第3話 この人気教師と?

「戸塚くーん。戸塚湊くーん!?」

大声で担任の先生に呼ばれてふと前を向くと前方には先生が少し遠くに見えるだけ。他の生徒はもう用を済ませたようだ。

「すみません、遅れてしまって。」

そう言うと先生は微笑みながら、

「まずは挨拶からでしょ?おはようっ!」

と元気いっぱいで怒られる気は全くしない。もはやサービスタイムなのではないか?そんなことを考えながら僕は、

「おはようございます、秋田先生。今日は遅れてしまって申し訳ございません。次からは気をつけます。」

とありふれた定型文を先生にぶつける。すると、先生はタッチパネルを操作し、AIが判断した遅刻した生徒の名前と日時のところにある確認欄、チェックボックスをタップしながら、

「もう3回目だよ?次遅刻したらリーチになっちゃう。ということで、次やっちゃったら先生とふたりで放課後掃除。ね?」

とまるで放課後掃除をさせようとしているのではと疑ってしまう。男子生徒にこれは罰ではない。アメとムチではアメの方だ。

職員室の先生達からの、僕に対する嫉妬の目が痛い。秋田先生は教師陣ではトップともいえる可愛い先生だ。距離感も近く、男子はもちろん女子からも人気がある先生だ。その先生に当たれるとは幸運すぎる。この学校、柳ノ木高校は担任が持ち上がる。つまり、3年間同じである(特例を除く)。よって外れ教師はいないが、当たりなら悪いことはまずない。勉強面は一教科毎に先生が割り当てられているので、担任はコミュニケーション能力と性格や外見(?)が大事なのだ。

「はい。学生カード取り上げはキツいので頑張ります。」

と先生に返答すると、満足げな先生は、

「すぐ授業よ。友達も待っていることだし、早く教室にいきなさい。」

とエレベーターを指さしながら、上へとジェスチャーをする。僕は指示通りにエレベーターの前に立つとドアが開き、乗った瞬間にすぐ閉まり、僕を2階へと運ぶ。秋田先生が操作をしてくださっていた。

今回はたまたま遅刻係が秋田先生だったから良かったが、一週間に二人ずつの週替わり制のためいつもは違う。

先生と二人っきりで話したのはこれが初めてくらいなものだったが、いつもと変わらずほんわかと包み込むタイプの優しさを感じて安心した。

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