聞を読んでたんですよ。

 スポーツ新聞ってほら、風俗情報とかあるじゃん。

 その風俗情報に乗ってた風俗情報がね。


 私より年下だったの!


 確かに十八歳から風俗のお仕事できるし、私、十八歳より年上だったけどね。

 それを見た瞬間に、「ああ、私、もう大人なんだ」って思いましたよ。だって風俗の仕事ができるんだよ、年齢的に。びっくりだったよ。


 あれに勝るびっくりの瞬間は、まだそんなになかった気がします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る