第2話

太郎くんは絹ごし豆腐の子の家まで付けることにしました。危うく見つかりそうなときは他人の家に隠れたり電柱に隠れたりと忙しかったのです。


そして、太郎くんは絹ごし豆腐ちゃんの家を特定しました。表札には七尾とありました。門構えはたいそう貧弱で、それなのに生えている金木犀の匂いが不思議でした。小粒の花をむしって鼻にあてると、もはや匂いは消失していました。


鍵が開いたままだったため、七尾さんのお宅に上がるとリビングにいた絹ごし豆腐ちゃんが大変驚く姿が目に入りました。太郎くんは気がつきませんでしたが、人のおうちにお呼ばれもしていないのに上がると犯罪だったのです。狼狽える絹ごし豆腐ちゃんがせんせぇにでんわすると言うものですから、ごめん君が大好きやからつい、と大声で言い訳しました。絹ごし豆腐ちゃんは大変喜びました。大好きと言われたのは初めてだったのです。絹ごし豆腐ちゃんは毎朝鏡を見ては色の薄い唇やカサカサの髪や伸びない背を気にしていたのです。当時、校区内に存在するスポーツクラブは野球と水泳のみで結果的に強制される子や、自発的に動きたい子たちは水泳をはじめたのです。絹ごし豆腐ちゃんの悩みと水泳が繋がっていると太郎くんが推定できたのは彼女が亡くなってから五年の月日が流れた時でした。とある漫画を読んでいると塩素の水で髪が脱色することを知りました。あの時悩みに寄り添えばヤれたのにと春本片手に自涜する際に、その知識と思考が手をとって思い付いたのです。俺はそんな奴やったか。


絹ごし豆腐ちゃんは容姿にも大きな欠陥を持っていましたが太郎くんには見えませんでした。 木綿より絹ごし豆腐の方が舌触りが良いように他のクラスの女子より彼女を見ている方がお腹が空くのです。空腹を感じると一日三度の最高の快楽が待っています。それと同じでした。


絹ごし豆腐ちゃんと登校するようになって暫くたちました。桜が降って春が終わり豪雨が降って夏が終わり紅葉が降って秋が終わり雪が降って冬が終わり、小学生であることに終わりが近づいたのです。絹ごし豆腐ちゃんが太郎くんの腕をつかんでいわく、お姉ちゃんが部屋でしていた事をしたいとのことでした。お姉ちゃんは歳が離れてて大学生だったのです。盛ってたのでしょうか。彼女の姉は盛りに盛って週たびに違う陰茎をほうばる、かつて言われた肉食系女子だったのです。たまに絹ごし豆腐ちゃんにお小遣いをあげる良いお姉ちゃんでした。

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