第16話 彼女の笑顔

「今日は来てくれてありがとう。お母さんとお父さんも喜んでた」

 香織が玄関で俺に手を振っている。

「こちらこそ。料理とてもおいしかった。お母さんにそう伝えてくれ」

 久しぶりにおいしいご飯を食べた気がする。

「コンクールがんばってね。応援してるから」

 振っていた手を握りこぶしに変え、俺の方へと突き出してくる。

「……ああ」

 ……やっぱり香織には勝てないな。

 俺は自分の握りこぶしを彼女のこぶしにコツンと打ち合わせる。

 香織の笑顔は、どこかくすぐったそうで、それでいて夜空の星のように輝いていた。

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