登録人数:1014 Twitterはじめました

『140文字の制限もなんのその! 我は異世界ニートニアの魔王にしてバーチャルユーチューバー真字野マオ! 今日からTwitterでも、動画や近況について告知していくから、楽しみにしてくれると嬉しいです! 定命の者たちー! 我、ここにいるよー! #真字野マオ #バーチャルYouTuber』


 これが、魔王がTwitterで行った、最初の呟きだった。


「で、これになんの意味があるんです?」

「これから意味ができてくるんですよ、魔王さん」

「???」

「Twitterでは、チャンネル登録者と同じようにアカウントがフォローされます。フォロワーが広がれば、そのフォロワーさんを通じて、ほかのフォロワーさんとも繋がれます。Twitterは、そう言ったことを想定して作られたものではありませんが、一定の広告能力を有します」

「あ! わかった! あれでしょ、あの、団地妻の井戸端会議! 口コミネットワーク! ママさんネットワークはFBIよりすごいって清涼院流水が言ってた」

「……団地妻は不要だと思いますが、おおむねそのとおりです。本当に言ってましたか? 本当に?」


(まったく、にゃむろんは疑り深いなぁ……)


 妙に追及してくるにゃむろPに辟易しつつ、魔王はいろいろなことをつぶやいてみる。


「ところで魔王さん、基本的に自分からはフォローしないでください」

「え? なんでさ?」

「完全にダメという訳ではありませんが……そのアカウントは、バーチューバー真字野マオの公式アカウントです。あなた個人の、プライベートなアカウントではありません。つまり、図らずもあなたが日ごろから言っていると事が、試されるわけです」


(我が言っていること……? ヌードル……)


「違います。清純であることです。あるいは清潔であること。バーチューバー同士であれば、交流するのもいいでしょう。関係者、もしくはまったく無関係の大物絵師さんなどは、フォローしても問題ないでしょう。ですが、それ以外をフォローするということは、偏ります」

「偏る」

「主義主張。なにより、人間関係が、偏ります。人は誰も、自分が好きなものには振り向いてほしいものです。そして、別の誰かを向いている間は、嫉妬する者もいます。そうやって、無用な軋轢を生んでほしくないのです」


(なるほどなぁー……我なんかより、にゃむろPは為政者に向いているかもしれない。ひとの心がわかる。まあ、我は魔王だからね! 力でねじ伏せるのが仕事だけどね!)


「その結果、勇者に負けてこの世界に封印されたと」

「すぐそういうことするー! 我の心よむー! そうですよー! 負けたんですよ……! ぐすっ……あのとき負けなければ、こんな三食ヌードルをすする生活しなくて済んだのに……スライム食べれたのに……悲惨、我、圧倒的悲惨ッ……!」

「スライム、食べるんですか……?」


 ドン引きした様子のにゃむろPなど知ったことではないと言った様子で、自分の殻に引きこもりすすり泣きを続ける魔王。


(でも、ヌードルに罪はないのです。ヌードルは神。あったかくて、お湯を注げばすぐに食べれて、いつも我のそばにいる、まるでにゃ──)


 なにかを考えかけて、魔王はフリーズした。

 そのまま、両手で顔を押さえてうずくまる。

 耳まで真っ赤になっていた。


「それで、魔王さん。魔王さん……?」

「ひゃい!?」

「…………」

「なんれしゅか、ニュートリノP!」

「にゃむろです、覚えて……いえ、まあ、いいですが。えっと、本題に入りますが、これから動画を投稿するときは、Twitterでも連携してください。それから、Twitterだけの動画もあげてください。つまり、別撮りします」


 彼の言葉に首をかしげる魔王。

 よくわからないとアピールすると、にゃむろPはかみ砕いて説明を始めた。


「簡単に言えば、Twitterのアカウントをフォローする意味、付加価値を持たせるために、Twitterだけの動画を投稿します。それによって、YouTubeの動画に導線を作るということです」

「ほむほむ、ふめふめ」

「奇妙な擬音で頷かないでください……PCから動画を上げる際は、拡張子に注意してください。MP4が原則です」

「拡張子……あれか! 前言ってた、和食しか食べないやつがいるってやつ!」

「よく覚えていましたね、偉いですよ」

「えへへへ……我、えらい!」


 くしゃくしゃと頭を撫でられ、ご満悦な様子で胸を張る魔王。


「動画のサイズも512MBかつ2分20秒以下と決まっています。ビットレートにも規定がありますが……まあ、これは別の機会にしましょう。スマホからは、もっと簡単に投稿できます」

「へー」

「スマホからならトリミングなどもできます。PCで編集するのは楽ですが、スマホで編集するには少し工夫が必要なので、そのあたりの差異でしょうね」

「にゃるほど」

「……というわけで、魔王さん。早速ですが、Twitterにあげるための面白い動画、収録しますよ」


(……うん?)


「面白い、動画……?」

「ええ、なにかそう……一発芸でも、考えてください」


 にゃむろPの無茶ぶりに。

 魔王は、絶句するのだった。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る