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▷いまをときめくバーチャルYouTuber真字野マオ

▷今夜は彼女の、その実態に迫っていこうと思う


トテトテトテトテトテトテテッテーン♪


▷真字野マオの朝は早い

▷14時25分ごろ、彼女はおもむろに起床する

▷やはり、早起きは大変?


「んー、どうですかねー。我的には、別に早起きって感じはしなくてー、よく寝たなーって。でも、そりゃあオフトンでもっと丸くなっていたいですよ、まあ、慣れですかね、慣れ」


▷すべては慣れだと語るマオさん

▷この世界に来たばかりは、苦労されたのだろうか


「初めは右も左もわかんなくて、我もこまったー! って感じだったんですけど……クマッター! って感じだったんですけど」


▷なぜ言い直したのですか?


「か、かわいいから! っていうか、そんなことよりー! ちょっと、聞いて聞いて! 我ねー、すごいんですよ! ニートニア出身の我なのに、この世界に適応するまであっという間──」


▷マオさんはそのあとも30分ほど話し続けた。

▷朝食はなにを?


「ヌードル! やっぱりこれを食べると、一日が始まるなーって! え? ほかには? カレー焼きそばのカレーソースなしとか。ブタメン梅ジャムトッピングとか」


▷そもそも、どうして現代日本へ?


「ふっふっふ、それは語るも涙、語り続けるも涙の紆余曲折が──」


▷あ、じゃあいいです


「待って! ごめーん! 我、調子乗った! 短めにするから、ちゃんとするから、聞いてください……!」


▷手短にお願いします


「うん。えっと、事の起こりはニートニアでのこと。我と勇者は宿命の敵同士で、これまでも何度となく戦ってきたのですよ。で、負けたほうはレベル1に戻って、ステータスが最低値からやり直すわけです」


▷それで、世界の趨勢が決まっていた?


「そうそう。でもなー、ときどき戦うのが面倒で、相手を異世界に封印したりするわけです。永遠の戦いは、我つらい、勇者もつらい。結果、我は今回勇者に負けて、ほとんどのスキルを封じられたうえで、現代日本にやってきたわけです」


▷なぜ、バーチューバーを目指した?


「これ、オフレコになるのですけど、我は別にバーチューバーがやりたかったわけではなくてですねぇ……あのブ男──勇者が我に、バーチューバー以外の職業につけない呪いと、チャンネル登録者数1億人超えないとニートニアに帰れない呪いをかけやがってですねぇ……いつか胸鎖乳突筋を断裂させてやろうと思っているのですが」


▷ぶっちゃけ帰りたい?


「帰りたいよ! 当たり前じゃないですか、あなた頭おかしいんですか!? おうちに帰って一切労働せずに適当に魔法で文明滅ぼしているほうが楽に決まってるでしょ!? なんで我がこんな大変な苦労しなくちゃいけな──」


▷魔王という役柄について、魔王さんはこのあとも熱く語ってくれた

▷45分後、呼吸と身だしなみを整えたマオさん

▷どうやら収録の時間のようだ

▷バーチューバーとして、どのような想いで収録に臨むのか、聞いてみた


「みんなを笑顔にすることです! おまえも笑顔にしてやろうか! という気持ちですね」


▷バーチューバーという職業は、担い手過多が心配されています

▷どう思われますか


「やりたい人がいっぱいいることは、いいことだと思うのですよ。ニートニアでは、危険と儲けのなさから冒険者不足とか問題でしたし。バーチューバーは技術職ですけど、アイディア次第では、我みたいになんとかなるわけですし。たぶん、気持ちの問題じゃないかなーって」


▷大事なことは気持ち。彼女はその言葉を繰り返す


「ある方に言ってもらったのですよ、誰も馬鹿にしない、みんなが気持ちよく見れる動画を作れって。どんなに需要がなくてもいいから、手を抜くなって。だから我、頑張ろうって、そう思えるんです」


▷そう言って、彼女は収録に向かった


▷昼食の時間、再び質問してみた

▷現在時刻は?


「22時過ぎですね」


▷食事内容は?


「えっと……ヌードル、ですね」


▷もうひとつ質問いいかな

▷最近、体形変わった?


「一思いに太ったっていえばいいじゃないですか!? なんですかその持って回った言い方!? 我、我とてなー! 我だってその、なんか変な気の回しかたされたら傷つくんですよ? 我のつらみがマックスハートですわ!」


▷キャラが崩壊していますが、大丈夫ですか?


「心配するところそこじゃないですよね!? ええ、そうですよ、我、太りましたとも! ちょっとこの衣装の胸のあたりが窮屈になりました! お尻のほうもピッチリです……! でもウエスト変わってないもん! 我のウエスト細いままだもん……!!」


▷それでは最後になりましたが


「勝手に〆ようとしてる!? え? これ、そんな自由なあれなの!? 我の意思とか全無視なの!?」


▷最後になりましたが、これからのバーチューバーとしての目標を教えてください

▷そう訊ねると、マオさんは神妙な面持ちになり──


「なってないんですけどねー! 勝手にモノローグ入れちゃってさー! ご、ごほん……そうですね、我はともかくおうちに帰りたいわけです。でも、それと同じぐらい、視聴者の皆さんに笑顔になってほしいわけです。なので、頑張ります。まだまだ駆け出しですが、目指せチャンネル登録者数1億! このチャンネルを見ているそこの定命の者! 登録は忘れずにな!」


▷弾けるような笑顔で笑うマオさん

▷バーチャルYouTuber真字野マオの挑戦は、まだ始まったばかりだ──


§§


「────はい、いただきました、カットです」

「……にゃむろP」

「なんですか」

「このネタ、疲れる……」

「安心してください。私も疲れます」


 このあと編集で地獄を見るのは自分だと、口には出さないにゃむろPだった。

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