1章 別人_2
「そのような心配はご無用でございましょう。
そう東宮に直言したのは、目を
生まれを細かに記すのは、
自信に満ちた藤大納言の言葉は、占い調べなければ生まれも確かにはわからない
「良くご存じだ、大納言の姫君。陰陽寮の働きで、東宮妃候補は
許可したとおり直言を意に
藤大納言が東宮と
出身地である
「ふふふ。要件は
「今一度、話を
ただ同じ日同じ時刻に生まれただけでは、決して前東宮妃の生まれ変わりとは認定されない要件。今上は東宮妃を迎えたくないのではないかとさえ言われた。
「生まれた日時以外で、これらの要件が五つ以上当てはまる者が、今ここにいるそなたたちだ」
「東宮妃候補の選出は前例のない試み。前東宮妃の生まれ変わりの選定には、時間を要する。そのため東宮妃候補たちにはこの内裏での居住が、特例として許されることとなっている」
母を
そんな若君が長姫の初恋となることは、必然でもあった。突然の別れから四年、東宮妃候補という
だからこそ若君との別れ際、将来を約束したかつての思いを捨てずにいた己に、神仏が救いの手を差し
「それなのに…………っ」
話を続ける東宮は、高貴な生まれにしては親しみを感じるほどに優しく、相対する者を
確かに
似てはいるが、あくまで似ているだけの別人なのだ。
「内裏での暮らしに
長姫が無意識に睨んでいても、東宮は気づかないふりで話を続ける。
東宮のその姿は、まるで己の務めのみに
「本来内裏は
今東宮妃候補が集められているのは、北東に位置する
室内には障子に
「これより西には
一度
「また、知ってのとおり火災によって多くの死者が出た。
妖という言葉に、摂津は大きく
内裏は今、再建
現在、内裏に住まうのは東宮と今日
「東宮さまのお言葉、しかと胸に刻みましてございます。──もし、人手がご入り用でしたら、我が家へいつでもお声かけくださいますよう」
藤大納言が、己の家こそ
「わ、我が家は良い木材を産する山を持っております。東宮さまのご命令とあれば、いつでもご用立てくださいな」
「む、それなら私は国許から
ようやく
「それほどに私を案じてくれることを、
東宮として申し分ない対応を見せられていた長姫は、ふと、東宮の従者に
どうして若君でない者に、若君の従者がつき従っているのか。長姫が目を疑う間に、東宮は
「来たる
話を聞いていた東宮妃候補は、揃って息を
「そこで東宮妃候補の姫君たちには、前東宮妃が得意としていた四つの楽器を演奏していただく。曲目は後日。必要な道具があるなら用意させよう」
「まぁ…………っ」
今上の宴に招かれるという身に余る光栄に、藤大納言でさえ頰を上気させていた。
東宮妃候補が喜ぶ姿を
「東宮妃となる者を選ぶにあたって、私の意向よりも今上陛下のお心に重きが置かれることを覚えておいてほしい。皆、慣れない
選ぶのは今上であると言われては、長姫には白々しい建前にしか聞こえなかった。
「それでは今より、半刻の後、案内に従い与えられた居室へと移動していただこう。それまでの間は、神仏の導きで出会った者同士、どうか交友を深めていただきたい」
言うや、従者は御簾を押し上げ東宮の退出を手伝う。
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